わたしのパーティーが全員ラスボスなんだけど!?

きゃる

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第一章 ラスボスは難しい

大天使の悲しい過去

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 二人の愛と切ない別れ。
 回想シーンが最高すぎて、わたしは主人公の勇者など、どうでも良くなった。

 龍神がラスボスに変貌へんぼうしたのは、愛しい娘を想うゆえ。
 それほどまでに龍ケ崎一連は、人間の娘を深く愛していたのだ。

「尊い、尊すぎる!」
「いきなりなんだ?」

 ――しまった。考えごとが口から出ていたらしい。

「なんでもありません。ところで龍神様、彼女はお元気ですか?」

 わたしが二人の仲を裂いたなら、エライこっちゃ。
 土下座くらいじゃ、とてもじゃないけど足りない。

「かのじょ?」
「お好きな方が、いらっしゃるんですよね? それなのに、呼びかけに応じてくださり……」
「いや。いた者などおらぬ」

 龍神はそう言って、顔をそむけた。

 そっか。
 二人の出会いはまだみたい。

 胸をで下ろしていたところへ、大天使のウリエルが割って入る。

「二人とも、何をのんびり話しているの? タランチュラは、まだたくさんいるよ」
「キシャアァァァァ」
「グギェェェェ」

 巨大な蜘蛛が、ガサガサ動く。
 とにもかくにも、気持ちが悪い。

「うげ。一匹じゃなかったの?」

 いっぱい出てくるなんて、考えただけでもゾッとする。
 
「タランチュラ? あれは土蜘蛛つちぐもと言う」
「いいや、タランチュラだよ」
「どう見ても土蜘蛛だ」
「タランチュラって言うんだよ」

 一連とウリエルは、互いに譲らない。

 はっきり言って、どうでもいい。
 同じタイプの魔物でも、ゲームによって呼び名が違うから。

 蜘蛛は蜘蛛だし苦手だし。
 早くなんとかしてほしい。
 
「グギャアアァァッ」
「そこだね、【ホーリーブレス】」

 ウリエルが片手を突き出すと、白い光が現れた。
 光は魔物を包み込み、一瞬にしてちりと化す。

「すごい! 素晴らしい技です」
「どうも。君の魂は綺麗だから、特別だよ」 

 興奮したわたしは、ウリエルの腕を掴む。
 彼はウインクすると、次の魔物に光を放つ。


 さっきまでやる気がなかったのに、結局手伝うのは元の性格かな?
 大天使も龍神と同じく、ラスボスになる前は平和を愛し、命あるものをいつくしんでいたから。



 ――大天使のウリエルは、【ダーク・ユグドラシル】というRPGのラスボスだ。赤みがかった金髪に琥珀色こはくいろの瞳、純白の翼を持っていた。中性的な美貌と柔らかな物腰が特徴の彼は、金糸の入った赤いローブがお気に入り。

 若き日のウリエルは、枯れていく世界樹の前で、お付きの天使とともに心を痛めていた。

『やはり、私がなんとかしなければ』
『ですが、ウリエル様のたぐいまれな演奏をもってしても、どうにもならないかと』
『やってみないとわからないだろう? 次は根源で、竪琴たてごとを演奏する』
『朽ちていく世界樹の根っこ、ですか? 危険です、やめてください!』
『もう決めたんだ。ほろびを待つのは美しくないからね。誰かがやらねばならないことだ』

 けれど彼の決意は、天界の怒りを買ってしまう。
 あるがままを受け入れる、というのが神の意志だから。

「天にあだなす者」との汚名を着せられたウリエル。
 それでも多くの命を救いたいと、巨木の奥にもぐっていく。

『私の音色が聞こえるかい? 世界樹よ、聞こえたのならどうか応えてほしい』

 ウリエルが、世界樹の底で竪琴を弾く。
 樹が徐々に再生していく場面は、オープニングでも流れるシーン。
 当然、涙なしには語れない。

 でもそのせいで、彼は世界樹の底にまった負の感情を、一身に受けてしまった。

『いいよ、みんなが笑顔で暮らせるなら。私の身が犠牲になって……も……』

 真っ暗な空間。
 深い深い闇の底。
 長年積もったおりが、ウリエルの心と身体をむしばんでいく。

 やがて大天使は闇にち、悪の道へと突き進む。

『世界平和など、気にしてどうなる? 誰だって己が可愛く、天界さえも私を見捨てた。簡単だ。世界樹ごと消せば、全ては終わる』

 世の平和と安寧あんねいを願った大天使。
 彼は、悲しき堕天使へ。
 純白の翼も黒く変質していた。

「ウリエル様は元来優しい性格だけど、悪に堕ちて以降は、女性にのみ親切になるんだよね~」

 前半は善、後半は悪という二つの顔を持つウリエル。
 その最終形態は、悪魔と見紛みまがうほどの黒い姿に黒い翼。
 顔立ちが整っているせいか、禍々まがまがしくとも美しく、圧巻の迫力だった。



「ほう……って、また出た~~!」 
「ギギヤアァァァー」

 堕天使のビジュアルを思い浮かべた後の、蜘蛛のどアップ。
 ギャップがありすぎて、腰が抜けそう。

「やだ、こっちに来ないで!」
「邪魔だよ、下がって」
「はい」

 素直に引き下がる。
 救出した女の子はとっくに逃げたのか、姿が見えない。

 龍神の一連は奥に移動したらしく、ここにいるのはわたしとウリエル。
 魔王と人の悪意は、大丈夫かな?
 
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