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10 伝説の魔法
98 伝説の魔法使い 3
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◇
来たる朝、その時は突然やって来た。
それは丁度僕が朝食を食べ終えた頃だった。
「イザベラさーん!」
かわいらしい女性の声が店内に響き渡る。いいや、女性というよりは小さな女の子が発したような声変わりもしていないような幼げな声だ。
時刻はいまだ6時30分。子供が食事をしに店を訪れることはないはずの時間であるし、そもそも店はまだ開いてない。モーニングであったとしても、開店は7時からだ。
僕は戸惑いを隠せずにイチゴの方を見る。
イチゴも戸惑いを隠せていないようで、口を小さく広げたまま固まっている。
「あれ? いないのかな? それとも店を間違えたとか……でも以前来た時と場所は変わっていないし、外装も何も変わってなかった……となると、まさか! 夜逃げとか!?」
誰も反応しなかったことに驚いているようで、何やら一人で賑やかそうに騒いでいる。
このまま放っておけばいずれ近所迷惑になるほどに騒ぎ出しそうだ。
「ったく……二ス!」
「イザベラさん! いたんじゃないですか!? どうして返事をしてくれなかったんですか? 驚きましたよ。私はてっきり蒸発したのかと思いました。まあいることは知っていたんですけどね」
「じょ、蒸発? 相変わらずよくわからないことを言うやつだ。だが驚いたぞ……まさか本当に来てくれるとは思ってもみなかった」
2人の会話を聞く限り、どうやらその少女みたいな声の人物が伝説の魔法使いと呼ばれた『ケントニス』なる人物らしい。
楽しそうな会話に割り込むのもどうかとは思ったが、僕のために来てくれたというのならずっと隠れているわけにはいかないだろう。僕はキッチンからゆっくりと顔を出す。そして、店の入り口を入ったところに立っている見慣れない人物を視認した。
「お、おはようございます」
驚いた。いいや、びっくりした。驚愕した。
「あ、あなたがケン君? だよね。見た感じそうだもん……いかにもケン君って感じ。流石私と同じ『ケン』の名前を持つ犬種の獣人だ!」
妹と同じぐらいの年齢であろう小さな女の子がふりふりのドレスをゆらゆらと揺らしながらテンション高めに近づいてくる。
「ちょ、ちょっと待ってください」
しかし、本当にちょっと待ってもらいたい。
ケントニスなる人物は、イチゴと同じチームに在籍し、冒険者を引退した身の伝説の人物だったはずだ。彼女を妹と同じ年齢だとするなら、計算的に3歳とか4歳とかの時……もしかすると生まれて間もない赤子で冒険者を担っていたという事にもなりかねない。
「うん。その疑問は私にとってはかなり不快なものになるから口にしないでね」
「えっ?」
「イザベラさんとかなら若く見られてうれしくなるかもしれないけど、私はそうじゃないから。ロリババアって言われるほど歳とっているわけでもないけど、属性的にはそうなると思う。だからそれを口にしないでってこと!」
勝手に思考を読まれて、それも理解不能なことを言い始める。
人の思考を呼んで、数手先の答えまで出すというのは頭のいい人にしかできないが、話している内容的に頭がいいのか悪いのか半出し兼ねるわけだ。
「ロ、ロリババアって……」
僕は呆れて口が開きっぱなしだ。
ともかく、その言葉はこの世界には存在しないはずの言葉だが、彼女はなぜその言葉を知っているのだろう。
「私は何も知らないよ。君の言いそうな言葉を口にしただけ! もちろん心を読んでいるわけじゃないから、的外れなことを言っちゃうこともあるけど……いや、うるさいとか言われても会話が好きなんだからしょうがないじゃない!」
まだ何も言っていないのに、一人で会話をしている。話す必要がないのは楽ではあるが、かなり気持ちの悪い感覚だ。それに――
「そうだね。ケン君には魔力の使い方を指南するために会ってるんだったね! イザベラさん!」
彼女の言葉にイチゴがうなずく。
びっくりするぐらいに心を読まれているように感じる。心を読んでいるわけじゃないとは言っていたが、これで心を読んでいないと言うのだから驚きだ。
「ごめんごめん。言葉を先読みされるって気持ち悪いよね? ドン引きだよね?」
「いや、そうでもないですよ……」
全然ドン引きだけど、それを直接告げるほど空気が読めない僕じゃない。
「建前でもうれしいよ! ほとんどの人は気持ち悪いって言うからね……それより、君の妹ちゃんは!? そっか厨房の掃除をしてるんだね。ロリで勇者なんて萌属性の持ち主、会っておきたかったけど仕事の邪魔は出来ないしね!」
「まあそうなんですけど……僕が考えるよりも早く状況を理解しているってことは、やっぱり周りの環境を観察して推理したってことですか?」
「探偵みたいでしょ? でも簡単な推理なのだよケン君。この音を聞けば大体のことは分かるでしょ? あ、掃除をしているのが別の人って言うかもしれないから言っておくけど、この店の経年劣化具合から従業員をいっぱい雇う必要がないってことは推理に入っているからね」
