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6 勝者と敗者
44 コボルト 2
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僕とアニーが受けた依頼は、『西の森に発生したコボルトの巣の調査と討伐』だ。
受付のお姉さん曰く、「魔物の巣が生まれる場所は高確率で空気中の魔力量が多い」らしい。
つまりコボルトを討伐するついでに、魔力水の調査も行えるという一石二鳥の依頼ということなのだろう。
そして僕たちは目的地へとやって来た。
「コボルト討伐は簡単な依頼……そうですよね?」
僕は目の前に広がっている光景に開いた口がふさがらない。
「うん。コボルトは一対一なら成人ならほとんどの人が倒せるからね」
アニーはなんでそんな当然なことを聞くのかといった顔だ。
だがこの状況下において、コボルトの情報を再確認しておくのは当たり前だろう。油断は禁物――だとかそんなことを言いたいわけじゃない。
「いや、ちょっと待ってください。コボルトは少数で行動する魔物ですよね?」
「うん? もしかしてコボルトの巣は初めて?」
会話がかみ合っていない事に気がついたようで、アニーはまさかと尋ねる。
僕が勝手に驚いているだけで、コボルトの巣というのはこういうものなのかもしれない。そんな風に納得できればどれほどよかっただろう。いや納得できまい。
「初めてです。今は関係ない話ではありませんか? 僕も一応は資料を読んで依頼を受けているんです。資料によれば、コボルトの巣は10体程度のコボルトで構成されたものだと書かれていたはずです」
むしろそうでなければ、この依頼が力にならないなんて思うわけもない。
目に映るだけでも20……いや30はいる。巣の中にはもっと多くのコボルトがいることだろう。少なくとも50はいると考えた方がいい。
「なるほど……それでお姉ちゃんにあんな啖呵を……」
アニーは呆れた顔をする。
「もしかして、資料が?」
「間違ってはないと思うけど、資料は幾つぐらい読んだの?」
「一つです。魔物学入門という本を読みました」
「魔物学入門……」
彼女の顔は呆れ顔から、可哀想なものを見るような顔へと変化した。
「え、ダメなんですか?」
「リグミダス・ロットワイラー様の名言に、こういった言葉がある。『百聞は一見にしかず』と、意味は100回聞くよりも、1回実際に見た方がいいってこと。もし仮に、資料だけで勉強した気になりたいのなら、100は読まないと……すべての本に正しいことがすべて書かれているというわけじゃないんだから」
これだから駆け出し冒険者は……と彼女は大きくため息を吐いた。
確かにそれは僕のミスだ。会社員時代にもあったが、全ての資料が正しいとは限らない。人間というのはミスをする生き物なのだ。だからこそ、資料というものは何度も校閲と推敲を繰り返すのだが、それでもミスをすべて排除するのは困難だ。
特に入門書というやつは、基本的なこと以外は書いていないことが多い。すべてを書いてしまえば、膨大なページ数になってしまうだろう。それを避けるために、基本的なことしか書かないのだ。
「僕はまだ冒険者として真剣になりきれていなかったみたいですね」
こんな初歩的なミスをしてしまうとは、自分が情けない。
「大丈夫。そのために私がいるんだから」
「頼もしいです」
仲間でいるうちは。
助言をくれることには感謝しているが、アニーは他人だ。まるで完全に信用しきるというのは無理だ。少なくとも今の僕には無理だ。
僕は心臓のあたりを軽くなでる。
少しだけ心臓が締め付けられるような感覚があったが、どうやら気のせいだったらしい。今では何事もなかったかのように全身に酸素を送り続けている。
「大丈夫?」
「問題ありません。それより――」
コボルト達に動きがありそうだ。数体だけ外に残して、巣の中へと帰っていく。
「チャンスだね」
この機を待っていましたと言わんばかりに、アニーは肩に背負っていた銃を構える。コボルト達との距離はそれほど遠くない。距離にして20メートルと言ったところか。
「ちょっと待ってください。音で気がつかれませんか?」
僕は彼女を制止する。
本当のことを言えば彼女の銃弾が当たるかどうかの方が心配だったが、それは口にしないことにした。そもそも、弾が当たらなければ彼女がついてきたこと自体が無意味になるのだから、そこは考慮しない方がいい。
それよりも重要なのは、彼女が弾を撃った途端に大量のコボルト達が音に惹かれて出てくることだ。そうなってしまえば意味がない。
