レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放されたので【へっぽこ幼女魔王さま】とスローライフします

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章 ゲーゲンパレス・スローライフ(前編)

第16話 ピクニック!

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 俺と幼女魔王さまとミスティは、【ゲーゲンパレス】の郊外にある森林植物園にピクニックにやって来ていた。

「不思議だな。もう初夏から夏になるって時期なのに、ここは風吹いてて涼しい気がする」

「この辺りはちょうど海風の通り道になっているので、夏も比較的涼しいんですよ」

 俺の素朴な疑問に、ミスティがいつもより弾んだ声で答えてくれた。

「海風、つまり海から吹く風か……そうかわかったぞ。水は熱しにくく冷めにくいものだ。察するに暖められた内陸部で上昇気流が発生して地表の空気が薄くなり、そこに海の冷たい風が流れ込んでくるという原理だな?」

 名推理を華麗に披露ひろうした俺だったんだけど、

「ハルトよ、お主は精霊という不思議な存在の声を聞くことのできる【精霊騎士】じゃというのに、ほんと情緒というものに欠けるよのぅ……まぁ今はよいか。海風が吹くおかげで、春から夏にかけてピクニックにくるにはちょうどいい場所なのじゃよ」

「そうみたいだな」

 辺りを見回すと、広大な園内には俺たちと同じく花を見ながら散策を楽しむする人の姿が、あちらこちらで目についた。

 かくいう俺も色とりどりに咲き誇る花々に、素直に感動している真っ最中だったりする。

「花をじっくり見たことってほとんどなかったんだけど、同じ種類でもいろんな色があって綺麗なもんだな」

 俺の前には多種多様なバラ咲き誇っていた。

「しかしバラってこんなにたくさん種類があったんだな……バラはバラって1品種があるものだとばかり思ってたよ」

「最近は品種改良が盛んに行われていますからね。確かこの植物園にはバラだけで900種ほど植えられていたはずです」

「900!? バラだけでそんなにたくさん種類があるのか!? 実は俺、花の名前って漠然とチューリップとバラがあるってくらいしか知らなかったのに……」

 俺にとってその2つ以外は全て「それ以外の花」だった。
 なのにここにはバラだけで900種類もあるという。

「これが最先端文化というやつか。おそるべしだな」

「いや、今どき未就学児童でももうちょっと知っとるんじゃなかろうか……?」
 俺の告白に幼女魔王さまが苦笑する。

「そんなハルト様に最新情報です。昨年なんと、不可能と言われていた青いバラが誕生したんですよ」

「おいおいミスティ、バラは基本赤いものだろう。ここにあるのも赤やピンクが多いじゃないか。俺だってそれくらいは知ってるんだ。赤色を指して薔薇色って言葉もあるくらいだしな。ミスティはほんと冗談がうまいんだから――」

「いいえマジです」
「え?」

「マジのマジです」
「マジなの? バラなのに青いの?」

「はい超マジです」

「え、うそ、見たい! 見たいんだけど! 青いバラを見てみたいんだけど! ここには咲いていないのか!?」

「えっと、まだ開発されたばかりなので出回るのは多分、数年後じゃないでしょうか」

「そっか、そうだよな……まだできたばっかだもんな。残念」

「なーに、楽しみを先にとっておくというのもまた一興なのじゃよ」

 最後に幼女魔王さまがいい感じに話を締めくくった。


「それにしてもミスティは花について詳しいんだな。好きなのか? なんとなく今日はそわそわしてるし」

「もうハルト様ったら。チャンバラを嫌いな男の子がいないように、花を嫌いな女の子なんていませんよ」

「それもそうか」

「ところでそろそろお昼にせんかの。お腹が減ってきたのじゃ」
「いいな、賛成だ」

「ではすぐに準備しますね。今日は食べやすいようにサンドイッチを用意しましたので」

 ミスティは背負っていた小さなリュックを下ろすと、敷きシートを取り出してその上にサンドイッチの入ったカゴを並べ始めた。

 みんなでそれを囲み、いただきますをしてから食べ始める。

「うん、美味しいな」

「おっとハルトよ、心して味わうのじゃぞ。なにせ今日のサンドイッチはミスティの手作りじゃからの。激レアじゃ」

「そうだったのか。うん、とっても美味しいよミスティ、ありがとう」

「えへへ、ありがとうございます。作った甲斐がありました」

「ミスティはの、だいたい何でもできるのじゃが料理の腕もなかなかのものであろう? 美しい容姿と相まって見合いの申し出も多数来ておるのじゃぞ?」

「ま、魔王さま!」
「なにを恥ずかしがっておるのじゃ。事実であろう」

「で、ですが、その、ハルト様が聞いておりますので……」

「むん? ハルトに聞かれると困るのかえ? ……さてはミスティ、もしやハルトのことが――」

「ち、違いますから!」
「なに、隠さんでもよい――」

 流れがいまいちつかめなかったんだけど、ミスティと魔王さまがじゃれ合い始めた。
 主従の関係を越えて仲むつまじい姿は、見ていて心が洗われるようだよ。

「おいおい魔王さま、あんまりミスティをからかってやるなよ。エルフは美意識が特に高い種族なんだから、俺程度じゃてんで話にならないよ。なぁミスティ」

「いえ、あの、決して必ずしもそうと言うわけではごにょごにょ――」

 助け舟を出したつもりだったんだけど、なぜかミスティは急にあわあわ&もじもじしだしたのだ。

 どうしたんだろう、急にトイレにでも行きたくなったのかな?

「でもこうやって軽食を食べながらみんなでわいわい話をして、景色を眺めて、風を感じるってのも悪くないもんだな。時間の流れがスローに感じる」

「人生は短い。じゃがだからと言って、いつもいつも走っておってはどこかで倒れてしまうのじゃよ。時にこうやってゆったりとした時間を過ごすことも人生に欠かせない栄養素なのじゃ」

 またもやいい感じに話を締めくくった幼女魔王さまだった。
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