ダメだ。言っていることを理解できないわけじゃないが、頭の整理が追いつかない。なるほど、これがイチゴの言っていた言葉の意味だったのか。
来たる朝、その時は突然やって来た。
それは丁度僕が朝食を食べ終えた頃だった。
「イザベラさーん!」
かわいらしい女性の声が店内に響き渡る。いいや、女性というよりは小さな女の子が発したような声変わりもしていないような幼げな声だ。
時刻はいまだ6時30分。子供が食事をしに店を訪れることはないはずの時間であるし、そもそも店はまだ開いてない。モーニングであったとしても、開店は7時からだ。
僕は戸惑いを隠せずにイチゴの方を見る。
イチゴも戸惑いを隠せていないようで、口を小さく広げたまま固まっている。
「あれ? いないのかな? それとも店を間違えたとか……でも以前来た時と場所は変わっていないし、外装も何も変わってなかった……となると、まさか! 夜逃げとか!?」
誰も反応しなかったことに驚いているようで、何やら一人で賑やかそうに騒いでいる。
このまま放っておけばいずれ近所迷惑になるほどに騒ぎ出しそうだ。
「ったく……二ス!」
「イザベラさん! いたんじゃないですか!? どうして返事をしてくれなかったんですか? 驚きましたよ。私はてっきり蒸発したのかと思いました。まあいることは知っていたんですけどね」
「じょ、蒸発? 相変わらずよくわからないことを言うやつだ。だが驚いたぞ……まさか本当に来てくれるとは思ってもみなかった」
2人の会話を聞く限り、どうやらその少女みたいな声の人物が伝説の魔法使いと呼ばれた『ケントニス』なる人物らしい。
楽しそうな会話に割り込むのもどうかとは思ったが、僕のために来てくれたというのならずっと隠れているわけにはいかないだろう。僕はキッチンからゆっくりと顔を出す。そして、店の入り口を入ったところに立っている見慣れない人物を視認した。
「お、おはようございます」
驚いた。いいや、びっくりした。驚愕した。
「あ、あなたがケン君? だよね。見た感じそうだもん……いかにもケン君って感じ。流石私と同じ『ケン』の名前を持つ犬種の獣人だ!」
妹と同じぐらいの年齢であろう小さな女の子がふりふりのドレスをゆらゆらと揺らしながらテンション高めに近づいてくる。
「ちょ、ちょっと待ってください」
しかし、本当にちょっと待ってもらいたい。
ケントニスなる人物は、イチゴと同じチームに在籍し、冒険者を引退した身の伝説の人物だったはずだ。彼女を妹と同じ年齢だとするなら、計算的に3歳とか4歳とかの時……もしかすると生まれて間もない赤子で冒険者を担っていたという事にもなりかねない。
「うん。その疑問は私にとってはかなり不快なものになるから口にしないでね」
「えっ?」
「イザベラさんとかなら若く見られてうれしくなるかもしれないけど、私はそうじゃないから。ロリババアって言われるほど歳とっているわけでもないけど、属性的にはそうなると思う。だからそれを口にしないでってこと!」
勝手に思考を読まれて、それも理解不能なことを言い始める。
人の思考を呼んで、数手先の答えまで出すというのは頭のいい人にしかできないが、話している内容的に頭がいいのか悪いのか半出し兼ねるわけだ。
「ロ、ロリババアって……」
僕は呆れて口が開きっぱなしだ。
ともかく、その言葉はこの世界には存在しないはずの言葉だが、彼女はなぜその言葉を知っているのだろう。
「私は何も知らないよ。君の言いそうな言葉を口にしただけ! もちろん心を読んでいるわけじゃないから、的外れなことを言っちゃうこともあるけど……いや、うるさいとか言われても会話が好きなんだからしょうがないじゃない!」
まだ何も言っていないのに、一人で会話をしている。話す必要がないのは楽ではあるが、かなり気持ちの悪い感覚だ。それに――
「そうだね。ケン君には魔力の使い方を指南するために会ってるんだったね! イザベラさん!」
彼女の言葉にイチゴがうなずく。
びっくりするぐらいに心を読まれているように感じる。心を読んでいるわけじゃないとは言っていたが、これで心を読んでいないと言うのだから驚きだ。
「ごめんごめん。言葉を先読みされるって気持ち悪いよね? ドン引きだよね?」
「いや、そうでもないですよ……」
全然ドン引きだけど、それを直接告げるほど空気が読めない僕じゃない。
「建前でもうれしいよ! ほとんどの人は気持ち悪いって言うからね……それより、君の妹ちゃんは!? そっか厨房の掃除をしてるんだね。ロリで勇者なんて萌属性の持ち主、会っておきたかったけど仕事の邪魔は出来ないしね!」
「まあそうなんですけど……僕が考えるよりも早く状況を理解しているってことは、やっぱり周りの環境を観察して推理したってことですか?」
「探偵みたいでしょ? でも簡単な推理なのだよケン君。この音を聞けば大体のことは分かるでしょ? あ、掃除をしているのが別の人って言うかもしれないから言っておくけど、この店の経年劣化具合から従業員をいっぱい雇う必要がないってことは推理に入っているからね」
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