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第四章 リフシュタイン侯爵の陰謀
第43話 黒幕
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同じ頃。執務室で書き物をしていたリフシュタイン侯爵にも同様の報告が上がっていた。
「そうか、何度調査してもミリーナ様を狙った暗殺者の身元はついぞ分からなんだか。それは残念極まりないのぅ」
今回の事態を大変憂慮した顔で神妙に呟いたリフシュタイン侯爵の言葉に、
「まったくでございます。王太子妃候補であらせられるミリーナ様のお命が狙われたというのに、捜査に当たった刑務騎士たちはいったい何を悠長にやっているのやら」
報告に来た子飼いの下級貴族も同意するように、義憤にかられた様子で何も証拠を見つけられなかった刑務騎士を非難する。
「いいや、それだけその暗殺者が手練れだったということじゃよ。それに一番悔しいのは、何も見つけられなかったと報告を上げるしかなかった刑務騎士たちじゃろうて。彼らは敵ではなく、我らがローエングリン王国の同胞なのじゃ。あまり強く非難するものではない」
「こ、これは大変失礼をいたしました! 愚かにも出過ぎたことを申しましたこと、謹んでお詫び申し上げます!」
「いやいや、ワシもお前を責めているわけではないのじゃ。その心意気はまた違う形で存分に見せるがよいぞ」
「なんとありがたいお言葉……」
「ではまた何か進展があれば報告を上げてくれるかの。ご苦労じゃったの、下がってよいぞ」
「はっ、かしこまりました」
子飼いの下級貴族は、リフシュタイン侯爵の人としての器の大きさに感服しながら執務室を後にした。
そして一人になった執務室で、リフシュタイン侯爵は誰に言うでもなく独白を始めた――のだが。
「ふん、元グランデ帝国暗部の特殊工作員というから試しに使ってみたが、いとも簡単に返り討ちにあうとは存外に使えなかったのぅ。まったく軍事大国で鳴らすグランデ帝国も大したことがないわい」
な、なんということだろうか!
よもやよもや!
今回のミリーナ暗殺計画の黒幕は、ローエングリン王国建国より使える古き良き貴族たる、リフシュタイン侯爵その人だったのだ――!
誰もいない執務室でリフシュタイン侯爵は恐ろしい独白を続ける。
「ミリーナの暗殺が成功すれば、再び我が娘アンナローゼを王太子妃候補に据えられたのじゃが……。まぁよいわ、今回は失敗して元々じゃ。間に幾重にもダミーを噛ませておるし、あの暗殺者がワシへと繋がることは絶対にありえん」
事実、今回の件で刑務騎士たちが総力を挙げてどれだけ入念に調査をしても、リフシュタイン侯爵には疑惑の目が向けられることすらなかったのだから。
「さてと、終わったことはもうよい。さっさと次の手を打つとするかの。もし万が一ミリーナがジェフリー王太子殿下の子を産んでしまえば、さすがのワシでもどうしようもなくなってしまうからの。最近は毎晩のように夜伽を命じておると聞く。その身に王家の子を宿す前にさっさとミリーナを排除せねばのぅ。くっくっくっくく……」
誰もいない執務室に、リフシュタイン侯爵の下卑た笑い声が静かに響いた――
「そうか、何度調査してもミリーナ様を狙った暗殺者の身元はついぞ分からなんだか。それは残念極まりないのぅ」
今回の事態を大変憂慮した顔で神妙に呟いたリフシュタイン侯爵の言葉に、
「まったくでございます。王太子妃候補であらせられるミリーナ様のお命が狙われたというのに、捜査に当たった刑務騎士たちはいったい何を悠長にやっているのやら」
報告に来た子飼いの下級貴族も同意するように、義憤にかられた様子で何も証拠を見つけられなかった刑務騎士を非難する。
「いいや、それだけその暗殺者が手練れだったということじゃよ。それに一番悔しいのは、何も見つけられなかったと報告を上げるしかなかった刑務騎士たちじゃろうて。彼らは敵ではなく、我らがローエングリン王国の同胞なのじゃ。あまり強く非難するものではない」
「こ、これは大変失礼をいたしました! 愚かにも出過ぎたことを申しましたこと、謹んでお詫び申し上げます!」
「いやいや、ワシもお前を責めているわけではないのじゃ。その心意気はまた違う形で存分に見せるがよいぞ」
「なんとありがたいお言葉……」
「ではまた何か進展があれば報告を上げてくれるかの。ご苦労じゃったの、下がってよいぞ」
「はっ、かしこまりました」
子飼いの下級貴族は、リフシュタイン侯爵の人としての器の大きさに感服しながら執務室を後にした。
そして一人になった執務室で、リフシュタイン侯爵は誰に言うでもなく独白を始めた――のだが。
「ふん、元グランデ帝国暗部の特殊工作員というから試しに使ってみたが、いとも簡単に返り討ちにあうとは存外に使えなかったのぅ。まったく軍事大国で鳴らすグランデ帝国も大したことがないわい」
な、なんということだろうか!
よもやよもや!
今回のミリーナ暗殺計画の黒幕は、ローエングリン王国建国より使える古き良き貴族たる、リフシュタイン侯爵その人だったのだ――!
誰もいない執務室でリフシュタイン侯爵は恐ろしい独白を続ける。
「ミリーナの暗殺が成功すれば、再び我が娘アンナローゼを王太子妃候補に据えられたのじゃが……。まぁよいわ、今回は失敗して元々じゃ。間に幾重にもダミーを噛ませておるし、あの暗殺者がワシへと繋がることは絶対にありえん」
事実、今回の件で刑務騎士たちが総力を挙げてどれだけ入念に調査をしても、リフシュタイン侯爵には疑惑の目が向けられることすらなかったのだから。
「さてと、終わったことはもうよい。さっさと次の手を打つとするかの。もし万が一ミリーナがジェフリー王太子殿下の子を産んでしまえば、さすがのワシでもどうしようもなくなってしまうからの。最近は毎晩のように夜伽を命じておると聞く。その身に王家の子を宿す前にさっさとミリーナを排除せねばのぅ。くっくっくっくく……」
誰もいない執務室に、リフシュタイン侯爵の下卑た笑い声が静かに響いた――
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