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第一章

5ー婚約者登場!

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 リアンカにお出掛け用のワンピースを着せられ、髪も櫛を入れられ、さてご対面です!

「お初にお目にかかります。帝国第3皇子のレオン・ド・ペンドラゴンです。暫くお世話になります」

 私の婚約者、隣国の帝国第3皇子レオン・ド・ペンドラゴン。
 アッシュブロンドのふんわりウェーブの肩下まである髪を一つに纏めて、澄んだ空の様なスカイブルーの瞳。
 背も高くて、皇子様なのに鍛えてるのが服の上からでも分かる感じ。んー、細マッチョて感じですか?

 何? ピカピカですか?
 キラキラですか?
 リア充ですか?
 て、感じのイケメンさんです。1歳上かぁ……ふーん。
 でもこの皇子様、たった一人で来たの?
 隣国から?
 従者もつけないで?
 魔物が出るのに?
 何日もかけて挨拶の為だけに一人で?

「これはご丁寧に。私はアーデス・ティシュトリアです。こちらは妻のテレス、嫡男のラウアース、次男のジュード、そして長女のルルーシュアです。ルルーシュア、ご挨拶を」
「お初にお目にかかります。ティシュトリア公爵家長女のルルーシュアです。ようこそお越し下さいました」
「……!!」

 ん? 皇子様、無言なの? ビックリなの? どこ見ているの? あれ? 何か私変かしら?

「その、ルルーシュア嬢。もしかしてシルバーフェンリルですか?」

 あぁ、モモを見て固まっていたのね。

「はい、私の大切な相棒でモモと言います。お利口さんなので大丈夫ですよ」
「わふっ!『よろしくね!』」
「モモが、よろしくと言ってます」
「はぁ……シルバーフェンリルに会えるとは! 凄いな! こちらこそ宜しくお願いします」

 皇子が手を出したので、思わずつられて手を出すと手の甲にチュッてされた。
 超自然に! チュッて! 恐るべし、皇子スキル!

「さ、お部屋にご案内して。お疲れでしょう。一休みされたらお食事に致しましょう」

 あれ? 皆スルーだわ。戸惑っているのは私だけ? 顔が火照るじゃない! やだ、恥ずかしい。


 さて、お食事です。
 皇子様、何故か食事をガン見してます。目をキラキラさせて。何故に?

「その、この食事は? いつもこの様な食事ですか?」

 そぅ、野菜たっぷりのスープが終わって、まだパスタとパンが出てきただけですが、皇子様はそのパスタとパンをガン見しています。
 ポピュラーなパスタに、ごく普通のパンだと思うんだけどなぁ。
 因みに今日のパスタは海の幸たっぷりのトマトソースですよ。ね、メジャーなパスタでしょ? 私の好きなパスタの一つね。港が近いから魚介類も新鮮なのが手に入るのよ。ステキ。

「まあ、レオン殿下。珍しいですか? このパスタとパンはルルーシュアが考案したものですのよ。パスタもパンも我領地では普通ですよ」

 お母様が含み笑顔でお答えしています。何故に? 私が考案したのね、知らなかったわ。

「パスタ! 懐かしい! ペスカトーレ美味い! パンがフワフワだ!」

 ん? 懐かしいですって? ペスカトーレですって!?

「「え…!?」」

 皇子様とバチッと眼が合っちゃいました。なに? 何? なにかしら?

「ルルーシュア嬢、もしかして食チートですか?」

 小声で聞いてきたわよ、皇子様。
 チートて言葉、この世界にもあるの? それともまさか!? 皇子様も!?

「え? テンプレ? レオンて魔王の……」
「やめろ、悪いスライムじゃないし」
「まさか!?」
「お二人共、食事中ですよ」

 お母様に注意されてしまいましたわ。オホホ……

「殿下、後程少しお話し致しませんか?」
「そうですね、是非!」

 帝国第3皇子、食事中ズッと眼が血走ってましたよ。そして、賑やかだったわよ。
 うちの食事てそんなに珍しいかしら? ウマウマよ。
 んー。この世界では珍しいのかな? イマイチ記憶が戻りきらないなぁ。

「本当に美味しく頂きました。こんなに美味しい食事は初めてです。驚きました。帝国でもこれ程のものはありませんね」

 そうね。だって皇子様、ガッツリ食べてましたもんね。おかわりする勢いだったわ。満足そうで良かったわよ。
 お父様と二人のお兄様はおかわりしてましたけどね。
 今日のお昼は前世で言う所の、軽いイタリアン料理てとこかしら。

「まあ、お気に召された様で良かったですわ」
「夫人、少しルルーシュア嬢と二人でお話しさせて頂いても宜しいか?」
「ええ、では応接室の方へ。食後のデザートもお持ちしますわ」
「デザートまで!?」

 反応がいちいち大袈裟よね?

