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6 勝者と敗者
43 コボルト 1
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「――それで最初の依頼がこれですか……」
僕はお姉さんから渡された一枚の紙をまじまじと見つめる。
『コボルト』の討伐依頼と書かれた紙だ。コボルトの討伐自体は珍しい物でもなければ、別にやりたくない任務というわけでもない。報酬金はかなり安いが、討伐任務の中では比較的簡単なものだ。
コボルトというのはかなり弱い。だがしかし、人間に対していたずらをすることでも有名な魔物だ。退治しようと思えば誰にでも退治できるのだが、退治してもどこからともなく現れるので骨が折れる。そのため誰も退治をしなくなり、そのつけが役所に回ってきている。役所の依頼にあるほとんどがコボルト退治と言っても過言ではないほどにコボルト退治の依頼であふれかえっているため、コボルト退治に対する報酬金はかなり少ない。もし仮に、コボルト退治で生計を立てていこうと考えている冒険者がいるならば中興しなければならないだろう。――それは不可能だと。
つまるところ、コボルトの討伐なんてものは駆け出し冒険者が仕方なくやる雑用みたいなものだ。まあ僕も駆け出し冒険者と言えなくもないのだが、お姉さんは僕に『一人前にする』と言ったはずだ。
「コボルトをいくら討伐しても強くなれない?」
僕の表情から思考を察したのか、お姉さんは顔を綻ばせながら言う。
それを聞いて、思わず本音が口に出た。
「はい……」
それで強くなれるのなら、世界中の冒険者は全員が一流の冒険者になれたことだろう。いいや、むしろ誰しもが強くなれるから、冒険者という職業そのものが成り立たなかったかもしれない。誰でも強くなれるのだから……
「そんなことはないです」
お姉さんはきっぱりと言う。
「どうしてそう言い切れるんですか?」
その言葉の根拠はどこにある。
昔の仕事でもそうだった。『いつまでも簡単な仕事ばかりしていては成長できない』、僕が部下に言った言葉であり、僕が先輩から言われて言葉でもあった。簡単な仕事というのはいつの時代も新人の仕事だ。上の者は難しい仕事へと流されていく、それが世界というものだ。
それはこの役所が閑散としていることを見ても明らかだ。
誰だって簡単な仕事を低賃金でやりたくはない。この状況だって、冒険者たちのそんな気持ちが生み出した状況だろう。
だがしかし、お姉さんは僕の考えをすべて否定する一言を口にした。
「私がそうやって強くなったからですよ」
結果というやつは、全てに勝る説得力を持つ。これ以上、どんな否定の言葉をぶつけたとしても意味がないだろう。僕に残された選択は、黙って話を聞くことだけだ。
「もし仮に、頑張った人は皆強くなれるのならみんなと同じように努力するべきでしょう。ですが現実というのは厳しいです。頑張っても努力が結ばれるとは限らない……ただ漫然と頑張ったところで、誰しもが強くなれるわけじゃない。いいえ、強くなれない人の方が多い」
お姉さんの話は続く。
「当たり前です。人には向き不向きというものがあるのですから……イザベラ様にとっての剣捌き、アニーにとっての狙撃、私にとっての……」
誰にとっても長所というものはあるだろう。それはお姉さんの言う通りだ。だがしかし、僕の長所というのはいったいなんだ? この世界に来て自分自身の能力で何をがんばってきた。いや、何も頑張ってこなかったからこそ、今つけが回ってきたのだろう。
「僕にとっての長所……そんなものありますかね?」
「何をおっしゃいます。あなたにはとっておきの長所があるじゃないですか」
とっておきの長所。それはおそらく、女神から与えられた恩恵のことを言っているのだろう。『すべての武器を操ることが出来る』、なんていう力だが、果たしてそれの力はこれ以上伸びるものなのか……
「この力は後天的に与えられたもの――いわば借り物の力ですよ?」
「何をおっしゃいますやら……才能も、この体でさえも神様からの借りものですよ。借り物を使う力だって立派な才能じゃありませんか。とにかく、私にすべてを任せていただければ必ず最強の冒険者にしてあげますよ」
有無を言わさぬと言った感じでお姉さんは僕を威圧する。
確かに一度は彼女の方針に従うと言ったのだ。あまりごちゃごちゃ言うのも失礼というものだ。ここは彼女の提案に乗るとしよう。
それにしても不安だ。本当にコボルトの討伐で強くなれるのだろうか。
「大丈夫。私もコボルトで鍛えたから」
僕の不安を払しょくするためだろうか、アニーがそう言った。
「アニーの狙撃を?」
「うん」
なるほど、基礎を鍛えるには丁度いいということなのか……まあ、アニーの狙撃の腕がいかほどのものかをきちんと見たことはないのだが、パーティーメンバーを信じてみるとしよう。
僕はお姉さんから渡された一枚の紙をまじまじと見つめる。
『コボルト』の討伐依頼と書かれた紙だ。コボルトの討伐自体は珍しい物でもなければ、別にやりたくない任務というわけでもない。報酬金はかなり安いが、討伐任務の中では比較的簡単なものだ。
コボルトというのはかなり弱い。だがしかし、人間に対していたずらをすることでも有名な魔物だ。退治しようと思えば誰にでも退治できるのだが、退治してもどこからともなく現れるので骨が折れる。そのため誰も退治をしなくなり、そのつけが役所に回ってきている。役所の依頼にあるほとんどがコボルト退治と言っても過言ではないほどにコボルト退治の依頼であふれかえっているため、コボルト退治に対する報酬金はかなり少ない。もし仮に、コボルト退治で生計を立てていこうと考えている冒険者がいるならば中興しなければならないだろう。――それは不可能だと。
つまるところ、コボルトの討伐なんてものは駆け出し冒険者が仕方なくやる雑用みたいなものだ。まあ僕も駆け出し冒険者と言えなくもないのだが、お姉さんは僕に『一人前にする』と言ったはずだ。
「コボルトをいくら討伐しても強くなれない?」
僕の表情から思考を察したのか、お姉さんは顔を綻ばせながら言う。
それを聞いて、思わず本音が口に出た。
「はい……」
それで強くなれるのなら、世界中の冒険者は全員が一流の冒険者になれたことだろう。いいや、むしろ誰しもが強くなれるから、冒険者という職業そのものが成り立たなかったかもしれない。誰でも強くなれるのだから……
「そんなことはないです」
お姉さんはきっぱりと言う。
「どうしてそう言い切れるんですか?」
その言葉の根拠はどこにある。
昔の仕事でもそうだった。『いつまでも簡単な仕事ばかりしていては成長できない』、僕が部下に言った言葉であり、僕が先輩から言われて言葉でもあった。簡単な仕事というのはいつの時代も新人の仕事だ。上の者は難しい仕事へと流されていく、それが世界というものだ。
それはこの役所が閑散としていることを見ても明らかだ。
誰だって簡単な仕事を低賃金でやりたくはない。この状況だって、冒険者たちのそんな気持ちが生み出した状況だろう。
だがしかし、お姉さんは僕の考えをすべて否定する一言を口にした。
「私がそうやって強くなったからですよ」
結果というやつは、全てに勝る説得力を持つ。これ以上、どんな否定の言葉をぶつけたとしても意味がないだろう。僕に残された選択は、黙って話を聞くことだけだ。
「もし仮に、頑張った人は皆強くなれるのならみんなと同じように努力するべきでしょう。ですが現実というのは厳しいです。頑張っても努力が結ばれるとは限らない……ただ漫然と頑張ったところで、誰しもが強くなれるわけじゃない。いいえ、強くなれない人の方が多い」
お姉さんの話は続く。
「当たり前です。人には向き不向きというものがあるのですから……イザベラ様にとっての剣捌き、アニーにとっての狙撃、私にとっての……」
誰にとっても長所というものはあるだろう。それはお姉さんの言う通りだ。だがしかし、僕の長所というのはいったいなんだ? この世界に来て自分自身の能力で何をがんばってきた。いや、何も頑張ってこなかったからこそ、今つけが回ってきたのだろう。
「僕にとっての長所……そんなものありますかね?」
「何をおっしゃいます。あなたにはとっておきの長所があるじゃないですか」
とっておきの長所。それはおそらく、女神から与えられた恩恵のことを言っているのだろう。『すべての武器を操ることが出来る』、なんていう力だが、果たしてそれの力はこれ以上伸びるものなのか……
「この力は後天的に与えられたもの――いわば借り物の力ですよ?」
「何をおっしゃいますやら……才能も、この体でさえも神様からの借りものですよ。借り物を使う力だって立派な才能じゃありませんか。とにかく、私にすべてを任せていただければ必ず最強の冒険者にしてあげますよ」
有無を言わさぬと言った感じでお姉さんは僕を威圧する。
確かに一度は彼女の方針に従うと言ったのだ。あまりごちゃごちゃ言うのも失礼というものだ。ここは彼女の提案に乗るとしよう。
それにしても不安だ。本当にコボルトの討伐で強くなれるのだろうか。
「大丈夫。私もコボルトで鍛えたから」
僕の不安を払しょくするためだろうか、アニーがそう言った。
「アニーの狙撃を?」
「うん」
なるほど、基礎を鍛えるには丁度いいということなのか……まあ、アニーの狙撃の腕がいかほどのものかをきちんと見たことはないのだが、パーティーメンバーを信じてみるとしよう。
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