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第四章 リフシュタイン侯爵の陰謀
第48話 不穏な気配
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国王夫妻との夕食会を終えてから半月ほどが経った頃。
「ミリーナ、既に聞いているかもしれないが、俺はしばらくハンナブル王国に出向くことになった。いつ帰ってこられるかはまだ分からない。少なくとも一カ月はかかるだろう」
ベッドの上でミリーナの髪を手で優しく梳くように撫でながら、ジェフリー王太子がポツリと言った。
「何かあったのですか?」
「ここ10年大人しかった北方のグランデ帝国が、どうにもきな臭いようでな。徴兵を強化したり大量の軍馬を買い入れたりと、大幅な軍備増強を図っているようなのだ。情報統制も進んでいるようだ」
「軍備を大幅に増強しているのですか? 目的はなんなのでしょうか?」
「まだ詳しくは分からない。だが最悪の事態になることも想定して、グランデ帝国と大幅に国境を接するハンナブル王国への支援も含めて、同盟諸国との連携を改めて密にするために、俺が行って色々と話し合わないといけないんだ」
「最悪の事態ということは、もしやグランデ帝国との戦争になるのでしょうか?」
(グランデ帝国は領土拡大を狙って、過去に何度も周辺諸国と戦争を起こしているわ。でも10年前のハンナブル王国との大戦争で、タイナス王子の神がかり的な用兵術の前に大負けして、その野心は潰えたと言われていたのに……)
「いいや、そうならないように俺が行くのさ。戦好きのグランデ帝国とて馬鹿ではない。こちらの備えがアリの這い出る隙間もないほどに万端であり、負け戦になると分かっていれば容易には仕掛けてこないさ」
「それを聞いて少し安心しましたわ」
「幸いなことに現在の我が方の同盟関係は非情に強固だ。仮に1国が攻められたとしても、残りの同盟諸国が連携して即座に反撃することになっている。今回はその再確認とハンナブル王国への支援、それとグランデ帝国の現状に関する情報共有が目的だ。なに、戦争なぞ絶対に起こさせはしないさ」
「はい、戦争は悲しみしか生み出しませんもの」
「そういうわけだからしばらく君とも会えなくなるだろう。本当は君も一緒に連れて行きたいところなのだが、他国では俺もなかなか自由が利かない。万が一の危険を考えれば、グランデ帝国に近いハンナブル王国よりもこの国に残ってくれた方が俺としても安心なんだ」
「お心遣い感謝いたしますわ。ですが寂しくなりますわね……」
ミリーナはそっと目を伏せた。
毎晩のようにジェフリー王太子に抱かれていたのが、これからしばらくは会うことすらできなくなってしまうのだから、それもまた当然の感情だった。
だってもうミリーナの心は、完全にジェフリー王太子の色で染めあげられてしまっているのだから。
「その代わりと言ってはなんだが、今宵は君を死ぬほど愛させてもらうぞ。それはもう徹底的に愛させてもらう。なぜならしばらく会えない間の君の愛を、たった一夜の短い契りの間に、俺の胸へと全て納めなければならないのだからな」
「私も同じ気持ちですわジェフリー」
ミリーナはジェフリー王太子の首に手を回すと、自ら情熱的な口づけをした。
本来このようなことを女性からするのははしたないこと極まりないなのだが、今日に限ってはそんなことは些細な問題だった。
ジェフリー王太子も応えるように、ミリーナの身体を強く抱きしめながら情熱的な口づけを返す。
その晩、ジェフリー王太子とミリーナは、いつもよりもさらに深く激しく、身も心も溶けて混ざり合うほどに情熱的に愛し合った――。
「ミリーナ、既に聞いているかもしれないが、俺はしばらくハンナブル王国に出向くことになった。いつ帰ってこられるかはまだ分からない。少なくとも一カ月はかかるだろう」
ベッドの上でミリーナの髪を手で優しく梳くように撫でながら、ジェフリー王太子がポツリと言った。
「何かあったのですか?」
「ここ10年大人しかった北方のグランデ帝国が、どうにもきな臭いようでな。徴兵を強化したり大量の軍馬を買い入れたりと、大幅な軍備増強を図っているようなのだ。情報統制も進んでいるようだ」
「軍備を大幅に増強しているのですか? 目的はなんなのでしょうか?」
「まだ詳しくは分からない。だが最悪の事態になることも想定して、グランデ帝国と大幅に国境を接するハンナブル王国への支援も含めて、同盟諸国との連携を改めて密にするために、俺が行って色々と話し合わないといけないんだ」
「最悪の事態ということは、もしやグランデ帝国との戦争になるのでしょうか?」
(グランデ帝国は領土拡大を狙って、過去に何度も周辺諸国と戦争を起こしているわ。でも10年前のハンナブル王国との大戦争で、タイナス王子の神がかり的な用兵術の前に大負けして、その野心は潰えたと言われていたのに……)
「いいや、そうならないように俺が行くのさ。戦好きのグランデ帝国とて馬鹿ではない。こちらの備えがアリの這い出る隙間もないほどに万端であり、負け戦になると分かっていれば容易には仕掛けてこないさ」
「それを聞いて少し安心しましたわ」
「幸いなことに現在の我が方の同盟関係は非情に強固だ。仮に1国が攻められたとしても、残りの同盟諸国が連携して即座に反撃することになっている。今回はその再確認とハンナブル王国への支援、それとグランデ帝国の現状に関する情報共有が目的だ。なに、戦争なぞ絶対に起こさせはしないさ」
「はい、戦争は悲しみしか生み出しませんもの」
「そういうわけだからしばらく君とも会えなくなるだろう。本当は君も一緒に連れて行きたいところなのだが、他国では俺もなかなか自由が利かない。万が一の危険を考えれば、グランデ帝国に近いハンナブル王国よりもこの国に残ってくれた方が俺としても安心なんだ」
「お心遣い感謝いたしますわ。ですが寂しくなりますわね……」
ミリーナはそっと目を伏せた。
毎晩のようにジェフリー王太子に抱かれていたのが、これからしばらくは会うことすらできなくなってしまうのだから、それもまた当然の感情だった。
だってもうミリーナの心は、完全にジェフリー王太子の色で染めあげられてしまっているのだから。
「その代わりと言ってはなんだが、今宵は君を死ぬほど愛させてもらうぞ。それはもう徹底的に愛させてもらう。なぜならしばらく会えない間の君の愛を、たった一夜の短い契りの間に、俺の胸へと全て納めなければならないのだからな」
「私も同じ気持ちですわジェフリー」
ミリーナはジェフリー王太子の首に手を回すと、自ら情熱的な口づけをした。
本来このようなことを女性からするのははしたないこと極まりないなのだが、今日に限ってはそんなことは些細な問題だった。
ジェフリー王太子も応えるように、ミリーナの身体を強く抱きしめながら情熱的な口づけを返す。
その晩、ジェフリー王太子とミリーナは、いつもよりもさらに深く激しく、身も心も溶けて混ざり合うほどに情熱的に愛し合った――。
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