83 / 85
第4章

第82話「私はマオくんが好きです。それが魔会に入った理由です。もっとマオくんと一緒にいたかったから」

しおりを挟む
「私はマオくんが好きです。それが魔会に入った理由です。もっとマオくんと一緒にいたかったから」

 と、ルミナは言った。
 ……?

「……え? 今、なんて? 聞き間違いかな? ルミナに告白されたように聞こえたんだけど」

「言いました。私はマオくんが好きです。マオくんと一緒にいたかったから魔会に入りました」

「そ、そうだったのか」

「マオくんと一緒にると楽しかったんです。一緒にいると胸がドキドキしたんです。一緒にいるだけで、幸せな気持ちになれました。勇者ルミナスではなく、遊佐ルミナとして。一人の女の子として。私はずっとマオくんに恋していました」

「う、うん」

「……」
「……」

「……」
「……」

「……それだけですか?」

「あ、いや。ちょっと急すぎたというか、この展開をまったく想定していなかったので、混乱しているというか。えっと、なんで今?」

「私としては、本当の意味での信頼関係を構築するためにも、素直な気持ちを伝えようと思ったんです」

「な、なるほどな」

「背中を押してくれたという意味では、私たちは魔王と勇者という関係で良かったのかもしれませんね。ふふっ」

 最後に「もちろん、改心した魔王という前提ですけどね」とルミナは付け加えると、真剣なまなざしから一転、恥ずかしそうにはにかんだ。

 その可憐な姿に、俺の胸がドクンと強く胸打ったかと思うと、ドキドキが猛烈に加速していく。

「あはは、魔王さまでも混乱することなんてあるんですねぇ」
「こーらロゼッタ、今は黙ってるの。いいところなんだから」
「むぐぅ!?」

 背後でロゼッタと星奈先輩のやり取りが聞こえたが、今はそれどころではない。

「つまりルミナは俺のことが好きなのか?」

「つまりも何もそう言ったつもりです。というかですね! なんども言わせないで下さい! 恥ずかしいんですからねっ!」

「だ、だよな! 悪い!」
 俺は慌てて頭を下げた。
 下げながら、落ち着けと自分の心に語り掛ける。

「マオくんの答えを聞かせてくれませんか?」

 顔をあげた俺に、ルミナが顔を赤く染めたままで問いかけてくる。

「確認なんだが、俺は魔王ブラックフィールドだぞ?」
「でも今はマオくんです」

「かつては殺し合った間柄だ」
「今は違うんですよね? さっきマオくんが自分でそう言っていました」

「確かにそう言ったな」

 もはや魔王と勇者という関係は障害になりえなかった。
 つまりあとは俺がルミナをどう思っているか、だけ。

 俺がルミナをどう思っているかだって?

 ルミナは「めちゃくちゃ可愛くて、めちゃくちゃ性格が良くて、めちゃくちゃスタイルが良くて、めちゃくちゃ優しくて、めちゃくちゃ一生懸命で、めちゃくちゃ頑張り屋さん」な女の子だ。

 そんな女の子を嫌いな男子高校生がいるわけないだろうがよぉ!!!!!!

 ならばもう迷う必要も悩む必要もない。

「答えを聞かせて下さい」
 ルミナがもう一度、問いかけてくる。

「俺もルミナと同じだよ。一緒にいて楽しいし、嬉しいし、幸せを感じている」
「それって――」

 俺は大きく息を吐くと、言った。

「俺もルミナが好きだ。明るくて優しくて可愛くて一生懸命なルミナが大好きだ」

 俺はそう言うとルミナの方をそっと優しく抱いた。
 ルミナも応えるように俺の腰に両手を回すと、俺の胸元に顔をうずめてくる。

 男子とは違った女の子の柔らかい感触に、俺のドキドキは最高潮に達していた。

「マオくん……えへへ」

 俺の腕の中でルミナが笑う。
 恥ずかしいのか、顔は胸にうずめたままだった。

「ルミナ」
 無性に名前を呼びたくなったので、そっと優しく呼んでみる。
 それだけで胸の中が幸せで満ち足りていく気がするから不思議だ。

 こんな感覚は、魔王ブラックフィールドとしても、黒野真央としても今まで感じたことはない。
 これが人を愛する、そして愛してもらうってことなのか――。

「なんでしょうか?」

「あ、いや。呼んでみただけというか」
「もう、マオくんってば」

 俺の腰を抱いていたルミナの手がきゅっと力を増す。

 何とも幸せな気分で、しばらく抱き合っていると、

「あのさー、話終わったよね? アカネもう帰っていいかな?」
 アカネがボヤいたのが聞こえて、俺たちはパッと距離をとった。

「そういえばみんなまだ居たんでした」
「そ、そうだったな。ここは部室で、みんなもいたんだった」

「なにこのバカップル……」
 アカネが呆れたように言いながら部室から出ていく。

 するとそれを契機に、今度はロゼッタと星奈先輩が騒ぎ始めた。

「魔王さまおめでとうございますですぅ!」
「勇者ルミナスと魔王ブラックフィールドがまさか恋仲になるとはねぇ」

「まぁ、はい。見ての通りですね」

 みんなの目の前でルミナとカップル成立したことに今更ながらに気付き、言いようのない羞恥心がこみあげてきてしまう。

「あ、魔王さまが照れてますぅ」
「ふふふ、これはまた珍しいものが見れたね」

 やいのやいのと騒ぎ立てるロゼッタと星奈先輩。

 何とも恥ずかしくて助けを求めるようにルミナに視線を向けると、
「えへへ」
 と照れ笑いが返ってきた。

 勇者として対峙した時も、クラスで隣の席だった時も、魔会で活動していた時とも違う。
 それは好きな相手にだけ向けられる、特別に可愛い笑顔だった。

「これからよろしくな、ルミナ」
「マオくんもよろしくお願いしますね」

 こうして俺とルミナは――かつて殺し合いをした魔王ブラックフィールドと勇者ルミナスは、転生した末に現代で恋人になったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。 異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。 役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。 隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。 戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。 異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。 まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。 ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。 それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。 次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。 その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。 「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」 ※カクヨムにも掲載中です。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...