5 / 19
第一章 ラスボスは難しい
まさかの能力
しおりを挟む
「ねえ、誰にものを言ってるの? 人間のくせに僕の邪魔する気?」
人の悪意の集合体――ライムバルトが、敵意むき出しで近づいてくる。
だけど、わたしも負けてはいない。
「種族は関係ありません。やめなさい、と言いました」
ここで消されるなら、それまでのこと。
何より解釈違いは許せない!
わたしの好きなRPGのラスボスは、一般人には手を出さない。城や塔、ダンジョンの奥深くに来た強い者しか相手にしなかった。
――弱い者をいじめて楽しむなんて、ラスボス界の風上にも置けない!
「へええ。お姉さん、僕に逆らうの?」
「つまらぬことを申すなら、お前から消すぞ」
人の悪意と魔王が結託し、わたしを脅す。
でも、ここで屈するわけにはいかない。
「いいんですか? わたしが消えたら、あなたたちも消えますよ」
精一杯のはったりだが、ラスボス相手に手段は選んでいられない。
「世迷い言を。邪魔だ、どけ」
「いいえ、どきません。今すぐやめてください」
魔王に一蹴されたけど、こうなったらもう、後には引けない。
自らの寿命と引き換えに、ラスボスたちを呼び出した。その責任は、わたしにある。
「人に危害を加えるなら、許しません」
「そう。だったらしょうがないね」
人の悪意が肩をすくめた。
その途端、神官たちを追いかけていた黒い霧が消える。
「わかってくださって、ありがとうございま……」
「な~んちゃって。【ダークファング】!」
「きゃあっ」
二度も同じ手に引っかかってしまった。
霧でできた狼が、今度はわたしに飛びかかる。
「なっ……氷壁!」
実態のない黒い霧は、龍神が作った氷の壁をもすり抜ける。
もう、ダメだ――。
「バシュッ」
狼の牙に噛まれた直後、黒い塊が霧散した。
「…………え?」
「あれれ? なんで?」
人の悪意の集合体、ライムバルトが大きな目を丸くする。
「ふん、お前の魔法が弱いということだ。【ファイヤーボール】」
今度は魔王、アルトローグが軽く手を振って、小さな火の玉をわたしに投げつけた。
ビシイッ
声を上げる間もなく、火の玉までもが弾かれた。
「なっ……」
魔王が驚くけれど、わたしもわけがわからない。
ラスボスの攻撃魔法が、なぜか当たらなかったのだ。
――まさか大神官が、わたしの知らないうちに防御魔法をかけてくれた?
けれど当の大神官は、口をポカンと開けている。
「違う? じゃあ、いったい誰が……」
「あれえ? すごいね」
「ふむ。あの女人に、助けは要らぬということか」
大天使ウリエルと龍神の龍ケ崎一連が、感心したように頷いている。
だけどわたしは、やっぱりわけがわからない。
「……なんで?」
「おのれ、魔法耐性が高いのか。ならば……」
低く唸った魔王が、先ほどとは桁違いの炎の渦を、己の頭上に出現させた。
――マズい。あの技は【クリティカルブレイズシュトローム】!
名前だけでなく、威力《いりょく》もさっきと段違い。辺り一帯を焼き尽くす技だ。
「お、おお、落ち着いてください」
「ハルカ、そなたが落ち着くのじゃ。早く宥めよ!」
大神官が叫ぶ。
そんなことを言われても、宥め方などわからない。
なんとかしないと、魔王の奥義でここにいる全てが息絶えてしまう。
「【大氷河】」
「【ウルティマホーリーブレス】」
「じゃあ、僕も。【インフェルノエクストリーム】」
――待って、待って、待って!
他のラスボスまで奥義を出すってどういうこと!?
これだと辺り一帯どころか、この世界全体が消し飛んでしまうじゃない。
「やめてーーーーーーーーーーーーーっ」
目を閉じて、力一杯絶叫した。
わたしのせいで、世界が滅ぶ。
やっぱり自分は、役立たず――――――――――――――――――――――――――。
ところが、いつまで経っても何も起こらない。
「……え?」
ラスボスたちも、驚いた顔でその場に立ち尽くす。
「どうしてみんな、途中でやめちゃったの?」
首を傾げるわたしの横で声がする。
「魔力切れ、じゃな」
「うわっと、大神官様!」
気がつくと、大神官がわたしの隣に立っていた。
「わしが思うに、彼らが元いた世界はここより魔素が濃かったのじゃろう。魔力不足に陥ったと見える」
魔素とは、大気中にある魔力の素のこと。
いくら魔力が多くても、取り入れなければ使えない。
「魔力不足? そうか。強大な魔法には、MPが大量に必要ですもんね」
「えむぴい? なんじゃ、それは」
「あっ……と、魔力を数値化したものです」
「そうか。そなたが元いた世界にも、魔法があったのじゃな。だから、彼らを召喚できたというわけか」
「ははは」
親代わりの大神官には、わたしがこことは別の世界から来たことも、ちゃ~んと話してある。
ただし、ゲームの話は内緒なので、笑ってごまかすことにした。
今は、ラスボスたちをおとなしくさせる方が先決だ。
――あれ? でも……。
大変なことに気づいてしまった。
「大神官様。魔素が薄くて魔力切れに陥るなら、強大な魔法を扱う彼らを召喚した意味がありません!」
人の悪意の集合体――ライムバルトが、敵意むき出しで近づいてくる。
だけど、わたしも負けてはいない。
「種族は関係ありません。やめなさい、と言いました」
ここで消されるなら、それまでのこと。
何より解釈違いは許せない!
わたしの好きなRPGのラスボスは、一般人には手を出さない。城や塔、ダンジョンの奥深くに来た強い者しか相手にしなかった。
――弱い者をいじめて楽しむなんて、ラスボス界の風上にも置けない!
