転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。

真白 悟

文字の大きさ
100 / 170
10 伝説の魔法

97 伝説の魔法使い 2

しおりを挟む
『明日の朝、ケントニスをここへよこす』と言い残してリグダミスは店を去って行った。

 展開が唐突すぎてついていくことすらままならない僕は、一応、話を理解しているであろうイチゴに話を聞く。

「それで、ケントニスさん……? って方は結局のところ何者なんですか?」

 伝説の魔法使いだとか、英雄だとかは話には出たわけだから、おそらくものすごくすごい人物だという事は分かる。だが、リグダミスが言い残した人物像から考えてみると、やはりイマイチぴんと来ない。

「私の元仲間だ。天才……と呼べるほど秀でた人間ではなかったが、あいつはある意味では天才を超えた秀才だ。元私のパーティだった人間の中ではもっとも秀でた知恵者だったと言っても過言ではない」

 彼女にそこまで言わせる人物となると、やはり相当素晴らしい獣人なのだろう。
 だがしかし、やはりその人物個人のことはあまりわからない。

「どんな人なんです?」
「一言で言うなら……変人。まあいい意味でだが、それでも教鞭をとれるような性格ではないのは確かだ。一体、あいつをどうやって言いくるめるつもりなんだ。リグダミスのやつは……」

 大きなため息をついてぶつくさとイチゴはつぶやく。
 なるほど、やっぱり何一つわからない。変人と天才……そもそもその二つは紙一重であり、変人は天才であり、天才は変人であるというのが僕の結論だ。今回の一件でもその結論が覆るようなことはないだろう。つまり、情報はいまだにひとつしか得られていないという事だ。

「なるほど……」

 肩を大きく落とす。
 それでもまあ、リグダミスに修行をつけられるよりかははるかにマシなはずだ。
 傲慢知己な人間から教わるというのは、はらわたが煮えくり返るのをひたすら耐え忍ぶのと同じで、ストレスがたまり効率は遥かに悪い。出来れば、自分と相性が良い人物に教わった方が早く覚えられるものだ。たぶん。

「もしあいつがお前に教える気になったとしても、あまり大きな期待はしない方がいい。リグダミスが教えるよりかははるかに楽だとは思うが、天才というのはいつも自分が理解できることを他人が理解できないことを理解できない」
 イチゴは早口でよくわからないことを言う。
「え? なんです?」

 まるで早口言葉みたいなことを言われた気がする。早口で言われすぎて、言葉の意味が理解できなかったのかもしれない。理解できるとか、出来ないとか言われた気がするが……結局どっちなのだろう。

「まあ、あえば嫌でもあいつのことが理解できる。理解できないってことがな」
「理解できるんですか? できないんですか?」
「どっちも同じだ。実力がけた違いに強い存在の力を理解できないように、知能がけた違いにすごい人間の頭の中を理解することは出来ないってことだ。その理不尽さを嫌ってほど思い知らされる」

 なるほど、つまりあれか『IQが20離れていると会話が成立しない』というやつのことだ。
 確かにそれは前世でも経験済みだ。前世では高IQの人と会話していた時に思ったことで、こっちでは村の人間たちと会話が成立しないことがあった。
 だがしかし、頭のいい人間というのは、僕たちのような平凡な人間に対してわかるように言葉を選んでくれた利もする。だから話を全く理解できないという事はないはずだ。

「性格もあまりよくないってことですか?」

 そうなると言葉が全く理解できないとなると、合わせる気が待ったくないという事になる。

「いいや……私はあいつほど良いやつに会ったことはないと断言できるよ……おそらくアルタよりも性格がいい」
「勇者を超える性格の良さ……」

 それなのに話を理解できないって、それはもうIQ20差どころか、IQ100差ぐらいあるという事なのだろうか? いくら性格の良い獣人であったとしても、そんな人とは会いたくない気もするのだが……

「勘違いしないように言っておくが、あいつがお前に会ってくれるというなら会っておいた方がいい。魔力も腕力もないが、魔法使いとしてはお前より数段上だ。お前の力を底上げしてくれるだろう」
「会話が成立しなくてでもですか?」
「ああ。まあ、全く会話が成立しないというわけではなく、言っている意味がよくわからないってだけなんだがな」

 終始、イチゴの言っている言葉の意味は理解できなかったが、ともかくケントニスという人物が僕よりも遥かに優れた獣人であるという事は理解できた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

処理中です...