 お隣の応接室に移動してきました。ここからはモモも一緒ですよ。
 今日は皇子様がいらしたのでモモは別室でリアンカ達と食べてました。いつもは一緒なのよ。

「殿下、此方でお話し致しませんか?」

 ……と、誘ってみる。

「ああ、そうしよう」

 お父様お母様達の眼が気になりますが、取り敢えず話さなきゃね。小声でね。

「殿下、もしかして……?」
「ああ、俺は日本人だった。ルルーシュア嬢は?」

 アッサリ認めちゃったわ!

「私も日本人! 本当に!? いつから記憶があるのですか?」
「5歳の時に流行病にかかって生死を彷徨った事があって、その時に前世を思い出した。回復して眼が覚めたらマジか!? て、感じだな。ルルーシュア嬢は?」
「私は昨日です」
「はぁっ? 昨日!?」
「そう、昨日ですよ。裏の森でミスリルリザードの群れが出てたんです。砦の上からロックバレットを打った直後に思い出しました。もうビックリしたわ。また死んじゃったかと思ったわ」
「すげータイミングだな! 劇ヤバじゃん!! イヤ、倒したのかよ!?」
「そうよ。お兄様達と一緒にです。その時にモモもシルバーフェンリルになって」
「え? じゃあ最初からシルバーフェンリルだったんじゃないのか?」
「最初はトイプードルでした。しかも前世から一緒なのよ」
「わふっ」
「トイプ……ちょっと待ってくれ、俺の記憶ではトイプードルって、小さくてフワモコで可愛い愛玩犬の代表じゃん……」
「そうですよ。その小さくてフワモコで可愛いシルバーのトイプードル」
『え? 今は可愛くないのかしら?」
「……!! 喋った!?」
「はい、モモは喋れます。でもこれは念話ですよ。モモは大きくなっても可愛いわよー!」
「わふんっ!」
「マジかー!? スゲーな!! 俺も欲しい!!」
「『無理よ』」
「だよねー。せめてモフモフさせてくれー!」

 紅茶とデザートが運ばれてきました。また殿下ガン見です。

「ちょ……コレ! イチゴのショートケーキ!」
「そうよ。美味しいわよ」
「マジかー! 俺、本当に来てヨカッタよ! ルルーシュア嬢、末永くヨロ!」
「は!? 何!? 軽っ! 婚約破棄しに来たんじゃないの?」
「はぁ? 婚約破棄!? なんでだよ!?」
「だってラノベとか漫画のテンプレでしょ?」
「いやいや、タイミングが違うっしょ。卒業パーティーじゃあるまいし。俺の婚約者が、前世の姉がハマってた乙ゲーの悪役令嬢だったから、ぶっちゃけ気になって無理矢理単独で見に来た! 苺うまっ!」

 な、な、なんて事ッ!!!!

「私、悪役令嬢なの!?」
「そう、ゲームではね。ま、ぶっちゃけ俺は隠し攻略キャラだしね。でもさ、ルルーシュア嬢はこの国の王子と婚約してないだろ? もう学園も卒業してるし。なんかさ、色々違うんだよね。ま、良く似た世界なのかなーてね。俺、ルルーシュア嬢だったら婚約破棄なんてしないよ。だって超可愛いし普通にいい子じゃん。ルルーシュア嬢は俺と婚約は嫌か?」
「そうじゃないけど。そっか、そーゆー世界なんだ。そっか……悪役令嬢かぁ」
「ケーキうまっ!」

 皇子、軽いです……そしてキラッキラの無自覚リア充です。
 超可愛いだって……! ヤダわ、テレちゃうじゃない!
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