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第2章 リエナと過ごす日常生活

第26話 皿うどん

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「修平、こんな遅くまでリエナちゃんを連れ歩いちゃだめでしょ。女の子なのに何かあったらどうするのよ。もし連絡すらしてなかったら、今日のあんたの晩ご飯は餡なしの皿うどんだったわよ」

「あ、いや……ちょっと……」

 家に帰るなり、少しお怒り気味の母さんに小言を言われてしまい、正直に魔王退治をしていたとも言えずに言葉に詰まった俺を、

「帰りが遅くなってしまい申し訳ありませんでした、お義母かあさま。ですが私が勇者様に、少し日本の夜道を歩いてみたいと無理にお願いしたんです」

 リエナはまるであらかじめ考えていたかのように、すらすらとそれらしい理由を言って擁護してくれた。

「あらそうだったの?」

「はい、だから勇者様を責めないでいただければ嬉しいです。同じ場所でも昼と夜ではぜんぜん見え方が違いますし、日本の夜の風景を少しだけ見て回りたかったんです」

 というか何も考えずにのほほんと帰宅した俺と違って、母さんが心配しているであろうことを予想して、ちゃんと言い訳を用意していたんだろうな。

 さすがリエナだ、頼りになる。

「リエナちゃんのお願いなら仕方ないわね。すぐに餡を温め直すから、着替えたら晩ご飯にしましょうか」

 リエナのたってのお願いだったと言われてしまって、母さんの怒りはすぐに霧散した。

「ありがとうございます、お義母かあさま」
「じゃあ制服着替えてくるな」

 そんなやりとりをした後。
 だいぶん遅くなった晩ご飯に出された皿うどんを見て、リエナが驚愕に目を見開いた。

「これが皿うどんですか? 想像していたものとなんだか全然違っています!」
「ははっ、驚いてくれてなによりだ」

 驚きの大きさを表すようにリエナはさっきから何度も、お箸でパリパリ麺をツンツンしている。

「あれ? ですが私の知識では、そもそも『うどん』とは白くて太いものを言うのでは? どうしてこの茶色いパリパリの麺が『うどん』なんですか?」

 どうにも腑に落ちないと言った顔で、リエナが可愛らしく小首をかしげた。

「昔は白いうどんを炒めてたらしいんだけど、麺を用意して餡も用意して、だと時間がかかって作るのが面倒だから、代わりに細い麺を揚げるようになったらしいぞ」

「そうなんですか。詳しいんですね勇者様は。さすがです♪」
「まぁな」

「とかなんとか言いながら修平、あんたさっき皿うどんについて調べてたじゃない。チラッとスマホの画面が見えたから知ってるわよ」

「……母さん、ここは知ってても黙って息子に花を持たせるところじゃないのかな?」

「あらごめんなさい。そうよね、修平もリエナちゃんの前でちょっとイイカッコしたかったのよね」
「別にそういうんじゃないから」

「あらそうなの?」
「そうだよ。ただの善意だよ」

 そりゃ俺も男の子だからイイカッコしたい気持ちはゼロではないけどさ?

「まぁまぁ、お義母かあさま。これが勇者様の優しさなんです。なにより勇者様がカッコいいのは元からですから、今さらイイカッコなんてする必要はありませんよ」

「あらもう、リエナちゃんってばほんとよくできた子ねぇ」
「ああもう母さん、そんなことより早く食べようぜ。せっかく温めてくれたのが冷めちゃうしな」

「ですね♪ やっぱり冷めたものよりも温かい方が美味しいですから」
「じゃあ食べ方を見せるぞ。まず最初にこうやって軽く酢をかけて――」


 ――そんな風に俺たちは皿うどんを楽しく食べたのだった。

 よほど気に入ったのか、リエナはお代わりもしていた。
 リエナはなんでも本当に美味しそうに食べるから、見ているこっちまで幸せな気分になってくるんだよな。
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