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第二章

66ー第三者

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 また、モルドレッド家の関与が浮き出てきました。マーリソン様のお気持ちは大丈夫かしら。

「ルルーシュア様、お気遣い無用で御座いますよ」
「マーリソン様」
「私は既にモルドレッド家を出ております。私の帰る場所はルルーシュア様の元、ティシュトリア公爵家なのですよ」
「ルル様、身内だからこそ許せない事もあります。まして同業であれば尚のこと」
「ユリウス」
「ユリウス殿の仰る通りです。私はモルドレッド家の馬鹿さ加減に呆れるばかりです」
「マーリソン様、分かりました。でも一人で抱え込んだりはしないで下さい。ユリウスも私もマーリソン様は仲間だと思っております」
「なんとッ! 勿体ないお言葉で御座います!」

 あ、ダメだ。これはまたいつものテンションだわ。

「このマーリソン、命に変えましても……」
「いや、いいから!」
「ルルーシュア様、そうですか? 残念で御座います」

 なんでよ! もう、真面目に心配していたのに!

「ルル様、マーリソン殿の良いところです」

 ユリウス、それはおかしいわ。
 翌日、ラウ兄様とジュード兄様は其々森へ捜索に行かれました。私はお母様やレオン様と一緒にジュノー様がいらっしゃるクロノス侯爵のお部屋に来ています。

「ジュノー様、お父上の意識が戻られて良かったですわ」
「公爵夫人、有難う御座います。大した事がなかった様でホッとしました」

 実は、大した事あったんだけどね。

「ジュノー様はお休みになられましたか?お食事は? ジュノー様が身体を壊されたら、お父様は心配なされますよ」
「ルル様、有難う御座います。昨日は食事を食べていても味がわからなくて進みませんでしたが、今朝はしっかり頂きました」
「それは良かったです。私供が着いておりますので、少しお部屋でお休みになられては如何ですか?」

 お母様はそう言って、ジュノー様の侍女を呼ばれました。

「では、少しだけ失礼致します」

 ジュノー様が侍女に付き添われて、クロノス侯爵の部屋を出て行かれました。私達はクロノス侯爵の休んでおられる寝室の方へ移動します。

「これは、公爵夫人、ルルーシュア嬢、レオン殿下。此度はまたご迷惑をお掛けしてしまい、大変申し訳なく……」
「いえ。クロノス侯爵、お気遣いなく。それよりもお聞きしたい事が御座います。お身体は如何ですか?」
「はい、構いません。私が狙われた事ですね?」

 あら、狙われた自覚がお有りなのね。

「心当たりがあるのですか?」
「心当たりと申しますか。実は婚約破棄の後、ジュノー宛に脅迫の様な文が届くようになりまして」
「脅迫ですか?」
「はい。ジュノーには伝えておりませんが、ジュノーがいなければ、男爵令嬢は第2王子と幸せになったのだと」
「逆恨みですか?」
「それが段々と内容が過激になって参りまして、ジュノーが男爵令嬢を陥れただの、自分が令嬢を幸せにする筈だっただのと」
「まあ!」
「どうやら、調べる必要がありますね」
「レオン殿下、そのようです」
「クロノス侯爵はそれでジュノー様と一緒に王都を出てこられたのですか?」
「ルルーシュア嬢。勿論、それも御座いますが一番はジュノーの気晴らしにでもなればと、その程度の気持ちだったのです。しかしこの様な事が起こると、気晴らしなどとは言っておられません」
「そうですね、お話を聞くとジュノー様も狙われる可能性がありますね」
「公爵夫人、レオン殿下、ルルーシュア嬢。お願い致します、私は構いません。どうか、ジュノーをお守り頂けないでしょうか? 情けない事に、私は守る力を持ち合わせておりません。どうか、ジュノーを。ジュノーは幼い頃に母を亡くしております。男の私がいくら気を掛けて育てていても、行き届かない事が沢山あった事でしょう。それなのに、あの子は優しい穏やかな娘に育ってくれました。私に不満の一つも零した事がないのです。そんな娘が私の前で初めて涙を流したのが、第2王子と男爵令嬢との事だったのです。それ故に、私は王家に仕える気持ちがなくなってしまいました。ジュノーは私には宝なのです。どうか、ジュノーを」
「親にとって子供は皆宝ですものね。私だってルルに何かあれば黙っていられませんわ。私なら王家を滅ぼしていたかも知れませんわ」

 お母様、目が怖いです。

「ルル、失礼よ」

 また、心を読まれました。何故に!

「ルルは分かりやすいんだよ」

 レオン様まで!

「大丈夫ですわ。皆、侯爵やジュノー嬢をお守りする為に動いております。今はゆっくり身体を休めて下さい」
「公爵夫人、有難うございます。感謝致します」

 やはり第三者の関与がありましたね。

「お母様、お父様に報告を」
「そうね。貴方達は一旦部屋に戻りなさい。一人でウロついてはダメよ。ルル、分かった?」
「はい、お母様」

 そんな念を押さなくても。

「ルルは何を仕出かすか分からないから言っているのよ。レオン殿下、お願いしますね。決して一緒に無茶をしない様に」
「夫人、勿論です」
「ガイウスはどこかしら?」

 と、言いながらお母様はお父様の執務室の方へ行かれました。
 私の部屋に戻ってきました。

「ルル様、お茶をお入れしましょう」
「ええ、リアンカ有難う」
「ピ」
「ピア、大人しくしてたか?」
「ピー!」
「当たり前だと言いたげだな」
「レオン様、どんどんきな臭くなってきましたね」
「そうだな。しかし、脅迫状の内容がな」
「そうですよね」

 そう、まるで魅了に掛かっているかの様な内容でした。周りが見えていない、思い込みの激しいものです。

「でも、あの後王家が関係者全てに魅了の解呪薬を飲ませた筈だわ」
「そうだよな。でもな……」

 レオン様?

「俺はあの王家を信用していない」
「どうしてですか?」
「まず、第2王子と男爵令嬢との事をあそこ迄放っておく事自体が信じられないな。帝国だと、男爵令嬢一家はとっくに即捕縛にお家断絶だ」
「そうなんですか?」
「ああ。それに第2王子も即廃嫡だな」

 まあ、そんなに?

「帝国は皇家になるのだが、王国なら王家だな。王家はいつどんな時にどんな方法で狙われるか分からないんだ。それも踏まえて王家が婚約者を決める。その婚約者を蔑ろにしたどころか、低位貴族の男爵令嬢と懇ろになるなど愚か以外に何者でもないな。王家としての教育が全くなっていない。そんな王子は、王子としての資質がないとみなされる。ついでに言うと、その王子を産み育てた王妃も無能と判断される」
 
 あらとっても厳しいのね。
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