人生を斜交いに生きた男 実話

人生を斜交いに生きた男 実話 ３６

「はぁー」
　私の性格は自分で言うのも何だが仕事は真面目だし、責任感も強いので惜しまれるタイプである。ズル休みとかは出来ないし、やる事はキッチリしないと不合理な事は上司でも抗議するのだ。陰でガタガタ言うのは苦手だし顔に出るので、思った事を心に秘めるよりは言う方なので損なタイプでゴマスリも大の苦手である。

　まだ肌寒い３月から神戸に移り１から出直しをした。彼女としては大変な冒険だったと思う。仕事探し全く見知らぬ土地への不安、私の経済力の弱さとか色々考えるとよく駆け落ちをしてくれたと、、、
　兎に角安定の為に仕事探しを最優先に、新聞や職安しか手段が無い。当時はフリーペーパーも充実してなくて、保証人、学歴、免許も無しでは上のレベルを目指せない。少し良い会社に潜り込む為にも必要悪として高卒と偽って面接まで漕ぎ着けないと土俵に上がって相撲が取れないのだ。今みたいな個人情報云々に厳しくなかったのもある意味ラッキーだったのか⁈　当時は一寸した会社なら戸籍謄本を求められたが何とか３流だが株式会社に入れたのだ。神戸の長田にあるケミカルシューズを全国の問屋に販売する商事会社。この会社は神戸で初めて立ち上げたばかりで、東京の人達が以前の会社で労働組合発起活動に失敗しそのメンバー９人が都落ちして新事業を、その第一期生として地元の人３人を採用、この中の１人として潜り込めたのだ。
　この地区はいわゆる三国人達が身を寄せ合って靴を生産するメーカーが約６０社程がひしめきあっているが、国籍問題があって直接全国の問屋、小売店、デパートには売れないので、ワンクッション噛ませる役目が地元の問屋、商事会社にあるのだ。当時はまだ未だ現金より手形が主流で不渡りや有名デパートの手形が危険なとこへ流れないようにと。冬になるとブーツが売れるので一件の取引だけでも３，０００万円近くになるので一か八かの大勝負になるのだ。１０件近くになると３億以上になるので、一件でも不渡りを摑まされるとたちまち資金難に陥り倒産の憂き目に遭うのだ。
　入社１年目は荷物の発送の段取り、これが結構重いのだ。ワンケースに５０足入っているのでそれを新しい段ボールに入れ換えて他の所へ発送したり。全国から返品整理をしたりとか力仕事が多い。又年２回夏物、冬物の新作の展示会を３日間ホテルの部屋を借りてするので下準備やらと色々雑用があるのだ。　　続く