「大丈夫。5匹まとめて殺せば、中のやつらに私たちの場所を知られることはない」
受付のお姉さん曰く、「魔物の巣が生まれる場所は高確率で空気中の魔力量が多い」らしい。
つまりコボルトを討伐するついでに、魔力水の調査も行えるという一石二鳥の依頼ということなのだろう。
そして僕たちは目的地へとやって来た。
「コボルト討伐は簡単な依頼……そうですよね?」
僕は目の前に広がっている光景に開いた口がふさがらない。
「うん。コボルトは一対一なら成人ならほとんどの人が倒せるからね」
アニーはなんでそんな当然なことを聞くのかといった顔だ。
だがこの状況下において、コボルトの情報を再確認しておくのは当たり前だろう。油断は禁物――だとかそんなことを言いたいわけじゃない。
「いや、ちょっと待ってください。コボルトは少数で行動する魔物ですよね?」
「うん? もしかしてコボルトの巣は初めて?」
会話がかみ合っていない事に気がついたようで、アニーはまさかと尋ねる。
僕が勝手に驚いているだけで、コボルトの巣というのはこういうものなのかもしれない。そんな風に納得できればどれほどよかっただろう。いや納得できまい。
「初めてです。今は関係ない話ではありませんか? 僕も一応は資料を読んで依頼を受けているんです。資料によれば、コボルトの巣は10体程度のコボルトで構成されたものだと書かれていたはずです」
むしろそうでなければ、この依頼が力にならないなんて思うわけもない。
目に映るだけでも20……いや30はいる。巣の中にはもっと多くのコボルトがいることだろう。少なくとも50はいると考えた方がいい。
「なるほど……それでお姉ちゃんにあんな啖呵を……」
アニーは呆れた顔をする。
「もしかして、資料が?」
「間違ってはないと思うけど、資料は幾つぐらい読んだの?」
「一つです。魔物学入門という本を読みました」
「魔物学入門……」
彼女の顔は呆れ顔から、可哀想なものを見るような顔へと変化した。
「え、ダメなんですか?」
「リグミダス・ロットワイラー様の名言に、こういった言葉がある。『百聞は一見にしかず』と、意味は100回聞くよりも、1回実際に見た方がいいってこと。もし仮に、資料だけで勉強した気になりたいのなら、100は読まないと……すべての本に正しいことがすべて書かれているというわけじゃないんだから」
これだから駆け出し冒険者は……と彼女は大きくため息を吐いた。
確かにそれは僕のミスだ。会社員時代にもあったが、全ての資料が正しいとは限らない。人間というのはミスをする生き物なのだ。だからこそ、資料というものは何度も校閲と推敲を繰り返すのだが、それでもミスをすべて排除するのは困難だ。
特に入門書というやつは、基本的なこと以外は書いていないことが多い。すべてを書いてしまえば、膨大なページ数になってしまうだろう。それを避けるために、基本的なことしか書かないのだ。
「僕はまだ冒険者として真剣になりきれていなかったみたいですね」
こんな初歩的なミスをしてしまうとは、自分が情けない。
「大丈夫。そのために私がいるんだから」
「頼もしいです」
仲間でいるうちは。
助言をくれることには感謝しているが、アニーは他人だ。まるで完全に信用しきるというのは無理だ。少なくとも今の僕には無理だ。
僕は心臓のあたりを軽くなでる。
少しだけ心臓が締め付けられるような感覚があったが、どうやら気のせいだったらしい。今では何事もなかったかのように全身に酸素を送り続けている。
「大丈夫?」
「問題ありません。それより――」
コボルト達に動きがありそうだ。数体だけ外に残して、巣の中へと帰っていく。
「チャンスだね」
この機を待っていましたと言わんばかりに、アニーは肩に背負っていた銃を構える。コボルト達との距離はそれほど遠くない。距離にして20メートルと言ったところか。
「ちょっと待ってください。音で気がつかれませんか?」
僕は彼女を制止する。
本当のことを言えば彼女の銃弾が当たるかどうかの方が心配だったが、それは口にしないことにした。そもそも、弾が当たらなければ彼女がついてきたこと自体が無意味になるのだから、そこは考慮しない方がいい。
それよりも重要なのは、彼女が弾を撃った途端に大量のコボルト達が音に惹かれて出てくることだ。そうなってしまえば意味がない。
「大丈夫。5匹まとめて殺せば、中のやつらに私たちの場所を知られることはない」
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