6 / 67
第一章 運命の再会
第5話 運命の再会 ~夜のテラスにて~(2)
しおりを挟む
「じぇ、ジェフリー王太子殿下!? 失礼致しました! こほん……本日は大変お日柄も良く、殿下におかれましてはご機嫌麗しくお過ごしかと存じ上げます。それと申し遅れました、私はエクリシア男爵が娘ミリーナと申します。本日はこのような素晴らしいパーティにお招きいただき誠に恐悦至極にございますわ」
口上を述べる己の声と、カーテシーをするためにスカートをつまみ上げる手が震えていることに、ミリーナは自分でも気づいていた。
(ちょっとぉ!? 私ってば今、超上流階級向けパーティの空気が合わないとか言っちゃったんですけど!? しかもよりにもよってこのパーティの主催者であるジェフリー王太子殿下に向かって言っちゃったんですけど!? その上あろうことか謝罪までさせちゃったんですけど!?)
王室不敬罪でエクリシア家は爵位取り上げでお取り潰し――なんていう未来がミリーナの頭をよぎる。
「ははっ、今さら取り繕う必要はないさ」
ジェフリー王太子にズバリと言われてしまいミリーナは観念した。
(うぐっ、事実確認はもう済んでいるってことですわよね……これはもう何をどう言い訳しても無駄ということ、素直に謝りましょう)
将来の王位継承に向けての経験とコネクションづくりのために、周辺諸国との外交交渉を任されているジェフリー王太子が、高い情報分析能力と硬軟織り交ぜた巧みの交渉術でもって山積していた外交案件を次々とまとめ上げ、国内にとどまらず国外からも高く評価されていることは、下級貴族の娘に過ぎないミリーナも耳にしている。
「先ほどの不敬なお言葉、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます」
深々と頭を下げたミリーナに、
「ああそういう意味じゃないさ。ここには誰もいなし、俺はそんなことにいちいち目くじらを立てたりはしないから、気に病む必要はないさ。そこは安心してくれていい。ほら、顔を上げてミリーナ。俺は話をする時は相手の目を見て話したいんだ」
しかしジェフリー王太子は特に怒った様子もなく、優しい言葉を返してきたのだ。
許すから顔を上げろ、というジェフリー王太子の言葉を無下にするわけにもいかず、ミリーナはおそるおそる顔を上げた。
するとそこには柔らかく微笑むジェフリー王太子が居て、ミリーナはひとまずホッと一安心したのだった。
「ジェフリー王太子殿下のご寛容な御心に、心からの感謝を申し上げます」
「ミリーナは礼儀正しいんだな。今日はパーティの場だし、もう少し普通に話してくれても構わないぞ? そうだ、こうやって会ったのも何かの縁だ。せっかくだから少し俺の話し相手になってくれないか?」
「はい、それはもちろん構いませんが……」
「じゃあ早速質問をさせてもらおう。まず俺のパーティのどういうところが苦手だったんだ? 食事だったりメイドの作法だったり、気になることがあったら何でも言ってくれ」
「……」
そうは言われてもミリーナは何も答えることができなかった。
パーティそのものに特に不満があったわけではないからだ。
食事はどれもこれも素晴らしいの一言に尽きるし、給仕の方々はまるで人の心が分かるかのようにあらゆる事を察しては先んじて行動していた。
何から何まで完璧すぎて文句なんてつけようがない、さすがジェフリー王太子主催のパーティだとミリーナは感心したものだ。
とどのつまりパーティの空気が合わなかったのは一事が万事ミリーナの心の問題なのだった。
「なに、ここには誰もいないから遠慮はいらない。俺は常日頃からどんなことでも直すべきところは直したいと思っているんだ。俺は良い王になりたいからな。だから変に気を遣わず素直に思ったことを話してくれ」
しかしジェフリー王太子は、ミリーナの沈黙を王太子である自分への遠慮と受け取ったようで、なおもそんな風に問いただしてくる。
口上を述べる己の声と、カーテシーをするためにスカートをつまみ上げる手が震えていることに、ミリーナは自分でも気づいていた。
(ちょっとぉ!? 私ってば今、超上流階級向けパーティの空気が合わないとか言っちゃったんですけど!? しかもよりにもよってこのパーティの主催者であるジェフリー王太子殿下に向かって言っちゃったんですけど!? その上あろうことか謝罪までさせちゃったんですけど!?)
王室不敬罪でエクリシア家は爵位取り上げでお取り潰し――なんていう未来がミリーナの頭をよぎる。
「ははっ、今さら取り繕う必要はないさ」
ジェフリー王太子にズバリと言われてしまいミリーナは観念した。
(うぐっ、事実確認はもう済んでいるってことですわよね……これはもう何をどう言い訳しても無駄ということ、素直に謝りましょう)
将来の王位継承に向けての経験とコネクションづくりのために、周辺諸国との外交交渉を任されているジェフリー王太子が、高い情報分析能力と硬軟織り交ぜた巧みの交渉術でもって山積していた外交案件を次々とまとめ上げ、国内にとどまらず国外からも高く評価されていることは、下級貴族の娘に過ぎないミリーナも耳にしている。
「先ほどの不敬なお言葉、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます」
深々と頭を下げたミリーナに、
「ああそういう意味じゃないさ。ここには誰もいなし、俺はそんなことにいちいち目くじらを立てたりはしないから、気に病む必要はないさ。そこは安心してくれていい。ほら、顔を上げてミリーナ。俺は話をする時は相手の目を見て話したいんだ」
しかしジェフリー王太子は特に怒った様子もなく、優しい言葉を返してきたのだ。
許すから顔を上げろ、というジェフリー王太子の言葉を無下にするわけにもいかず、ミリーナはおそるおそる顔を上げた。
するとそこには柔らかく微笑むジェフリー王太子が居て、ミリーナはひとまずホッと一安心したのだった。
「ジェフリー王太子殿下のご寛容な御心に、心からの感謝を申し上げます」
「ミリーナは礼儀正しいんだな。今日はパーティの場だし、もう少し普通に話してくれても構わないぞ? そうだ、こうやって会ったのも何かの縁だ。せっかくだから少し俺の話し相手になってくれないか?」
「はい、それはもちろん構いませんが……」
「じゃあ早速質問をさせてもらおう。まず俺のパーティのどういうところが苦手だったんだ? 食事だったりメイドの作法だったり、気になることがあったら何でも言ってくれ」
「……」
そうは言われてもミリーナは何も答えることができなかった。
パーティそのものに特に不満があったわけではないからだ。
食事はどれもこれも素晴らしいの一言に尽きるし、給仕の方々はまるで人の心が分かるかのようにあらゆる事を察しては先んじて行動していた。
何から何まで完璧すぎて文句なんてつけようがない、さすがジェフリー王太子主催のパーティだとミリーナは感心したものだ。
とどのつまりパーティの空気が合わなかったのは一事が万事ミリーナの心の問題なのだった。
「なに、ここには誰もいないから遠慮はいらない。俺は常日頃からどんなことでも直すべきところは直したいと思っているんだ。俺は良い王になりたいからな。だから変に気を遣わず素直に思ったことを話してくれ」
しかしジェフリー王太子は、ミリーナの沈黙を王太子である自分への遠慮と受け取ったようで、なおもそんな風に問いただしてくる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
96
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる