元ゲームオタク転生悪役令嬢は推しを幸せにするためにあらゆる死亡フラグをチート機能で叩きおります!

蓮斗♀(活動停止/再開の予定なし)

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1節[第一章]

第十二話『設定と違うのはいい事ばかりじゃない』

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レインがまだ十歳の時、仕えていた従者が亡くなってしまった。窓を拭いていた最中に風に煽られバランスを崩し柵から飛び出して転落し、頭を強打した事が死因だという。レインはその者を実の祖父のように慕っていた。手を掴みながら泣きじゃくるレインを父と母そして三人の兄がゆっくりと慰めてくれた。

しかし裏で兄達はその従者の死に方に疑問を抱いていた。つい昨日まで元気だったものが急に死ぬことなど有り得るのか。大切な妹の従者は家族全員が任せて大丈夫だと信頼した者を仕わせた。どんな時でも調査を怠らないフィブアはある一つの疑念を持っていた。

従者は何者かによって殺されたという線。常にレインの周りを警戒していた従者はレインに対する異変を察知し食い止めようとし殺されたのではないか。そう考え始めていた。

フィブアの考えにスベイスとヤヌアも賛同した。そう思わせる証拠が上がってきたからだ。
普段滅多に争わないその従者が声を上げて怒鳴っているのをたまたま通りかかったメイドが聞いていた。その会話の内容はあまりに恐ろしいものだった。

「君は何をしたかわかっているのか!」

「老いぼれが俺様の料理に口を出すつもりか!」

「この料理がどなたのものかわかっていてこれを入れたのか!」

「だったら何だ!お前に俺様の料理にケチをつける権限なんかねぇぞ!」

「だったら君は今すぐ下働きへ戻した方が良さそうだ。厨房にももう二度と入らせない方がいいだろう。」

「んだとじじぃ!!なんかあるってんなら言ってみろよ!」

「君がレイン様の食事に入れたこの葉は“猛毒”の代物だ!これを故意に入れたというのなら、君は正式な罪人だ!それでも反論するか!」

「……っち。よく勘が鋭いじじぃだな?なんだ?上に報告するか?そんなんじゃ俺様は追放にはならねぇぜ?」

「もちろん上には報告させてもらう。君は殺害容疑で告訴する。レイン様の命を奪おうなどと言語道断!きっちり償ってもらう!」

それがメイドの聞いた会話だったらしい。レインの従者は上に報告したらしいがこちらには来ていない。調べればその料理人は従者長と取引をしていたらしく、対価の代わりに料理人のやることを全て見逃していた。

その後レインの従者は死亡。兄達は料理人が従者を殺したと考え隠蔽していた従者長も同時に拘束した。

全てが明らかになった従者長は顔を青ざめ料理人はケロッとした態度だった。誰かに指示されたのか、どこから毒草を入手したのか、料理人に問いただしたが口を開くことはなかった。

そのまま従者長は追放、料理人は王族に対する毒殺未遂で死刑になった。レインには何も知らせないよう兄達は秘密にしていた。しかし、兄達に会いに来ていたレインが盗み聞いていたことをまだ兄達は知らない。

レインはその話を聞いて料理人を憎んだが大好きな従者はそんなことは望んでいないと考え心の中で気持ちを押し殺した。

レインに仕えていた従者はかつて闇市で働かされていた少年を初代ウィンター家当主が雇い育てられた者だった。それを従者から聞いていたレインは同じように闇市の子どもを雇いそばに置こうと考えた。

そして、闇市に従者を探しに行ったところシオンと出会った。高額な争いが焦れったくなりとんでもない金額を言いシオンを購入した。

シオンはレインを輝いたような目で見つめた。レインはその時のシオンを見て昔祖父にみせてもらった死んだ従者の子供の頃の姿が重なった。

「初めまして。今日からあなたは私の従者よ?よろしくね。」

シオンは首をかしげながら差し出したレインの手を取りレイン・ウィンター家の従者になった。

これはレインの記憶。私が転生してくる前の記憶。まず私が驚いたのは、“レインの従者が殺されたことを知ってった”こと。

本来の設定ではレインの従者は病気で亡くなったって兄達から伝えられる。慕っていた従者がいなくなったストレスもあってよりいっそうワガママが加速して新しい従者のシオンをいじめるんだけど…。このレインの記憶じゃ一回もいじめてない。

じゃあ私が転生する前からレインはシオンをいじめてなかったの??シオンが何も言わなかったんじゃなくてそもそもいじめられてなかってこと?なら起きた時のあのシオンの反応は何??

その理由がレインの記憶からわかった。

レインはシオンを従者にしてからワガママを言わずシオンが失敗しても一切怒らず子供らしさを捨て一家紋の令嬢として振舞った。泣きたい時は沢山あるのにそれらを周りに見せず繕った笑顔を浮かべていた。

シオンは自分だけでもいいから気持ちを出すようにレインにお願いした。

レインはそれでも殻に閉じこもったように感情を繕った。シオンや兄達がいない所では密かに泣いて気持ちを保って…それを見ていたシオンはレインが年相応のか弱い女の子だと知る。そんなレインを心配させないようにシオンは昔レインに仕えていた従者のようにしっかりしようと動いた。

そうすれば自分に気持ちを出してくれるのではないか、そう思った。しかし一年経ってもレインは心を開かず本来の幼いレインはいなくなってしまった。

「シオン君、ありがとう」

この言葉に違和感を覚えていた。僕の方が従者で仕えいる側なんだから呼び捨てにしてくれてもいいのにと思っていた。

それをレインは知りながら呼び捨てにはしなかった。前の従者との思い出と自分の立場から気を抜いてはいけないとレインは考えていた。

だからあの時私がシオンって呼んでびっくりしてたんだ。頭を撫でるなんてこともレインは全くしなかったし、私が転生する前のレインは極力接触や気持ちを出すことを避けてたから。

転生する前のレインがこんなに辛い思いをしてたなんて…。これから会うヒロインももしかしたら違う性格になってるかも…。

「…ン?」

ヒロインに会うのはいつだっけ…。えっと…。

「イン?」

ぼんやりしてて思い出せない…。あんなにやりこんだのに、そういえばヒロインと会うのが設定通りとは限らないんじゃ…。

「レイン?」

「へっ!?」

「大丈夫か?ボーっとして。」

しまった!まだ話し中だった!

「だっ大丈夫です!すみません少し考えごとをしてて。」

シオンが下から不安そうに見つめてくる。私は無意識に頭を撫でた。それをノイン様が愛おしい目で見つめていたのをレインこと私は知らない。
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