人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 ２０

高さが揃って、きめが細かいか、空気穴が空いてないか、パサパサになってないかと少しづつ失敗を重ねて上手になる人と全くの学習力、向上心、センスの　無い人は放り出されるか、自ら辞めていく。此処を見抜くのがチーフやオーナーの仕事。何せ個人経営なので少数精鋭。指示待ちタイプは不用。何でも率先して取り組み、気働きが出来る人でないと続かない。当時は盗んでまで技術を学べで丁寧な指導はない世界。で、生地を電気釜で焼いていくのだが下手な人は生焼けや規定の大きさに膨らまず廃棄処分に。毎日色々とやるので面白い世界だ。ケーキの装飾にもセンスも要求される。大雑把、慌てものは不向き繊細で丁寧さを求められる。
　スポンジが終わると、ロール巻き用もまた同じ様に仕込み焼いていき、、次は丸型を焼いて、これはショートケーキやバースデーケーキにも成ったり。少し手が開くと詰め合わせ用のクッキーを１２種類程を仕込んで焼きストックして全て揃うと化粧缶に詰めていくのだ。クッキーを焼くと室内外に甘ったるい匂いが充満してくる。
　余程の大口の　注文がない限り大体は７時迄には終わり、お店は９時まで開けている。よって前のパン屋より速く終わるので人間らしい生活に。夜は自炊をするので、段々と料理も上手くなって、作るのも嫌いじゃない方なので、それとたまに奥さんが差し入れをくれるので大いに助かったものだ。アットホームが凄く気に入っていたが、一年半程経過した時にオーナーが
　「小田ょ、よく頑張ってくれているが、先輩からどうしても人手が足らんので、、、」
　割当が回ってきたので、２年程応援に行ってくれないかと。２年以内に必ず呼び戻すからと言われて不本意だが渋々移ることに。本当の理由は他にあったのかも⁈施設育ちが悪い方に勘繰られ体良く追い出されたのが本意かも⁈。場所は大阪の梅田。大きい荷物は前もってオーナーが送ってくれた。３日後に電車で大阪へ、片道４０分位で駅から徒歩１５分、目当のサンワベーカリーに着いた。朝の１０時前で、想像していたよりは大規模で驚いた。先ずは事務所に出向いて紹介状を事務員に渡すと形式的な面接だけで２日後から仕事と決まった。寮に案内されたが３階建ての立派な鉄筋コンクリート、部屋数は１２室も有り、一部屋に４～５人収容。二段ベットが有り満員で６５人程になる。他に女子寮もあるのだ。私は２階の角部屋に決まった。次の日に同室の人に挨拶がてら煙草やピールを配ったが　　続く