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8 新たなる武器
80 言葉
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魔王が去って行った余韻に浸りながらも、僕の中にはしっかりとした疑問が浮かび上がりつつあった。
そもそも、僕が命がけで何度も森の中を闇雲に探索していたことには理由があってのことだ。今回、森に入ったのだって、その下準備のためと言えなくもない。つまるところの、本日僕が森の中に入らなければならなくなった原因は、今まさに僕のことを助けてくれた一人目の勇者様にある。
「どうして、アルタさんはここに?」
僕はアルタが重傷だと聞いて、というよりも、それゆえに彼女の父であるリグダミスにより半ば無理やりだが依頼を受けたはずだった。
いや、直接リグダミスがそういったわけではないが、街の噂から考えるにそうであると僕が思い込んだだけではあるわけだ。急ぎで万能薬が欲しいと言われればそう確信するのも無理はないはずだ。それがどうして……
そう思って尋ねた僕に対して、アルタは最初にも言ったように「勇者だから」とだけ答えた。
僕は理解できずイチゴの方を見る。
それに気がついたのかイチゴは大きくため息をついて、何やら言いたげな顔をしたが結局何も口にしない。ただ、面倒くさそうな顔をして顔をそらすだけだ。
仕方がないと思い、再びアルタに尋ねる。
「いえ、入院していたんじゃ?」
根も葉もないうわさかもしれないが、一応真偽は確かめておくべきだろう。
そうしないと、状況はつかめないままだ。
「入院……?」
僕の質問に対して、彼女は首をかしげる。まるで意味が分からないといった風だ。
「大怪我を負って入院したと」
「誰がそんなことを? ……もしかして、お父さん?」
なんて言う彼女の顔はどこか怒りに満ちているような気がした。
「いや、リグダミスさんは言ってなかったと思いますが……」
たぶん直接は言われなかった……はずだ。よいやくよく思い出してみれば言われたような気もするが、不確かなことで余計なことを口走るわけにもいかない様子だ。
「口止めされてるとかじゃないよね?」
どうやらまだ彼女は父親を疑っている様子だ。どうやら僕と同じように親のことでかなり苦労してきたらしい。第一線で戦う冒険者であっても、順風満帆というわけにはいかないのだろう。なんだか親近感がわいてきた。
それでも、言われたか言われていないかもわかないことをべらべらと話すつもりはない。二度も命を救われたとしても、それだけは譲れない。
「街の人たちが噂していただけですよ。リグダミスさんには魔力水の採集を依頼されただけです」
「ふーん……まあいいわ」
疑いは完全には晴れていないらしい。それどころか、アルタは何やら意味ありげな笑みを浮かべて、何度か「なるほどね」と小さな声でつぶやいた。
それをどうのこうの言う権利は僕にはない。僕は本当のことだけを口にしたつもりだ。それをどうとらえられようともどうでもいい。そんなことは重要ではない。もっと重要なことが別にある。
「そ、そんなことより。ありがとうございました!」
僕は再び彼女に……アルタ・ロットワイラーに命を救われた。最終的にはイチゴが自称魔王を追っ払ったとはいえ、アルタが来なければ魔王は容赦なく僕を殺し、イチゴと熾烈な戦いを繰り広げ、結果として街は破壊され、メリーは殺されていたかもしれない。
つまり、アルタは僕の命の恩人であると同時に、メリーの命の恩人でもあるという事になる。イチゴにもかなり助けられているが、前世も含めて、アルタ・ロットワイラーという人物ほど僕の大切なものを救ってくれた人はいないだろう。
単なる人間はいつも僕を……救ってくれたのは犬だけだ。それはこの世界に来てからも同じ。
やはり、僕を救ってくれるのは犬だけだ。
「どういたしまして……って言っても結局、全てを解決したのはイザベラだけどね」
「私は別に何もしていない。アルタが魔王に力を示したからこういう状況を作りだせただけだ。野に生るイチゴに出来ることは、その存在を知らしめることぐらいだ」
イチゴは小難しいことを口走ると、僕たちから顔をそむけた。
「いえ、イチゴさんもアルタさんも……どちらともがいなければ、たぶん僕は死んでいたでしょう。お二人ともありがとうございます」
僕は深々と頭を下げる。
イチゴは軽く鼻を鳴らし、そのままこちらを振り返ることもなかった。アルタは照れながらも、僕に頭を上げるように促した。
「勇者だから当然よ。それに、あなたは私のポーションを作る依頼を受けたからこんな目にあったんでしょ?」
「それは……」
どうしてアルタがそれを知っているのだろう。少しだけ不思議に思ったが、それ以上に彼女の瞳が僕の心の内を見透かしているようで言葉に詰まった。
「それに、あなたの行動のおかげで街は救われた。あなたが魔王もどきを惹きつけてくれたから、私もイザベラも準備することが出来たのよ……それでいいじゃない。みんな、自分の出来ることをする。助け合うことが獣人の社会では当たり前のことなんだから」
その言葉で僕は前世で先生が話していた言葉を思い出した。『人という字は人と人が支えあっている』なんて、くだらない言葉だ。
そもそも、僕が命がけで何度も森の中を闇雲に探索していたことには理由があってのことだ。今回、森に入ったのだって、その下準備のためと言えなくもない。つまるところの、本日僕が森の中に入らなければならなくなった原因は、今まさに僕のことを助けてくれた一人目の勇者様にある。
「どうして、アルタさんはここに?」
僕はアルタが重傷だと聞いて、というよりも、それゆえに彼女の父であるリグダミスにより半ば無理やりだが依頼を受けたはずだった。
いや、直接リグダミスがそういったわけではないが、街の噂から考えるにそうであると僕が思い込んだだけではあるわけだ。急ぎで万能薬が欲しいと言われればそう確信するのも無理はないはずだ。それがどうして……
そう思って尋ねた僕に対して、アルタは最初にも言ったように「勇者だから」とだけ答えた。
僕は理解できずイチゴの方を見る。
それに気がついたのかイチゴは大きくため息をついて、何やら言いたげな顔をしたが結局何も口にしない。ただ、面倒くさそうな顔をして顔をそらすだけだ。
仕方がないと思い、再びアルタに尋ねる。
「いえ、入院していたんじゃ?」
根も葉もないうわさかもしれないが、一応真偽は確かめておくべきだろう。
そうしないと、状況はつかめないままだ。
「入院……?」
僕の質問に対して、彼女は首をかしげる。まるで意味が分からないといった風だ。
「大怪我を負って入院したと」
「誰がそんなことを? ……もしかして、お父さん?」
なんて言う彼女の顔はどこか怒りに満ちているような気がした。
「いや、リグダミスさんは言ってなかったと思いますが……」
たぶん直接は言われなかった……はずだ。よいやくよく思い出してみれば言われたような気もするが、不確かなことで余計なことを口走るわけにもいかない様子だ。
「口止めされてるとかじゃないよね?」
どうやらまだ彼女は父親を疑っている様子だ。どうやら僕と同じように親のことでかなり苦労してきたらしい。第一線で戦う冒険者であっても、順風満帆というわけにはいかないのだろう。なんだか親近感がわいてきた。
それでも、言われたか言われていないかもわかないことをべらべらと話すつもりはない。二度も命を救われたとしても、それだけは譲れない。
「街の人たちが噂していただけですよ。リグダミスさんには魔力水の採集を依頼されただけです」
「ふーん……まあいいわ」
疑いは完全には晴れていないらしい。それどころか、アルタは何やら意味ありげな笑みを浮かべて、何度か「なるほどね」と小さな声でつぶやいた。
それをどうのこうの言う権利は僕にはない。僕は本当のことだけを口にしたつもりだ。それをどうとらえられようともどうでもいい。そんなことは重要ではない。もっと重要なことが別にある。
「そ、そんなことより。ありがとうございました!」
僕は再び彼女に……アルタ・ロットワイラーに命を救われた。最終的にはイチゴが自称魔王を追っ払ったとはいえ、アルタが来なければ魔王は容赦なく僕を殺し、イチゴと熾烈な戦いを繰り広げ、結果として街は破壊され、メリーは殺されていたかもしれない。
つまり、アルタは僕の命の恩人であると同時に、メリーの命の恩人でもあるという事になる。イチゴにもかなり助けられているが、前世も含めて、アルタ・ロットワイラーという人物ほど僕の大切なものを救ってくれた人はいないだろう。
単なる人間はいつも僕を……救ってくれたのは犬だけだ。それはこの世界に来てからも同じ。
やはり、僕を救ってくれるのは犬だけだ。
「どういたしまして……って言っても結局、全てを解決したのはイザベラだけどね」
「私は別に何もしていない。アルタが魔王に力を示したからこういう状況を作りだせただけだ。野に生るイチゴに出来ることは、その存在を知らしめることぐらいだ」
イチゴは小難しいことを口走ると、僕たちから顔をそむけた。
「いえ、イチゴさんもアルタさんも……どちらともがいなければ、たぶん僕は死んでいたでしょう。お二人ともありがとうございます」
僕は深々と頭を下げる。
イチゴは軽く鼻を鳴らし、そのままこちらを振り返ることもなかった。アルタは照れながらも、僕に頭を上げるように促した。
「勇者だから当然よ。それに、あなたは私のポーションを作る依頼を受けたからこんな目にあったんでしょ?」
「それは……」
どうしてアルタがそれを知っているのだろう。少しだけ不思議に思ったが、それ以上に彼女の瞳が僕の心の内を見透かしているようで言葉に詰まった。
「それに、あなたの行動のおかげで街は救われた。あなたが魔王もどきを惹きつけてくれたから、私もイザベラも準備することが出来たのよ……それでいいじゃない。みんな、自分の出来ることをする。助け合うことが獣人の社会では当たり前のことなんだから」
その言葉で僕は前世で先生が話していた言葉を思い出した。『人という字は人と人が支えあっている』なんて、くだらない言葉だ。
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