23 / 214
第2章

第23話 恩返し

しおりを挟む
「えーっとアイセル、どうしたんだ……?」

 俺が尋ねても、

「えへ、えへへ……」

 相変わらず要領を得ない作り笑いで言葉を濁すだけのアイセル。

 月明かりが窓からそっとさし込むだけの、銀色に彩られた小さな宿の一室で。
 俺とアイセルはベッドに二人並んで座っている。

 もし俺が普通の男だったらこの時点で下半身を月に向かっておったてて、獣のごとく本能のおもむくままにアイセルに襲いかかっていたことだろう。

 アイセルは顔も可愛いし、押し付けられている胸もかなりの大きさだ。
 性格も素直な頑張りやさんで、なにより笑顔がすごく素敵な女の子なんだから。

 そんなどこに出しても恥ずかしくない魅力的な女の子であるアイセルが、月明かりだけがさし込む部屋でエロいネグリジェを着て誘ってきたら、そりゃたいていの男は狼にフォームチェンジしてしまうだろう。

 けど――俺はそうはならなかった。

「えっと、アイセル……? ほんとにどうしたんだ? っていうか近くないか?」

 俺は興奮の欠片も見せることなく、極めて冷静なままでアイセルに問いかけた。

「だってわたしとケースケ様は2人きりのパーティのメンバーなんですもん。これくらい普通ですよ」

「うーん、それはどうなんだろうな? 親しき中にも礼儀ありって言うか? まぁそれは今はいいや。じゃあ次の質問、なんで明かりを消したんだ?」

 暗視スキルを持つアイセルと違って、俺は暗がりだと見づらいわけで。
 細かい表情とかもよく見えないし、話をするのなら明るい方が断然いい。

 すると、

「わたし、ケースケ様にお礼をしたいんです……へっぽこだったわたしを拾って面倒を見て育ててくれたケースケ様に、恩返しがしたいんです……」

 アイセルははにかみながらそんなことを言ってきた。

「うーん……アイセルの気持ちはありがたいんけど、それと明かりを消すことに何の関係が――」

「もう、ケースケ様は普段は気が利いて優しいのに、こういう時は意地悪なんですね! だからあの、わたしを……」

「アイセルを?」

「わ、わたしをケースケ様の女にしてください!」

 アイセルは目をつぶって言いながら、自分の胸を俺の腕へさらにぎゅっと押し付けてきた。

 弾力と柔らさが両立した形のいいふくらみが、俺の二の腕を挟んで包みこんできて――。

 得も言われぬ極上の感触を前に、だけど俺は、

「……それはできない。俺たちはパーティの仲間だろ」

 優しく小さな声で諭すようにそう答えたのだった。

「ですがパーティのメンバー同士で男女の関係になることは少なくないと、聞きました」

「まぁ……そう、かもな……」

 良いことも悪いことも、楽しいことも苦しいことも分かち合い、時には生死すら共にするのがパーティのメンバーだ。

 その過程で愛情が育まれるのは不思議なことでもなんでもない。
 だからそれはまったく不思議なことじゃないんだ――。

「――でしたらわたしに恩返しをさせてはもらえませんか? わたしはケースケ様に喜んでもらいたいんです」

「安心しろアイセル。俺はアイセルと一緒に冒険をできて、十分に楽しいし嬉しいよ」

 アイセルを見ていると10年前、冒険者になったばかりの頃の自分を見てるみたいで、俺はそんなアイセルをいくらでも応援してあげたくなるんだから。

「えへへ、そう言っていただけると嬉しいです」

「なら――」

「でもそれと同時に。パーティのメンバーという関係からもう少しだけケースケ様の方に行けたらいいなって、最近は思うようになったんです」

「それってどういう――」

「わたし、ケースケ様のことが好きです。大好きなんです」

 突然の告白は小さな声でおずおずと控えめに。
 だけど強い思いが込められたものだった。

 そしてアイセルの手は、覚悟を決めたように俺のパンツの中に強引に不法侵入してくると、太ももの付け根や局部をやわやわさわさわとまさぐりだしたのだ。

 止めようとしても、後衛不遇職のバッファーの筋力では最優遇職のエルフの魔法戦士にはとてもかないはしない。

「アイセル、やめてくれ……俺はそんなつもりでアイセルとパーティを組んだわけじゃないんだ」

「いいえ、やめません……だってわたしはケースケ様に恩返しをしたいんです。ケースケ様のことが好きで好きで大好きで。施されるだけじゃなくて、どんなことでもいいからなにかお返しをしたいんです」

 吐息のような切ない声が俺の耳元に吹きかけられる。

「それがこれってことか――」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

皇弟が冷淡って本当ですか⁉ どうやらわたしにだけ激甘のようです

流空サキ
恋愛
高校生の未令は、十年前に失踪した父の手がかりを求め、異世界である平安国へと足を踏み入れる。そこは、木火土金水を操る術者が帝を守る国だった。平安国へ着いて早々、なぜか未令は帝の弟、焔将に気に入られ、側妃にされる。はじめは嫌がっていた未令だが、陰の帝とまで言われる冷徹な人物として知られる焔将が未令にだけは優しい。帝に幽閉されている父と祖父を助けるため、未令は焔将の力を借りて奮闘するが―――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...