人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた 実話 １９

私は８時から作業場に入り店内外の掃除、便所も店の前の道路を少し広い目にほうきで掃いたり約１時間程度掛けて、チーフは９時前に来る。
　「おはようございます」
　「うん」
　うなづくだけで、照れ屋なのか⁈寡黙なのか、お互いの性格の探り合い状態。まず前日に売れたケーキのチェック、補充のチェック。お店は１０時オープンだが１２時迄に全ての商品が陳列台に揃っていないとオーナーは不機嫌になるのだ。
　生クリーム、バタークリーム、カスタードクリーム等を仕込んでいき、其々を毎日味見するので、晩年は虫歯だらけに、一種の職業病である。
　前日に焼いていたシュークリーム、エクレアの皮にカスタード、生クリームを詰めていくのだが、きっちりと計量しているか、抜打ちチェックが入るので手が抜けない。エクレアにはチョコレートを掛けるが、これは湯煎で溶かすが熱くし過ぎると艶が悪くなるのでチェックが厳しい。
　１０時前にパート２人が入り開店準備を。ケーキをラッピングしてショーケースに並べていき、余程の飛び込みがなければ大体は揃うのだ。
　１２時過ぎに作業は一服して昼食を、店が出前とかオーナーの奥さんが手料理とかを持参してくれたり。この時に軽い打ち合わせが、段取りを話し合う。別注文の確認、納期、材料の手配等々を。食後にはコーヒーも出たりで凄くアットホームな雰囲気で従業員を大事にしている。以前のパン屋がブラックだったので余計に身に染みる。
　此処のケーキは味が好評で飛び込み注文も多い。一回の注文で３０～１００個の数はザラにあり、バースデーケーキ、内祝用、進物用、ウェディングケーキ等々で予定表は殆ど埋まっている。特にウェディングケーキは製造直なので、ホテルのピンハネが無い分２割以上安いので好評なのだ。
　水曜日は定休日に。昼からはチーフの指示で生地の仕込みと焼き物の行程に。大きなステンレスの鍋に（約１５キロ）に生地が加わると２６キロになる。これを担いで予め用意している木枠の鉄板に４～６枚に流し込むの　だが、綺麗に平均に速く目分量で、これにもコツとキャリアがいる。必要以上に生地を触るとふっくらと焼き上がらないのと、四角を同じ高さ、水平にならすのも難しい。焼き上がると答えが顕著に出るのだ。　　続く