人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 ２２

他にシュークリームの　皮を焼く鉄板が約１千枚も有り、これを金型で軽く擦ってカスを取りから拭きをした後に、釜に入れて温めて油拭きするのだが約２時間以上掛かるので途中交代したりで、洗い物も長くやると手がふやけたりと、それでも次から次へと、、、中には嫌がらせで投げ込んで来て飛沫が顔に掛かったりで睨み返すと
　「何や文句あるんか？」
　逆に突っかかってくる。
　毎日の忙しさに心の余裕が無く殺伐とした雰囲気が、たまには職人同士が小競り合いになって途中で帰ったり、辞めたりと。
　職人は変人、へそ曲がりも多い。それらを上手くまとめ、回していくのが主任の役目。
　ケーキ部門だけで４０名位い働いていた。何とか半年我慢してたら、今度は下準備班に回されたが、何処も忙しいが、ここは仕事の段取りの部門。よって流れ、効率に大きく左右するので気が張る。職人の世界は
　《段取りが８割、仕事は２割》
　と言い、要は段取りで決まるのだ。
　生、バター、カスタードの格クリーム等々を仕込むのだが半端な量じゃないので失敗は許されないのだ。其々を大きな台車に乗せて、主任のチェックが入りミスると即洗い物班に格下げされるのだ。３種類のクリームを作るので２人が狩りでお互いでチェックしたり、かなりの重労働になる。その後はフルーツとかの缶詰を倉庫から運び其々の　指定の大きさにカットし、綺麗に洗いボールに移し盛り付け班に回す。又生のイチゴのヘタ取りをしさらっと洗い傷んでいるものはジャム工程に回す。生りんごもスライスしてアップルパイ用に煮込んでいく１回で１５キロも。まぁ毎日が忙しいに尽きる。こんなにケーキが売れるのかと呆れたものだ。他にバースデー、ウェディングケーキやクッキー、バウムクーヘン、カステラ、パイ等々。
　然しこの仕事も１年近く経つと、このままでいいのかと考える。ここにいたら一人前の　職人に成るには何年掛かるのか⁈この時代は洋菓子が目新しくて何処でも募集が有ったのだ。もう一度前の六甲の店に相談したかったが、何か利用された不信感もあったので自力で個人のケーキ屋に移った。職人が２人と見習いが私を入れて３人、パート合わせて９人がいた。後でわかったのだが、職人の世界では食べ物の職人は１番給与が安い。販売単価が安いのと、ロスも多い（売れ残り）。束縛時間も長いしお盆、正月も稼ぎどきなので休み無し。それに日給月給なので月４回以外に休むと減給になるのとボーナスは些少で退職金も殆ど無いので、かなり不安定の世界なのだ。　　続く