「へええ。お姉さん、僕に逆らうの?」
「つまらぬことを申すなら、お前から消すぞ」
人の悪意と魔王が結託し、わたしを脅す。
でも、ここで屈するわけにはいかない。
「いいんですか? わたしが消えたら、あなたたちも消えますよ」
精一杯のはったりだが、ラスボス相手に手段は選んでいられない。
「世迷い言を。邪魔だ、どけ」
「いいえ、どきません。今すぐやめてください」
魔王に一蹴されたけど、こうなったらもう、後には引けない。
自らの寿命と引き換えに、ラスボスたちを呼び出した。その責任は、わたしにある。
「人に危害を加えるなら、許しません」
「そう。だったらしょうがないね」
人の悪意が肩をすくめた。
その途端、神官たちを追いかけていた黒い霧が消える。
「わかってくださって、ありがとうございま……」
「な~んちゃって。【ダークファング】!」
「きゃあっ」
二度も同じ手に引っかかってしまった。
霧でできた狼が、今度はわたしに飛びかかる。
「なっ……氷壁!」
実態のない黒い霧は、龍神が作った氷の壁をもすり抜ける。
もう、ダメだ――。
「バシュッ」
狼の牙に噛まれた直後、黒い塊が霧散した。
「…………え?」
「あれれ? なんで?」
人の悪意の集合体、ライムバルトが大きな目を丸くする。
「ふん、お前の魔法が弱いということだ。【ファイヤーボール】」
今度は魔王、アルトローグが軽く手を振って、小さな火の玉をわたしに投げつけた。
ビシイッ
声を上げる間もなく、火の玉までもが弾かれた。
「なっ……」
魔王が驚くけれど、わたしもわけがわからない。
ラスボスの攻撃魔法が、なぜか当たらなかったのだ。
――まさか大神官が、わたしの知らないうちに防御魔法をかけてくれた?
けれど当の大神官は、口をポカンと開けている。
「違う? じゃあ、いったい誰が……」
「あれえ? すごいね」
「ふむ。あの女人に、助けは要らぬということか」
大天使ウリエルと龍神の龍ケ崎一連が、感心したように頷いている。
だけどわたしは、やっぱりわけがわからない。
「……なんで?」
「おのれ、魔法耐性が高いのか。ならば……」
低く唸った魔王が、先ほどとは桁違いの炎の渦を、己の頭上に出現させた。
――マズい。あの技は【クリティカルブレイズシュトローム】!
名前だけでなく、威力《いりょく》もさっきと段違い。辺り一帯を焼き尽くす技だ。
「お、おお、落ち着いてください」
「ハルカ、そなたが落ち着くのじゃ。早く宥めよ!」
大神官が叫ぶ。
そんなことを言われても、宥め方などわからない。
なんとかしないと、魔王の奥義でここにいる全てが息絶えてしまう。
「【大氷河】」
「【ウルティマホーリーブレス】」
「じゃあ、僕も。【インフェルノエクストリーム】」
――待って、待って、待って!
他のラスボスまで奥義を出すってどういうこと!?
これだと辺り一帯どころか、この世界全体が消し飛んでしまうじゃない。
「やめてーーーーーーーーーーーーーっ」
目を閉じて、力一杯絶叫した。
わたしのせいで、世界が滅ぶ。
やっぱり自分は、役立たず――――――――――――――――――――――――――。
ところが、いつまで経っても何も起こらない。
「……え?」
ラスボスたちも、驚いた顔でその場に立ち尽くす。
「どうしてみんな、途中でやめちゃったの?」
首を傾げるわたしの横で声がする。
「魔力切れ、じゃな」
「うわっと、大神官様!」
気がつくと、大神官がわたしの隣に立っていた。
「わしが思うに、彼らが元いた世界はここより魔素が濃かったのじゃろう。魔力不足に陥ったと見える」
魔素とは、大気中にある魔力の素のこと。
いくら魔力が多くても、取り入れなければ使えない。
「魔力不足? そうか。強大な魔法には、MPが大量に必要ですもんね」
「えむぴい? なんじゃ、それは」
「あっ……と、魔力を数値化したものです」
「そうか。そなたが元いた世界にも、魔法があったのじゃな。だから、彼らを召喚できたというわけか」
「ははは」
親代わりの大神官には、わたしがこことは別の世界から来たことも、ちゃ~んと話してある。
ただし、ゲームの話は内緒なので、笑ってごまかすことにした。
今は、ラスボスたちをおとなしくさせる方が先決だ。
――あれ? でも……。
大変なことに気づいてしまった。
「大神官様。魔素が薄くて魔力切れに陥るなら、強大な魔法を扱う彼らを召喚した意味がありません!」
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します
梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。
ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。
だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。
第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。
第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
元救急医クラリスの異世界診療録 ―今度こそ、自分本位に生き抜きます―
やまだ
ファンタジー
朝、昼、夜を超えてまた朝と昼を働いたあの日、救急医高梨は死んでしまった。比喩ではなく、死んだのだ。
次に目覚めたのは、魔法が存在する異世界・パストリア王国。
クラリスという少女として、救急医は“二度目の人生”を始めることになった。
この世界では、一人ひとりに魔法がひとつだけ授けられる。
クラリスが与えられたのは、《消去》の力――なんだそれ。
「今度こそ、過労死しない!」
そう決意したのに、見過ごせない。困っている人がいると、放っておけない。
街の診療所から始まった小さな行動は、やがて王城へ届き、王族までも巻き込む騒動に。
そして、ちょっと推してる王子にまで、なぜか気に入られてしまい……?
命を救う覚悟と、前世からの後悔を胸に――
クラリス、二度目の人生は“自分のために”生き抜きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる