13 / 24
お店のおばあちゃん
しおりを挟む
クレナイに抱きしめられ、なかなか離してくれない腕からようやく抜け出した頃にはもう昼近くだった。
聞けば僕が起きた時点で朝と呼ぶには微妙な時間だったらしく、なるほど窓から入る日差しがきつかったのはそのせいかと納得した。
「スイ、宿で待っていてもいい」
「大丈夫、沢山寝たし元気だよ。行こ!」
なんだかうちの子は今まで以上に僕に対して過保護になっていて、いたわられるとそれはそれで気恥しい。
昨晩はその、痛いこともきついことも何もなかったし。気持ち良い事ばかりで――だから別に辛くない。
「スイ、顔が赤い」
「も……っ、黙って!」
荷物を全て背負ってくれる相手に酷い言い草かもしれないけれど、甘すぎるその視線は意味深すぎる。
今までの僕達の関係性が変わってしまったようで――実際変わってるんだけども、なんだか誰かにバレないか後ろめたく感じてしまうのはまだ親気分が抜けないせいだと思う。
小さな町を、クレナイと二人で歩く。宿から商店街までほんの僅かだというのに、彼は心配そうにチラチラと僕を見てくる。
居心地の悪さと嬉しさを感じながら、僕達はいつもの買い取りをしてくれる店の扉をくぐった。
ちりりん、と軽快な鈴の音がして、それに反応したいつものおばあちゃんの声がかかる。
「いらっしゃい。おやあんたたちかい。スイは久しぶりだね」
「……僕は?」
僕より随分小柄なこの店のおばあちゃんは、もう随分お年を召しているけどしっかりしている、と思っていただけに発言に引っかかった。
「ん?そっちの男前はしょっちゅうこの店に来てくれるからね。先週も猪肉を持ってきてくれたかね?新鮮な肉はありがたいから大歓迎さ」
「………………」
「………………」
サッとクレナイを見ると、同じスピードで目を逸らされた。
徒歩3日距離をそんなに頻繁に来ていたのか?……いや、クレナイの足なら僕を抱えて半日だ、彼一人なら尚更早いだろう。
ここ1年程、日中はそれぞれバラバラに活動する事が多かったのは確かだ。
「……クレナイ、僕に黙って町に来てたの?」
「ああ」
僕に言わずに……いやこれは隠していたと言っても良いだろう。
そんなクレナイの態度に、今までなら子供の成長だと喜ぶ事だって出来たはずなのに、何故か今はそれが出来ない。
嫌だ、モヤモヤとした感情が僕の中でグルグルと渦を巻く。
「まあ許しておやりよスイ。惚れた相手に楽させてやりたいって言うんだから健気なもんじゃないか。もうあんたたちもくっついたんだろう?ドーンと構えてやるのが姉さんに女房さね」
「へ……女房……!?うえ、え!?」
きっと僕の顔は真っ赤になっているだろう。口はただはくはくとして言葉が出ない。
惚れた相手に楽をさせたい?
ついにくっついた?
本人だって知らなかったクレナイと僕の事情を、どうしておばあちゃんが知っているのか?
「おや?もうくっついたんだろう?この間とはあんたたちの空気が全然違うよ。おめでとう、これは祝いだ持っておゆき」
「ありがとう。じゃあこれは今回の分……婆、買い取りを頼む」
「ちょ、え、ま……、えええ……?」
まだ混乱から抜け出せない僕だけを置いてきぼりにして、クレナイとおばあちゃんはサッサと取引を終わらせてしまった。
聞けば僕が起きた時点で朝と呼ぶには微妙な時間だったらしく、なるほど窓から入る日差しがきつかったのはそのせいかと納得した。
「スイ、宿で待っていてもいい」
「大丈夫、沢山寝たし元気だよ。行こ!」
なんだかうちの子は今まで以上に僕に対して過保護になっていて、いたわられるとそれはそれで気恥しい。
昨晩はその、痛いこともきついことも何もなかったし。気持ち良い事ばかりで――だから別に辛くない。
「スイ、顔が赤い」
「も……っ、黙って!」
荷物を全て背負ってくれる相手に酷い言い草かもしれないけれど、甘すぎるその視線は意味深すぎる。
今までの僕達の関係性が変わってしまったようで――実際変わってるんだけども、なんだか誰かにバレないか後ろめたく感じてしまうのはまだ親気分が抜けないせいだと思う。
小さな町を、クレナイと二人で歩く。宿から商店街までほんの僅かだというのに、彼は心配そうにチラチラと僕を見てくる。
居心地の悪さと嬉しさを感じながら、僕達はいつもの買い取りをしてくれる店の扉をくぐった。
ちりりん、と軽快な鈴の音がして、それに反応したいつものおばあちゃんの声がかかる。
「いらっしゃい。おやあんたたちかい。スイは久しぶりだね」
「……僕は?」
僕より随分小柄なこの店のおばあちゃんは、もう随分お年を召しているけどしっかりしている、と思っていただけに発言に引っかかった。
「ん?そっちの男前はしょっちゅうこの店に来てくれるからね。先週も猪肉を持ってきてくれたかね?新鮮な肉はありがたいから大歓迎さ」
「………………」
「………………」
サッとクレナイを見ると、同じスピードで目を逸らされた。
徒歩3日距離をそんなに頻繁に来ていたのか?……いや、クレナイの足なら僕を抱えて半日だ、彼一人なら尚更早いだろう。
ここ1年程、日中はそれぞれバラバラに活動する事が多かったのは確かだ。
「……クレナイ、僕に黙って町に来てたの?」
「ああ」
僕に言わずに……いやこれは隠していたと言っても良いだろう。
そんなクレナイの態度に、今までなら子供の成長だと喜ぶ事だって出来たはずなのに、何故か今はそれが出来ない。
嫌だ、モヤモヤとした感情が僕の中でグルグルと渦を巻く。
「まあ許しておやりよスイ。惚れた相手に楽させてやりたいって言うんだから健気なもんじゃないか。もうあんたたちもくっついたんだろう?ドーンと構えてやるのが姉さんに女房さね」
「へ……女房……!?うえ、え!?」
きっと僕の顔は真っ赤になっているだろう。口はただはくはくとして言葉が出ない。
惚れた相手に楽をさせたい?
ついにくっついた?
本人だって知らなかったクレナイと僕の事情を、どうしておばあちゃんが知っているのか?
「おや?もうくっついたんだろう?この間とはあんたたちの空気が全然違うよ。おめでとう、これは祝いだ持っておゆき」
「ありがとう。じゃあこれは今回の分……婆、買い取りを頼む」
「ちょ、え、ま……、えええ……?」
まだ混乱から抜け出せない僕だけを置いてきぼりにして、クレナイとおばあちゃんはサッサと取引を終わらせてしまった。
204
あなたにおすすめの小説
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
呪われ竜騎士とヤンデレ魔法使いの打算
てんつぶ
BL
「呪いは解くので、結婚しませんか?」
竜を愛する竜騎士・リウは、横暴な第二王子を庇って代わりに竜の呪いを受けてしまった。
痛みに身を裂かれる日々の中、偶然出会った天才魔法使い・ラーゴが痛みを魔法で解消してくれた上、解呪を手伝ってくれるという。
だがその条件は「ラーゴと結婚すること」――。
初対面から好意を抱かれる理由は分からないものの、竜騎士の死は竜の死だ。魔法使い・ラーゴの提案に飛びつき、偽りの婚約者となるリウだったが――。
学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。
第二話「兄と呼べない理由」
セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。
第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。
躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。
そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。
第四話「誘惑」
セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。
愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。
第五話「月夜の口づけ」
セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる