転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。

真白 悟

文字の大きさ
99 / 170
10 伝説の魔法

96 伝説の魔法使い 1

しおりを挟む
「どういうことです!? 勇者に選ばれたら、否が応でも勇者になるしかないって言うんですか!?」
 僕は思わず大声を出す。

「そうはさせない」

 料理を作っているイチゴが低い声でつぶやく。
「つまるところ……そういうことだ。私は娘を解放するために、早いところ次の勇者を擁立しなきゃならんというのに、その次期勇者がイザベラの庇護を受けた人物ときた。正直呪われているのかとすら疑っている。神というものが存在するなら私の方が呪いたいぐらいだ」
 そう言って大きくため息を吐くリグダミスは、指で何度か机を叩いた。

 これでもう一つ合点がいった。
 だがそれと同時に最大の疑問が頭をよぎる。

「つまり勇者に選ばれたら、勇者になるしかないというのは、教会によって選ばれた場合の話という事ですか……だけどそれならどうして、メイを教会から匿ってくれるのですか?」
「どうして……言葉の通りだ。イザベラがそれを望んでいないなら私はそうするしかないという事さ。残念なことにな」

 全く持って話が見えてこない。
 話せば話すほど疑問が湧いてくるようだ。

「つまらない話はそこまでにしな……注文の品だ。庶民のメシが貴族様の口に合うのかはわからないがな」
 イチゴが話を遮り、リグダミスの前に謎の料理を差し出した。
 それは故郷でも前世でも見たことがない物だ。というより、イチゴが作った料理の中でも見たことのない代物だ。
 何種類かの野菜がぶつ切りにされていて、黒ずんだスープのようなものに浮かんでいる。匂いはきつめの香辛料の匂いが強く、何とも言えないような刺激臭になっている。お世辞にもおいしそうとは言えない。
 いくらリグダミスのことが嫌いだとはいえ、料理を粗末にするような嫌がらせはどうかと思う。ほんの少しだが彼女に失望した。

 そう思っていた矢先、リグダミスは意外にも嬉しそうな表情を見せた。
「懐かしい……昔はよく作ってくれたな」
 何かを懐かしむように遠い目をして、そして思い出を頭の隅に追いやるように目を強く瞑った。

「そんなゲテモノ……食べるのはお前だけだ」
「料理もしたことない元冒険者が作る料理を一般人が食べられるレベルまでなったのは私のおかげだろう?」
「それとこれとは話は別だ! 私はお前を許す気は一切ない……生涯な」
 先程までジョークを言い合っていた時のような雰囲気は消え失せ、圧倒的な威圧感が二つぶつかるのを感じた。それも肌で感じる程に強く、そうしてじわじわと僕の精神力を削り続ける。
 そんなさなか、リグダミスはプレッシャーを解き静かに笑みを浮かべた。

「嫌われたものだ……私もこんな犬臭い店に居続けるのも飽きてきたし、さっさと食事と用事を済ませてお暇させていただくとしよう」


 ◇ 


「それで用事って言うのは、先ほどの話の続きですか?」

 意味不明な食べ物? をすべて口に運び終わって口をナプキンで拭いているリグミダスに対して、僕は『よくあんなゲテモノ料理を食べられるな……』なんてことを思いながらも一応は話の展開を探してみる。

「それ以外何がある?」

 リグダミスは明らかに人馬鹿にしたような顔をする。
 それ以外ないという事は僕にだって理解できる。だが話の流れというか、空気というやつがある。わかっていることであったとしても口に出して確認しなければ、進まない話もあるだろう……そう僕は思うわけだ。
 だがしかし、それを直接口にしたらどうなるかは想像に難くない。

「そ、そうですよね」
「まあいい。ともかく話を続けるとしよう……見たところ貴様は力を使いこなせていない。放出された魔力を抜き出すのに時間がかかりすぎている……それに魔法使いなら誰でも出来る魔法の操作が出来ていない。そこをどうにかしないと、ポーション作りにかなりの時間をようすることになるだろう。それでも単純なポーション作りよりかは早いだろうが……それでは遅すぎる。私にとってはな」
「それならどうするんですか?」

 特訓が始まる予感がするが、正直な話をするならリグダミスと一緒に修行するなんてごめんこうむる。それが結果としても妹のためになるとしても、ものすごく悩んだうえで仕方なく受けることになるだろうが、出来る限りはそうならないことを願いたい。

「むろん、鍛えるしかない。そしてそれに向いているのは私だ。だが残念なことに、私は人に媚びへつらうような犬と一緒にいることを好まない――だから、もっと向いた奴を遣わせるとしよう。イザベラは私がここに来ることを嫌うようだしな」
「それは……誰なんですか?」
 そんな僕の質問に答えたのは意外な人物だった。

「伝説の魔法使い。ケントニスか」
「イザベラ。まさにその通りだ。彼なら向いているだろう?」
「あいつが受けると思うか?」

 どうやら、イザベラとリグダミス、二人の知り合いらしい。伝説の魔法使いと呼ばれる存在だ。きっとそれはすごく聡明で強靭な人物に違いない。それほどの人物となると、高慢ちきな人間かもしれないがたぶんリグダミスよりかは幾分かましだと信じたい。
 と思ったが、次にリグミダスが言った言葉によって僕の想像は破壊された。

「受けるさ……碌な魔力も才能もなく、知識と努力だけで英雄と呼ばれるようになったのは、私のおかげでもあるからね」
 なんだか厳しそうな感じだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...