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6 勝者と敗者
45 コボルト 3
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「いやいや、そういう問題じゃないでしょ!」
あまりにお粗末な作戦に大声を出してしまった。
確かに、中にいるコボルト達は銃声の音が聞こえたとしてもどの方角から聞こえたかまではわからないだろう。
だからこそ、アニーの言っていることが正しいということは理解できる。しかしながら、よく考え直してもらいたい。巣の中にいるコボルトが5匹かそこらなら、確かにその作戦は完璧に近い。一気に半数近く削ることが出来るのだから上出来だろう。
だがしかし、最初に外にいたのは2、30匹……つまり、今巣の中にいるのは最低でも15~25匹というわけだ。そいつらに銃声を聞かれるということは、警戒を与えるということだ。――巣の中には入りにくくなるだろう。
「自分で言った言葉を覚えてないの?」
僕の制止を無視して、アニーは再び銃を構える。
一体僕が何を言ったというのだろう。別に何も言った覚えはない。
「何の話です!?」
「大きな声を出さないで……やつらに気づかれる」
いやいや、君が今やろうとしていることの方が、よっぽどやつらに気がつかれるだろう。なんて心の奥底でツッコミを入れながら彼女の説明を待つ。
「ええっと、確かケンはコボルトじゃいくら討伐しても強くなれないって言ったよね?」
確かに僕はそう言った。
だけどそれは、あくまで常識の範囲内での話だ。何十匹も相手にする場合は例外だ。
「確かに言いました……」
いや言い訳はよそう。自分の言葉には責任を持たなければいけない。言ってしまった言葉は戻すことが出来ないし、それは今まで何度も経験したことだ。責任を取るのにもなれたものだ。――命がかかっていないことであれば、の話だが。
「そう、あなたの言うとおりコボルトは取るに足らない相手……だけどずるくて、時には獣人の命を奪うことだってある。単なるいたずらでも、獣人の命だって奪えるんだよ」
「ええ、確かに何年かに一度は被害者が出ているとか」
悲しい話だ。
だがコボルト……魔物にとっても生きるために獣人を殺さなければならないことがある。
今回のことがいい例だろう。僕たちは彼らの命を奪いに来たんだ。彼らにだって僕達獣人を殺す権利はある。でもだからこそ、彼らが本気になる前にすべて駆除しなければならないだろう。
「だけどそれと同時に、最弱の魔物。油断は禁物だけど、油断しているコボルトに勝っても意味はない……それこそ本当に強くなれない」
構えた銃から手を離さずに、時折こちらをちらちらと見ながら、彼女は引き金に指をかけた。
『油断しているコボルトに勝っても意味はない』、か……言い得て妙だ。
「そうですね……苦境を味わったことがない者には本当の意味での強さは手に入らないですよね」
「うん。じゃあやるね」
だったら、今まで何をやっていたのだというツッコミはさておいて、僕は心の準備を始める。
指のかけられたトリガーが少しずつだが、確実に縮んでいる。あとコンマ数秒もしないうちに、戦いは始まるだろう。作戦も、経験も、実力もないまま、僕は本当の意味での戦いに身を置くことになる。
しかし、そもそも大した武器すら持たない僕にとっては、作戦は意味をなさない。僕に出来ることはただ一つ、魔力を操って戦うことだけなのだから。
あまりにお粗末な作戦に大声を出してしまった。
確かに、中にいるコボルト達は銃声の音が聞こえたとしてもどの方角から聞こえたかまではわからないだろう。
だからこそ、アニーの言っていることが正しいということは理解できる。しかしながら、よく考え直してもらいたい。巣の中にいるコボルトが5匹かそこらなら、確かにその作戦は完璧に近い。一気に半数近く削ることが出来るのだから上出来だろう。
だがしかし、最初に外にいたのは2、30匹……つまり、今巣の中にいるのは最低でも15~25匹というわけだ。そいつらに銃声を聞かれるということは、警戒を与えるということだ。――巣の中には入りにくくなるだろう。
「自分で言った言葉を覚えてないの?」
僕の制止を無視して、アニーは再び銃を構える。
一体僕が何を言ったというのだろう。別に何も言った覚えはない。
「何の話です!?」
「大きな声を出さないで……やつらに気づかれる」
いやいや、君が今やろうとしていることの方が、よっぽどやつらに気がつかれるだろう。なんて心の奥底でツッコミを入れながら彼女の説明を待つ。
「ええっと、確かケンはコボルトじゃいくら討伐しても強くなれないって言ったよね?」
確かに僕はそう言った。
だけどそれは、あくまで常識の範囲内での話だ。何十匹も相手にする場合は例外だ。
「確かに言いました……」
いや言い訳はよそう。自分の言葉には責任を持たなければいけない。言ってしまった言葉は戻すことが出来ないし、それは今まで何度も経験したことだ。責任を取るのにもなれたものだ。――命がかかっていないことであれば、の話だが。
「そう、あなたの言うとおりコボルトは取るに足らない相手……だけどずるくて、時には獣人の命を奪うことだってある。単なるいたずらでも、獣人の命だって奪えるんだよ」
「ええ、確かに何年かに一度は被害者が出ているとか」
悲しい話だ。
だがコボルト……魔物にとっても生きるために獣人を殺さなければならないことがある。
今回のことがいい例だろう。僕たちは彼らの命を奪いに来たんだ。彼らにだって僕達獣人を殺す権利はある。でもだからこそ、彼らが本気になる前にすべて駆除しなければならないだろう。
「だけどそれと同時に、最弱の魔物。油断は禁物だけど、油断しているコボルトに勝っても意味はない……それこそ本当に強くなれない」
構えた銃から手を離さずに、時折こちらをちらちらと見ながら、彼女は引き金に指をかけた。
『油断しているコボルトに勝っても意味はない』、か……言い得て妙だ。
「そうですね……苦境を味わったことがない者には本当の意味での強さは手に入らないですよね」
「うん。じゃあやるね」
だったら、今まで何をやっていたのだというツッコミはさておいて、僕は心の準備を始める。
指のかけられたトリガーが少しずつだが、確実に縮んでいる。あとコンマ数秒もしないうちに、戦いは始まるだろう。作戦も、経験も、実力もないまま、僕は本当の意味での戦いに身を置くことになる。
しかし、そもそも大した武器すら持たない僕にとっては、作戦は意味をなさない。僕に出来ることはただ一つ、魔力を操って戦うことだけなのだから。
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