S級【バッファー】(←不遇職)の俺、結婚を誓い合った【幼馴染】を【勇者】に寝取られパーティ追放されヒキコモリに→美少女エルフに養って貰います
マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
文字の大きさ
大中小
19 / 214
第2章
第19話 キングウルフ討伐クエスト
しおりを挟む
俺たちは街道の途中まで荷運び馬車に乗ってから、出没エリア周辺の草原の探索を開始した。
余談になるが、御者は途中までただの護衛が手に入ったと喜んで料金をまけてくれていた。
いい奴だな。
持ちつ持たれつ。
顔と名前は覚えたので機会があればまた利用させてもらおう。
話を戻そう。
俺のS級バフスキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』で強化されたアイセルの『索敵レベル21』が、しばらくするとキングウルフの群れを補足する。
「2キロ少し先に多数のキングウルフがいます。正確な数はわからないですけど、おそらく15体から20体くらいかと」
「よくやったアイセル。よし、いつも通り左側、風下から回り込むように近づいて先制攻撃からの殲滅戦だ」
「了解です」
「慎重かつ大胆にな。教えたことを忘れなければ、今のアイセルなら十分に勝てるから」
「はい!」
元気に答えると風下の安全地帯をしっかり確保してから、アイセルは『光学迷彩』で姿を消してすっかりと手慣れた様子で先行していく。
俺はバフスキルの効果範囲から外れないだけの距離を保ちながら、静かにアイセルについていった。
ちなみに『光学迷彩』のスキルはパーティの仲間だけは、なんとなく居場所が分かるようになっている便利なスキルなのだ。
そして姿を現したアイセルが先制攻撃で1体のキングウルフが斬り捨てたことで、戦いがはじまった。
優に5メートルを超えるキングウルフの巨体を相手に、しかしアイセルは一歩も引かずに戦いを繰り広げていく。
そして俺はかなり離れた草むらの中に隠れ潜みながら、それを静かに見守っていた。
アイセルは『縮地』で一気に距離を詰め、『連撃』で複数を同時攻撃し、『残像』で翻弄し、切れ味鋭い魔法剣でバッタバッタとキングウルフをなぎ倒す。
「さすがレベル29のエルフの魔法剣士だな……俺のバフスキルによる強化もあるとはいえ、キングウルフの群れを相手にしてもまだまだ十分に余力があるぞ……」
エルフの魔法剣士という優遇職だからってだけではなく、努力家でいろんなことを率先して学び、決して油断をしない真面目な性格もその強さの一因なのだろう。
強くても調子に乗るタイプは、たいていポカをして痛い目を見るからだ。
そしてそれは往々にして取り返しがつかないことが多い。
でもアイセルに関しては、そういう心配はまったくなさそうだった。
「一流冒険者であるレベル60と言われても納得がいくほどの、凄まじい戦闘力だな……」
ピンチらしいピンチもなく次々とキングウルフの数を減らしていくアイセルを、俺は安心して見ていることができていた。
もし俺にこれだけの力があったとしたら。
バッファーというどうしようもない不遇職じゃなかったら。
アンジュは勇者じゃなくて、俺を選んでくれたかもしれなかったのだろうか――。
――と。
そんなことを考えていると、アイセルが討ち漏らしてしまった一匹が逃げるようにして偶然たまたま俺の方に向かって疾走してくるのが目に入った。
「やべっ、ついてないな――」
この場から逃げることはできなかった。
今の俺はアイセルからかなり距離をとっている。
今俺が逃げたら、アイセルがS級バフスキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』の効果範囲から外れてしまう可能性があった。
こんな状況で万が一にでもアイセルのあがり症が出てしまったら、まずいことになる。
というかアイセルが命を落とす。
そして前衛のアイセルが死ねば当然俺も死んでしまうわけで。
「頼むから、こっちくんなよ……」
俺は息を殺して草むらの奥に身を潜めた。
しかしそんな俺とキングウルフの目が、これでもかとバッチリとあってしまったのだ――!
「げっ!?」
アイセルの仲間だとすぐに理解したのだろう、キングウルフが猛然と俺に襲いかかってくる――!
