人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 ２４

オーナーの粋な計らいで給与を少し上乗せしてくれたのと合わせて僅かな貯金を持っていたので、兎に角１度は東京に行くべきと決心して２１才の後半、１人で東京へと向かったのだ。
　昭和４４年１０月夜行列車“銀河”で当時は新幹線は高いのと別に急ぐ旅でもないし。
　列車に揺られながら、この先を考えると興奮と不安で中々寝付けず、朝の６時頃に横浜に着いたので衝動的に下車してしまった。
　東京迄の切符を買っていたが、払戻しをしたかは記憶が無い。多分してるだろう。
　何のアテもなく知人、コネも無し。さてどうしたものか。駅前広場の噴水で煙草を吸っていると、どこからともなく
　「兄ちゃん１本くれんかね」
　前歯が２本しかなくヨレヨレの格好で３０代後半なのか？髪が肩まであり、少し匂いが、今でいうホームレス。当時はヒッピー族と言っていたが、軽く無視してたが。
　「１本だけやど」
　手渡すと
　「兄ちゃん、関西の人で」
　「そうやが、、、」
　（そうや、こいつにこの辺の情報を探ろう）
　近くで缶コーヒーを買って渡すと
　「えぇーいいのか、ありがとう」
　意外と常識があるんや、お礼に色々教えて貰った。駅の西口と東口があり東口は夜の社交場でキャバレー、クラブ、アルサロ、スナックが多いのと、どこどこはヤクザの資本が、此処は金払いが悪い、あっちは金払いが良い。食べ物はどこが美味いとか情報のお礼に残りの煙草を箱ごとあげるとニャッと笑うのだが、歯が黄ばんで気持ち悪い。
　その日から先ずアパート探しに専念したが、驚いたのがこっちは礼金１ヶ月分だけで敷金、保証人も無しで入居出来たので初期資本が些少で済んだのが、今では考えられない。ある意味住み易い時代だった。風呂は無く、便所と流しは共同で１人位の自炊は何とか出来た。６畳一間だけどかなり安かった記憶がある。２日で最低限の物を揃えて次の日から取り敢えず水商売が手っ取り早く稼げるのでヒッピー族の情報を参考に東口を午後２時頃から下見調査を兼ねて流していたら、募集が３件有ったので夕方に電話を入れたら一件がその日に面接可能だったので出向き、此処であっさりと決まったので拍子抜けに。保証人とか云々が無くて。自分で言うのも何だが私は第一印象は好感を持たれ易い人徳があるようだ。　　　続く