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第1章 突然のゲーム内転移

第27話 精霊夢~アリエッタSIDE~

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~アリエッタSIDE~

 夢を、見ていた。

 ただの夢じゃない。
 夢を外から見ているかのような、夢を夢と認識できる夢だ。

 明晰夢めいせきむ――『意識のある夢』に似たそれは、精霊との同調性・共感能力が特に高いと言われるローゼンベルクの姫騎士に、ごく稀に発現する異能力らしい。

 もちろんローゼンベルクの姫騎士以外でも感受性の高い姫騎士が見ることはあり、ローゼンベルクだけの異能というわけではない。
 一説によると契約精霊の視点から見た過去の自分を、夢を通して見ているのだとかなんとか。

 ローゼンベルクでは『精霊夢せいれいむ――エレメンタル・レミニセンス』と呼ばれている。

 自分を客観的に見られるので、その時は気付かなかった新たな発見があることもある。(しかしながら、そんな価値のある夢を見ることは滅多にないのだが)

 ただ、夢として見るのは単なる過去の自分なので、お姉さまの精霊幻視――エレメンタル・フォーサイトのように選ぶべき未来を直感的に選び取れたりすることはできない。

 いつも見るわけではないし、狙って見れるわけでもない。
 風邪で一日寝込んでいた日に能力が発現したことがあったけど、もちろんしんどそうに寝ているだけだった。

 そんな、夢の中で過去の自分を振り返るだけの、残念ながらたいして利用価値もない異能力。
 こんなところでもお姉さまとの才能の差を感じてしまうから、優秀過ぎる姉を持つのも困ったものだ。
 
 お姉さまがすごい姫騎士だという話は、ひとまず置いておいて。

 いろんなことがあった日だったからか、私は夢の中で今日という日を、契約精霊という客観的な目線で見直していた。


『言い訳なんか聞きたくもないから。ユータ・カガヤ! 私、アリエッタ・ローゼンベルクはアンタに決闘を申し込むわ!』

 いきなり大浴場に現れたかと思ったら、あろうことか胸を揉んできた変態男に、私は怒りに任せて決闘を挑んだ。

 名門ローゼンベルクに生まれ、幼いころから英才教育を受けてきた姫騎士の私が、失礼な乳揉み男なんかに負けるはずがない。
 殺さないにしても、半殺しにして泣いて詫びを入れさせてあげるわって思っていた。

 だっていうのに――、

『精霊と契約して騎士になれるのは、女性だけ――それがこの世界の理だ。でも俺だけは例外なのさ』
『いくぞ神竜剣レクイエム! その力を見せつけろ!』
『聖光解放! ペンドラゴン・アヴァランシュ!』

 男なのに姫騎士になれるユータに、私は完膚なきまでに敗北した。

 もうほんと完敗。
 カラミティ・インフェルノはローゼンベルクの姫騎士が、代々受け継いできた秘儀とも言える奥義。
 破壊力は現存する魔法でも五指に入るほどに強力だ。

 それが暴走したっていうのに、周りにまったく被害を与えずに完全に相殺するなんて芸当、お姉さまでもできるかどうか分からない。

 だけどユータはいとも簡単にやってのけた。
 そんなユータの姿に、私は目を奪われてしまった。
 すごいって思った。

 胸の奥がフワフワっとしてくるのだ。

 でもやっぱり男のくせに、なんなのコイツとも思って。
 すごくムカついて。 
 イライラして。

 でも――。

 今はそんな感情よりも、胸の奥がむずむずするようなフワフワするような不思議な感覚の方が強かった。

「なんだろう、この気持ち? 初めての感覚だ――」

 かつて王国筆頭姫騎士として名を馳せたお母さまに、天才とまで褒め称えられるお姉さま。
 そんなお姉さまに憧れる気持ちにも似た、だけど根本的に異なる初めてのむずがゆい感覚に、私は困惑してしまう。

 この気持ちが何なのかは分からない。
 単に男の姫騎士なんて珍獣を見て、驚いているのかもしれなかった。

「でも、いやな気持ちじゃないかな」

 ううん。
 むしろウキウキするような、嬉しくなるようなプラスの感覚だ。

 ユータから目が離せない。
 ユータのことをもっと知りたいって思ってしまう。

 この気持ちはなんなのだろう?

 そんなことを思っている間に、精霊夢――エレメンタル・レミニセンスは薄れていき。

 それと同時に私の意識も、深い闇の中に沈んでいった――。

~アリエッタSIDE END~

―――――

~幕間 アリエッタの学園紹介!~

 私の名前はアリエッタ・ローゼンベルク。
 今日は特別に、私たちの通う王立ブレイビア学園の学園紹介をするわね。

 ブレイビア学園は名前を見て分かるように、ブレイビア王国が誇る王国騎士団の主戦力である姫騎士を育成するための学校よ。

 全額が国家予算でまかなわれていて、運営母体も王国騎士団なの。

 数学や国語、歴史といった一般的な授業に加えて、姫騎士に必要な魔法の勉強や、実戦を想定した模擬戦が行われるのが特徴かな。

 だけどやっぱり最大の特徴といえば、施設が充実していることね。

 広大な敷地には闘技場(デュエルスタジアム)が2つ、訓練場が9つもあって、他にもトレーニングルームや、炎・水・風・雷といった多様な属性の精霊をまつった礼拝堂が属性ごとにいくつもあるんだから。

 え?
 具体的に甲子園が何個分かって?
 甲子園ってなに?

 まぁいいわ。
 ブレイビア学園は本当に広い敷地面積で、敷地内に練習用ダンジョンまで保有しているのは、世界広しと言えどここだけじゃないかしら?

 もちろん体育館や図書館、講堂といった学校施設も充実いているし、食堂は3つもあって深夜以外は好きな時間に好きなものを食べられるわ。
 大きな大浴場だって完備されているし、寮の部屋は広々としているし、最高の環境で姫騎士の教育が行われているの。

 え?
 あなたも入学したいって?

 残念だけど、ここは男子禁制の女の園。
 しかも姫騎士だけしか入学できないの。
 ごめんね。

 でも姫騎士じゃない普通の騎士なら別の養成施設があるから、そこを尋ねてみるといいんじゃないかしら?
 たとえ姫騎士じゃなくても、ブレイビア王国を守るために一緒に戦ってくれるなら心強いわ。


~幕間 アリエッタの学園紹介! END~
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