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そして、朝を迎える

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顔に当たるきつい日差しに、意識が現実へと浮上する。なにか懐かしい夢を見ていたような気がして気分がいい。サラサラのシーツの感触を素足で楽しみながら、眠りから覚めることを惜しみながらゆっくりと瞼を開けると、至近距離にふわりと微笑むクレナイがいた。


「おはよう、スイ」


「おはよ……?」


寝起き特有の霞かかった頭では、思考も上手くまとまらない。別のベッドで寝てるはずの養い子が、何故僕のベッドに潜り込んでいるのだろうか。僕を驚かそうとするほど彼は無邪気な性格ではないし。

そしてどうしてクレナイは裸なのか?暑かった……?

そこまで考えてはたと気づく。


「あれ……?僕も、はだか……?」


クレナイの厚みのある指がするりと僕の頬をなぞる。なんだろう、こんな風に触られるのは初めてかもしれない。

こんな風にニコニコしているクレナイもまた、珍しい。


「スイ、朝がよわいな」


「うん……どうも朝は苦手で……」


「可愛い」


そう言うと機嫌の良いらしいクレナイが、僕に、キスを、して……!?


「ふあ!?あ、ああああああ!!!」


「思い出した?」


「おもい、出し、た……!!」


思い出したけれども!!昨晩あったあれこれを。

クレナイにキスをされて、あ、あいしてると言われて……そして、そして!!


「わああああ!!」


クレナイの顔を見れない、なんならこんな自分の顔だって見せられない。布団を頭まで被って丸まって、混乱する自分を一気に隠した。


「スイ」


「まままま、まって、まって!!気持ちの整理がつかない……っ!」


こんな、こんな時はどんな顔をしたらいいのか!?多分僕の顔は真っ赤だろうし、なんなら服だって何も着ていない。いかにもなにかしましたと言わんばかりの夜の気配を感じられる朝、残念ながら僕に経験はないのだ。


「スイ」


「ま、まって……まって!!」


「スイ、寒い。風邪ひきそう」


そうだクレナイも裸だった! なんてことだろう、この子が風邪をひいたら大変だ。

僕は慌てて布団でクレナイの体も一緒に包み込んだ。


「わ、ほんとだちょっと冷えてる?ごめんねクレナイ大丈夫――」


「捕まえた、スイ」


弾力のある男の胸に抱き込まれる。触れ合う肌の面積が広すぎて、お互いの熱が直接的に感じられ過ぎる。そして下腹に当たる今は硬度のないソレは――。


「く、くれない……っ、あの、僕……!」


「愛してる、スイ」


「ふぁ!?」


「スイは?」


きっと、もう僕の気持ちは分かりきっているはずなのに彼はそんな事を聞く。

自覚したばかりの自分の気持ちを口に出す事は恥ずかしいし、照れるし、無理だ 。

でも返ってくる言葉を期待して、普段より輝く赤い瞳を見たら僕の羞恥なんてもうどうとでもなれという気分になってしまう。僕はやっぱり、この子に弱いのだ。例えそれが恋人と呼ばれる関係になっても、それは変わらないのだろう。


「す、すき……」


「好き?」


「あ、あい、あいして、る……」


「嬉しい、スイ。愛してる」


 響く低いクレナイの声色が、いつもより甘いのはきっと気のせいじゃない。きつく抱きしめられ髪の毛に無数のキスを落とされて、僕は甘すぎる恋人としての初めての朝を実感した。






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