わたしのパーティーが全員ラスボスなんだけど!?

きゃる

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第一章 ラスボスは難しい

不機嫌なラスボスたち

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「【ブレイズストラ――】」
「【氷壁】」

 間一髪、わたしの前に出現した氷の壁が、魔王の放った炎をはじく。

 ジュワッ

「ひゃあっ」

 大きくれた火球は、神殿の柱に激突した。

「うわあー」
「ひええっ」

 パラパラ崩れた柱のそばで、神官たちが慌てふためいている。

「しまった、タレス!」

 龍神のおかげで助かったけど、友人のタレスは大丈夫?

 急いで彼の姿を探すと、下男の彼はホウキを手にガタガタ震えていた。

「……ふう。怪我けがはないようね」

 たまたま人がいなくて良かったものの、神殿の柱が深くえぐれていた。

 一歩間違えれば大惨事。
 ラスボスたちの技は強大で、かなり危険だ。
 イケメン好きのわたしでも、推しに殺されたいとは思わない。

「あれれ~? つののお兄さん、外しちゃったね」

 魔王の横から顔を出し、人の悪意の集合体ライムバルトがケタケタ笑う。

 ――ライム様お願い、空気を読んで!

 ラベンダー色の上着に、同色の半ズボン。
 白いシャツに紫色の蝶ネクタイ。

 ライムバルトは少年のような出で立ちだけど、『ミスリルワールド』に登場するれっきとしたラスボスだ。
 ゲームでは愛らしいボイス付きで人気は高いが、性格は結構えげつない。

「下っ手くそ~。僕が代わりにやってあげるよ」

 そのライムバルトが、両手を顔の前に構えた。神官たちのほとんどは、残って見ているようだ。

 このままでは危ない!

「ライムバルト様、話をさせてくださいっ」

 必死に叫んだわたしを見ながら、愛らしいラスボスが小首をかしげる。

「あっれ~、人間ごときが僕の名を軽々しく口にしたの? その上、指図するつもり?」
「これこれ。女性には優しくしなくてはいけませんよ」
「ちぇ~~」

 大天使、ウリエルがさとしてくれたおかげで、なんとか収まった?
 ウリエルの金模様の赤いローブは派手だけど、中性的な美貌びぼうによく似合う。

 後に堕天使だてんしとなるウリエル。ラスボスなのに意外とチャラくて、自分を倒しに来た女性キャラを気まぐれに回復したりする。
 そのため、彼のファンはほとんど女性との噂。

「なーんてね。それっ―――」
「えっ!?」

 ライムバルトの手から、何かが放たれた。
 とっさにしゃがむと、黒い霧のようなものが頭上を通過する。

 ――これって【カオスミスト】!

 命の危険はないけれど、呑み込まれると相手の意のままに操られてしまう代物だ。

「ざーんねん。だけどこれ、小回りもくんだよね」

 ――うん、知ってる。

 魔力の弱い私に、ラスボスの技を防ぐすべはない。
 助けを求めて大神官を見ると、彼は信じられないというふうに、目を大きく開いていた。

 ――そんな! とにかく逃げよう。

「建物の中に入れれば……」

 必死に走るわたしの背後で、可愛い声がする。

「へえ。君、僕から逃げられるとでも?」

 今、答えている暇はない。

「大神官様っ、避難してください」

 狙われているのはわたしだから、彼は関係ないはずだ。
 でも、万が一ってこともある。

「軌道がゲームの通りなら、避けられるかもしれない」

 ところが慌てていたせいで、ローブのすそを踏んづけた。

「わわっ」

 バランスを崩した瞬間、黒い霧が向きを変え、わたしにおおかぶさった。

「きゃあっ」

 ――呑み込まれる!

「【セイクリッドシャワー】」

 もうダメだと思った途端、良く通る声がした。

 金色の光が辺りに満ちると黒い霧は見る間に消えて、温かな光のシャワーが降りそそぐ。

 ――これってウリエル様の技。

「助かった」
「チッ」

 ライムバルトが可愛い顔で舌打ちする。
 ゲームの通り、とんでもない性格だ。
 人の悪意が積み重なってできただけあって、彼は人の命をなんとも思っていない。

「はっ、笑止。偉そうに言ってそれか?」
「自分だって失敗したくせに」

 魔王と悪意が衝突し、睨み合っている。
 このすきに逃げれば……。

「生意気なやつめ。よいか、攻撃とはこのようにするのだ」

 走るわたしの横を、炎のかたまりが通過する。

「ひゃあっ」

 それは神殿に当たり、屋根の一部が崩落した。

「大変だ、逃げろっ」
「待て、置いていくな!」

 神官たちは大騒ぎ。
 我先に、と建物の中へ避難する。

「ふうん。じゃあ僕も。【ダークファング】!」

 ライムバルトが唱えると、黒い霧が狼のような形になって神官たちを追いかけた。逃げ惑う彼らの様子に、人の悪意は楽しそう。

「ハハハ、こりゃいいや。ねえ、どっちが多く殺せるか、競争しない?」

 彼らは人に恨みを抱くラスボスだ。
 今すぐなんとかしなければ、魔物を滅ぼす前に神殿がほろびてしまう!

「嫌っ、こっちに来ないで」
「やめろ、どけ!」

 神官たちの叫びが聞こえる。
 めてかかっていたせいか、余計に焦っているらしい。

 魔力を誇る先輩方も、ラスボスには太刀打ちできないようだ。

「ハハハ、見てあれ~。バッカみたい」

 人の悪意が、お腹を抱えて笑う。

「今すぐやめなさいっ!」

 わたしはそこで足を止め、思い切り怒鳴った。
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