神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第29話 バーバラ SIDE 2 ~シェンロン~(下)

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 東のセイリュウ塔が崩壊ですって!?
 冗談でしょ!?

「このっ! このっ!! あいつと同じように踊ってるのに、なんで神龍はわかってくれないのよ! ちゃんと『奉納の舞』を踊ってるでしょ! いい加減にしてよね! やってらんないわ!」

 バーバラは怒り心頭で舞を放りだした。
 そしてそのまま『祭壇さいだんの間』を後にする。

 しかし『祭壇さいだんの間』から出たバーバラを見つけた大臣たちは、またもやバーバラを取り囲んで、次々と「早くどうにかしてくれ」と言ってくるのだ。

 できないとは言えなかった。
 もちろん今さらになって、実は龍の声が聞けないなんて白状するわけにはいかない。

 そんなことしたら、バーバラのメンツは丸つぶれだ。

 いや、それで済めばいい。
 ことは国の根幹にかかわる超重要事項なのだ。

 『神龍の巫女』になるためにウソをついていた――などと言おうものなら、4大貴族ブラスター公爵の一人娘であっても、下手をしたら国家反逆罪で死刑にされる可能性すらあった。

 最悪でも国外追放はまぬがれない。

「きょ、今日は少し体調がすぐれないの。明日からちゃんとやるから――」

 そう言って、バーバラは取り囲む貴族たちの輪を強引に突破すると、逃げるように自室に入った。

 机の上にあった花瓶に神龍の図柄があるのを見て、プッツンとくる。

 思わずつかんで投げ飛ばすと、花瓶は壁にあたってバァン!と大きな音をたてて割れた。

「ハァハァ……! くそっ! くそくそ!! どうにかしないと! どうにかしないと! どうにかしないと……!!」

 バーバラは必死に考える。
 どうしたらこのピンチを乗り超えられる?

 神龍のクソ野郎は、どうもかなり怒っているようだった。

 となれば自然解消はありえない。
 『神龍災害』は長期にわたることだろう。

 のり越えるには、本物の力を持った『神龍の巫女』が必要だ。
 どうにかして、すぐに本物を見つけないといけない。

「どこかに本物の『神龍の巫女』はいないかしら――?」

 ――って、いやいや、いるじゃない?

 ふと、バーバラは、あることに気が付いた。

「そっか、そうじゃん。あいつを――クレアを呼び戻せばいいんじゃない。なーんだ、簡単なことじゃん。あーあ、焦って損した」

 そうだ。

 新たに『神龍の巫女』を見つける必要なんてないんだ。
 クレアを呼び戻せば、それで済む話じゃないか。

 あのドンくさい庶民のことだ。

「どうせよその国ではまともな生活ができなくて、日々の生活にも困ってるでしょ?」

 慣れない土地で貧乏暮らしをするクレアの姿が、すぐに脳裏に思い浮かんできて、バーバラは想像の中のクレアを小馬鹿にしたように笑った。

「あの庶民の国外追放をなかったことにしてあげて、『神龍の巫女』として出戻りさせてあげるとでも言えば、きっと泣いて喜びながら、ほいほいと帰ってくるに違いないわ」

 ついでに今回の件は特別に、私と一緒に解決したことにしてやってもいい。
 特別の特別に、実績を半分くれてやろう。

 それなら私は、無事にピンチを乗り越えられて幸せに。
 あいつも、『神龍の巫女』の1人として認められて幸せに。

 Win-Winの関係になれるというわけだ。

 なんて素晴らしいアイデアなんだろうか?
 こんなナイスアイデアを思いつくなんて、やはりわたしは選ばれた人間なのだ。

「そうと決まれば話は早いわね」

 えっとたしか、あいつは去り際に、東の隣国ブリスタニア王国に向かうって言ってたはずだから。

 バーバラはさっき『祭壇さいだんの間』に報告に来た、子飼いの下級貴族を呼びだすと命令した。

「この前までここで働いていた『神龍の巫女』クレアをつれてきなさい! 今すぐによ! ただし大臣とかにバレないようにこっそりとね! 多分ブリスタニア王国にいるはずだから。わかった?」

「はっ、御心みこころのままに!」
 走り去っていく下級貴族を見ながら、バーバラは一安心した。

「さーてと。問題も無事に解決したことだし、はやく二度寝しないと。睡眠不足とストレスはお肌の大敵だもの。早く寝ないと、私の美貌びぼうがたいへんなことになっちゃうわ」

 そして充分に寝て起きたら、買い物にでも行きましょう。
 すごくイライラしたから、パーッと散財しないと気が済まないもの。

 たしか今年の秋には、大きく増税するって父が言ってたはずだ。
 それはつまり、今までよりもたくさんお金を使っていいってことと同じだから。

 税収が増えるんだから、使うお金も増えるのは当然のことだ。
 キャッシュ・フローと言うやつだ。

 私たちは、生まれながらに高貴な貴族さまなのだ。
 この国のお金は、高貴な私たちが使うためにあるのだから。

「うーん! そう考えると、ちょっとは気分がマシになったかも?」

 バーバラは大きく伸びをすると、服を脱ぎ散らかしてベッドに潜った。

 貴族は服をたたんだりはしない。
 眠っている間に、そっと使用人が片づけるものなのだ。

 安心したことですぐに睡魔が襲ってきて、バーバラは眠りについた。

 しかしすやすやと眠るバーバラは、まだ知らない。

 バーバラの嫌がらせで追放されたクレアが、ブリスタニア王国で『水龍の巫女』になっていたことを。

 そして救国の聖女として国民たちから慕われ、ついには第3王子ライオネルと婚約してブリスタニアの王族になっていたことなど、バーバラはつゆほども知らなかった――。

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