190 / 214
第11章

第188話 最不遇職「バッファー」の真実

しおりを挟む
「はぁ? 明らかに不遇職じゃん! 目ん玉ついての? あ、のっぺらぼうだからついてないや。あはは、自分で自分に一本取られちゃった!」

 サクラが前半はプリプリしながら、後半は笑いながら指摘した。

「サクラ、おまえってヤツは神様を相手にしてもどこまでも素だよなぁ」
  人生楽しそうでなによりだよ。
 おかげで俺はいつ冒険の神ミトラが怒り出すのか心配で心配で、胃が痛いけどな。

 しかし冒険の神ミトラはというと、サクラに舐めた口を聞かれたっていうのに、意外なほどに懐が広かった。
 全く気にするそぶりも見せずに話を続ける。

【かつて神やそれに類する存在が、まだ地上に影響力を行使できた神話の時代の終わり。バッファーはそのような上位存在と戦うための、切り札たる職業であった】

「上位存在と戦うための切り札だって? 最不遇職のバッファーがか?」
 しかしさすがに意味が分からなくて、俺はついつい話に割り込んでしまう。

【然り。バフスキルによって味方全体を一気にパワーアップさせ、状況に応じて特化させた能力強化を行うことで、パーティ全体を上位存在とも戦えるように支援する。習得が極めて難しいためにそれ以外のスキルを持たず、段階を踏んでスキルの神髄を学んでいく。そうして一芸に特化することで、上位存在と戦うための切り札となる最強の職業。それが我が愛しき子らに用意した、バッファーという職業である】

 真実が今、語られた――他でもない、創造主たる冒険の神ミトラの口から。

「まさかバッファーがそんな特別な存在だったなんて、思いもよらなかったわ」
「わたしもです」
「へー、バッファーは最強の職業なんだって。よかったね、ケイスケ。実はすごかったんじゃん」

 シャーリー、アイセル、サクラが三者三様に驚いた。
 もちろん俺も、驚きとともに冒険の神ミトラの言葉に聞き入るしかなかった。

【先ほどの戦いがその最たる例であろう。神と呼ばれる程の強大な上位存在と戦うには、バッファーはなくてはならない職業なのだ】

「……なるほどな。そう言われると納得するしかないよ」

 今日の戦いに限らず、例えばレインボードラゴンと戦った時。
 俺のバフスキルはレインボードラゴンの7種に切り替わる必殺のブレスすら、問答無用で抑え込んだ。
 現存する最強種と名高いドラゴンの、その中でもブレスを得意とするレインボードラゴンのブレスをだ。

 改めて冷静に考えてみたら、ドラゴンの得意分野をたった一人で対処するなんて、ただの不遇職にできることじゃない。

 そしてそれは、たった1つのS級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』を、レベル120になるまでひたすらに磨き続けたバッファーだからできたことだったのだ。
 今まさに冒険の神ミトラが言ったように。

 そしてそういった上位存在との戦いがもっと身近にあった時代は、バッファーはなくてはならない存在だったのだ。

「成り手がほぼいない最不遇職のバッファー。それがまさか、神やそれに類する上位存在と戦うために用意された、切り札だったなんてな」

 まさかこんな裏話が聞けるなんて想像もしていなかったよ。
 これを聞けただけでも俺としては望外の大収穫だ。

「そうか、そうだったんだ。開幕バフしたら後はいらない子とまで言われるバッファーも、ちゃんと意味のある職業だったんだな。これを聞けたことが、俺は本当に嬉しいよ」

「ケースケ様……」
「ケースケ……」
「ま、今は意味ないんだけどね! あはは!」

「……ほんとサクラは自由気ままに感想を言うなぁ」
「また褒められちゃった。さすが私!」
「はいはい、お前は本当に大物だよ」

 俺は嬉しそうに胸を張ったサクラに苦笑を向けると、

「勝手に盛り上がって悪かった。話を続けてくれないか?」

 まるで子供の遊びを優しく見守る母親のように、話を中断して俺たちのやり取りを待ってくれていた冒険の神ミトラへと、視線を戻した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

皇弟が冷淡って本当ですか⁉ どうやらわたしにだけ激甘のようです

流空サキ
恋愛
高校生の未令は、十年前に失踪した父の手がかりを求め、異世界である平安国へと足を踏み入れる。そこは、木火土金水を操る術者が帝を守る国だった。平安国へ着いて早々、なぜか未令は帝の弟、焔将に気に入られ、側妃にされる。はじめは嫌がっていた未令だが、陰の帝とまで言われる冷徹な人物として知られる焔将が未令にだけは優しい。帝に幽閉されている父と祖父を助けるため、未令は焔将の力を借りて奮闘するが―――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...