人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 １４

＝何処かで人生の乗り換え駅でも有れば＝
　そこへ行って乗り換えたいが、そうもいかず。牧師さんも一々人の保証人になる訳にもいかない。中には自棄を起こして犯罪やヤクザの世界に落ちている先輩、後輩もいるのだ。
　戦後間もないので、当時の日本はまだまだ衣、食、住は追い付かず、地方からの集団就職が都会へと流れてきたのだ。大方は貧しい家庭で、１人でも食い口を減らす為に高校進学より、家計を助ける方が優先されたのだ。この時期に大学まで行けた人は余程恵まれた環境なのだろう。

　５月５日からベーカリーで働く事に。パン作りがメインだが、他に洋菓子、和菓子部門があり、私は１番忙しいパン部門に回された。配達人、販売員、事務員等々で約４３名近く働いていた。後で漏れ聴こえてきたのが、事務員と社長が不倫関係にあると。メガネを掛けていて、ツンと取り澄まし冷たい感じの美人で４２歳位で人妻。勿論社長にも気の強い奥さんと２人の男の子がいた。
　従業員の半分以上は住込で近くのアパートに。男が２０人前後、女は１１名位で人の出入りも多い。パン部門は１５名位で。学校のパンも作っているので朝の３時から始まるのだ。毎朝眠たくて、低血圧の人は苦労したり、不機嫌だったりと先輩にも気を遣ったりと。
　真冬の寒い時は床がコンクリートなので足元から深々と冷えてくるのだ。
　まず見習いは雑用から下準備作業が多い。砂糖、小麦粉、コンスターチとかを大きなタンクへと補充するのだが、一袋が２０～３０ｋｇもあり２つ一緒に担がないと怒られる。倉庫から工場へと台車も使えず担いで運ぶのがかなりの肉体労働に。足元が悪く狭くて滑ったりで危ないのだ。少なくても３５ｍを５往復するので真夏などはヘトヘトになる。
　次にパンを焼く鉄板が約５００枚を綺麗に掃除して釜に入れて少し温めて油を引く作業も中々きついのだ。鉄板が冷えてると油が伸びにくいのでパンを焼いた時にくっついて商品にならないのだ。その合間に色々と出てくる洗い物や、食パン用の長い金型の掃除をして油を引くのだが、１日に３０本を４回転を繰り返す作業もあり、かなりの体力勝負である。まぁ、給与を貰って身体を鍛えていると思わないとやってられない。
　最後は全員で床掃除を棒ズリでこな石鹸を巻きゴシゴシと、これをきっちりしないと腐って腐敗臭の元になるので、この作業をサボる奴もいたりでトラブルになる。　　　　続く