「ああもうくそ! しゃーない、アレやるか!」
俺は覚悟を決めると腰のポーチから「秘密兵器」を取り出した。
小さなパイナップルのような形をしたアイテムだ。
そして俺は安全ピンを抜くと、自分の足元めがけてそれを投げつけた。
パン!
すると乾いた破裂音と共に煙がもうもうと立ち昇ってきて――直後に尋常ならざる異臭が俺の周りに立ち込める。
「キャウンッ!?」
それを嗅いだキングウルフがまるで子犬のような悲鳴をあげて、即座にひっくり返った。
泡を吹いてピクピクと痙攣したキングウルフは、白目を剥いて完全に気絶している。
「げほっ、ごほっ……見たか、これが秘密兵器のクサヤ・スカンク玉だ。ごほっ、人間よりはるかに鼻のいいキングウルフだ。クサヤ・スカンクのフンを濃縮したこのにおいにはとても耐えられないだろ、げほっ、ごほっ」
もちろんこれには使った俺も無事ではいられない。
猛烈な臭気に当てられて吐き気がするし、咳は止まらないし鼻がツーンとしてるし、涙は次から次へと流れっぱなしだし、目の前がクラクラして意識が飛びそうになってるし。
ついに俺は耐えきれなくなって膝をついた。
完全な自爆攻撃だった。
だけど生きてはいる。
「ふふっ……突き詰めればこれで死ぬようなもんじゃないからな……あまりの臭さに死にたくはなるけど……げほっ、ごほっ、やべっ、マジ吐きそう……うっ……」
しかしこの強烈な臭いの中にいる限り、キングウルフは臭すぎて近づいてこれないのだ。
しかもクサヤ・スカンク玉はまだもう1つ残ってる。
「さぁ来るなら来やがれ……来れるもんならな……」
俺はそれから数分の間、吐きそうなほどの臭気に必死に耐え続けた。
アイセルの戦いが勝利に終わるまで――。
心底情けないと思うかもしれない。
でもこれが不遇職バッファーにできる精いっぱいの戦い方なんだ。
身体を張って必死に戦う前衛のためにも、俺は俺にできることをし続けるのだった。
「あ、でもマジ気分悪い……おえっ……うぐっ……朝めしが出てきそう……うっ……」
余談になるが、御者は途中までただの護衛が手に入ったと喜んで料金をまけてくれていた。
いい奴だな。
持ちつ持たれつ。
顔と名前は覚えたので機会があればまた利用させてもらおう。
話を戻そう。
俺のS級バフスキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』で強化されたアイセルの『索敵レベル21』が、しばらくするとキングウルフの群れを補足する。
「2キロ少し先に多数のキングウルフがいます。正確な数はわからないですけど、おそらく15体から20体くらいかと」
「よくやったアイセル。よし、いつも通り左側、風下から回り込むように近づいて先制攻撃からの殲滅戦だ」
「了解です」
「慎重かつ大胆にな。教えたことを忘れなければ、今のアイセルなら十分に勝てるから」
「はい!」
元気に答えると風下の安全地帯をしっかり確保してから、アイセルは『光学迷彩』で姿を消してすっかりと手慣れた様子で先行していく。
俺はバフスキルの効果範囲から外れないだけの距離を保ちながら、静かにアイセルについていった。
ちなみに『光学迷彩』のスキルはパーティの仲間だけは、なんとなく居場所が分かるようになっている便利なスキルなのだ。
そして姿を現したアイセルが先制攻撃で1体のキングウルフが斬り捨てたことで、戦いがはじまった。
優に5メートルを超えるキングウルフの巨体を相手に、しかしアイセルは一歩も引かずに戦いを繰り広げていく。
そして俺はかなり離れた草むらの中に隠れ潜みながら、それを静かに見守っていた。
アイセルは『縮地』で一気に距離を詰め、『連撃』で複数を同時攻撃し、『残像』で翻弄し、切れ味鋭い魔法剣でバッタバッタとキングウルフをなぎ倒す。
「さすがレベル29のエルフの魔法剣士だな……俺のバフスキルによる強化もあるとはいえ、キングウルフの群れを相手にしてもまだまだ十分に余力があるぞ……」
エルフの魔法剣士という優遇職だからってだけではなく、努力家でいろんなことを率先して学び、決して油断をしない真面目な性格もその強さの一因なのだろう。
強くても調子に乗るタイプは、たいていポカをして痛い目を見るからだ。
そしてそれは往々にして取り返しがつかないことが多い。
でもアイセルに関しては、そういう心配はまったくなさそうだった。
「一流冒険者であるレベル60と言われても納得がいくほどの、凄まじい戦闘力だな……」
ピンチらしいピンチもなく次々とキングウルフの数を減らしていくアイセルを、俺は安心して見ていることができていた。
もし俺にこれだけの力があったとしたら。
バッファーというどうしようもない不遇職じゃなかったら。
アンジュは勇者じゃなくて、俺を選んでくれたかもしれなかったのだろうか――。
――と。
そんなことを考えていると、アイセルが討ち漏らしてしまった一匹が逃げるようにして偶然たまたま俺の方に向かって疾走してくるのが目に入った。
「やべっ、ついてないな――」
この場から逃げることはできなかった。
今の俺はアイセルからかなり距離をとっている。
今俺が逃げたら、アイセルがS級バフスキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』の効果範囲から外れてしまう可能性があった。
こんな状況で万が一にでもアイセルのあがり症が出てしまったら、まずいことになる。
というかアイセルが命を落とす。
そして前衛のアイセルが死ねば当然俺も死んでしまうわけで。
「頼むから、こっちくんなよ……」
俺は息を殺して草むらの奥に身を潜めた。
しかしそんな俺とキングウルフの目が、これでもかとバッチリとあってしまったのだ――!
「げっ!?」
アイセルの仲間だとすぐに理解したのだろう、キングウルフが猛然と俺に襲いかかってくる――!
「ああもうくそ! しゃーない、アレやるか!」
俺は覚悟を決めると腰のポーチから「秘密兵器」を取り出した。
小さなパイナップルのような形をしたアイテムだ。
そして俺は安全ピンを抜くと、自分の足元めがけてそれを投げつけた。
パン!
すると乾いた破裂音と共に煙がもうもうと立ち昇ってきて――直後に尋常ならざる異臭が俺の周りに立ち込める。
「キャウンッ!?」
それを嗅いだキングウルフがまるで子犬のような悲鳴をあげて、即座にひっくり返った。
泡を吹いてピクピクと痙攣したキングウルフは、白目を剥いて完全に気絶している。
「げほっ、ごほっ……見たか、これが秘密兵器のクサヤ・スカンク玉だ。ごほっ、人間よりはるかに鼻のいいキングウルフだ。クサヤ・スカンクのフンを濃縮したこのにおいにはとても耐えられないだろ、げほっ、ごほっ」
もちろんこれには使った俺も無事ではいられない。
猛烈な臭気に当てられて吐き気がするし、咳は止まらないし鼻がツーンとしてるし、涙は次から次へと流れっぱなしだし、目の前がクラクラして意識が飛びそうになってるし。
ついに俺は耐えきれなくなって膝をついた。
完全な自爆攻撃だった。
だけど生きてはいる。
「ふふっ……突き詰めればこれで死ぬようなもんじゃないからな……あまりの臭さに死にたくはなるけど……げほっ、ごほっ、やべっ、マジ吐きそう……うっ……」
しかしこの強烈な臭いの中にいる限り、キングウルフは臭すぎて近づいてこれないのだ。
しかもクサヤ・スカンク玉はまだもう1つ残ってる。
「さぁ来るなら来やがれ……来れるもんならな……」
俺はそれから数分の間、吐きそうなほどの臭気に必死に耐え続けた。
アイセルの戦いが勝利に終わるまで――。
心底情けないと思うかもしれない。
でもこれが不遇職バッファーにできる精いっぱいの戦い方なんだ。
身体を張って必死に戦う前衛のためにも、俺は俺にできることをし続けるのだった。
「あ、でもマジ気分悪い……おえっ……うぐっ……朝めしが出てきそう……うっ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる