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10 伝説の魔法
110 才能と使い方 9
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「さてと……休息も十分取れたことだし、そろそろ続きをするわよ」
なんてことを言ってケントニスは立ち上がったが、長々と長話をされただけでまるで休めた気がしない。
「は、はい……」
気絶から覚めて、長話をされた僕の集中力はかなりとぎれとぎれで、まさに最悪な気分だが、折角修行をつけてくれている相手に文句を言うわけにも行かず、いそいそと立ち上がる。
「集中力がまるでないわね……でもそうじゃなきゃ意味ないからね! さあ、今度はそっちから来なさい……魔力をふんだんに練ってね」
「はい!」
魔力を何とか体中に張り巡らせることは出来たが、かなり不安定な気分だ。頭はフワフワとしてイマイチ集中できていないし、何よりいつもより魔力がいう事を聞いてくれない。
「早く!」
彼女は僕を挑発するように、裏手で僕にかかってくるようにジェスチャーする。
「行きます!」
「実戦で合図をする馬鹿がいるの!?」
またも彼女に叱られる。
確かにそうだ。実戦形式の鍛錬だと言われていた。かかって来いと言われたら、そこから先は実戦だという事を理解しなければならない。
「っ……!」
僕は大きく息を入ってとびかかる。
魔力の調整がうまくいかず、いつもよりはるかに低いがそれがかえって体の負担を減らしていることに気が付く。
「空中では身動きが取れない! 簡単に地面から足を離しちゃダメよ!」
僕のとびかかりを軽くいなして、彼女はそのまま僕の右側に自然な形で入り込む。
まずい。これでは先ほどの二の舞だ。
みぞおちに拳を入れられてノックダウン。何一つ学べていない。
「みぞおちに魔力を集中!」
スローモーションに見える世界の中で、彼女の声がしっかりと耳に届いた。
その声に従って、ゆらゆらと揺れる魔力を何とかお腹まで送ることに成功した。それとほぼ同時に彼女の拳が僕のおなかにぶつかった。
そのまま僕は左後方に吹き飛ばされる。
だが、最初にもらった拳よりも痛くない。気絶するような痛みではない。
「気を緩めるな! 今度は後ろだ!」
空中を散歩するようなスピード感の中で、再び彼女の声だけが正確に聞こえた。
視線を少しだけ背後に送る。背後には大木が迫っていた。それに驚くことなく、僕は背中に魔力を集中させる。
大木は大きな音を立てて僕が衝突したあたりから折れ曲がる。
今度は魔力が十分に行き届いていなかったのか、かなりの激痛が背中に走った。しかし、それは気絶するほどのものではない。
「気を緩めるなって言ったでしょ?」
「す、すみません……」
いつの間にか僕の目の前に立っていたケントニスが僕の頭を軽くなでる。
僕が最初に殺されかけた魔物よりかは幾分か弱い攻撃ではあったが、たぶん魔力コントロールが出来ていなければ死にそうになったことだろう。背後の木が倒れるほどの攻撃なのだから。
……というか、普通の人間なら最初の攻撃すら耐えることは出来なかっただろう。そう考えると、獣人というのは最底辺の犬種であったとしても人間よりかははるかに優れているようだ。
「だからよ! だから多少はむちゃな修行の方が効率的なのよ!」
僕の頭を撫でていた手で、そのまま僕の頭をポンポンと叩くと、無邪気な笑顔でそんなことを言い始めた。
万が一、僕が魔力コントロールをうまくできていなかったら、死んでいた可能性だってあるわけだ。そんなむちゃくちゃな修行法を考えた彼女はもっとむちゃくちゃだ。
このまま修行を続けていたら殺される可能性だってあるだろう。
「大丈夫、殺したりしないわよ! イザベラさんの大切なものは壊さないことにしているからね」
なんて意味深な笑みを浮かべる。
やはり恐ろしい。心を読んでいないとは言うが、どう考えたって心を読まれている気しかしない。
しかも『イザベラさんの大切なものは壊さないことにしている』ってどういう意味だ……それ以外なら壊すこともいとわないって言う意味なのだろう。
あんな恐ろしい力が暴走したらと考えると寒気がする。
なんてことを言ってケントニスは立ち上がったが、長々と長話をされただけでまるで休めた気がしない。
「は、はい……」
気絶から覚めて、長話をされた僕の集中力はかなりとぎれとぎれで、まさに最悪な気分だが、折角修行をつけてくれている相手に文句を言うわけにも行かず、いそいそと立ち上がる。
「集中力がまるでないわね……でもそうじゃなきゃ意味ないからね! さあ、今度はそっちから来なさい……魔力をふんだんに練ってね」
「はい!」
魔力を何とか体中に張り巡らせることは出来たが、かなり不安定な気分だ。頭はフワフワとしてイマイチ集中できていないし、何よりいつもより魔力がいう事を聞いてくれない。
「早く!」
彼女は僕を挑発するように、裏手で僕にかかってくるようにジェスチャーする。
「行きます!」
「実戦で合図をする馬鹿がいるの!?」
またも彼女に叱られる。
確かにそうだ。実戦形式の鍛錬だと言われていた。かかって来いと言われたら、そこから先は実戦だという事を理解しなければならない。
「っ……!」
僕は大きく息を入ってとびかかる。
魔力の調整がうまくいかず、いつもよりはるかに低いがそれがかえって体の負担を減らしていることに気が付く。
「空中では身動きが取れない! 簡単に地面から足を離しちゃダメよ!」
僕のとびかかりを軽くいなして、彼女はそのまま僕の右側に自然な形で入り込む。
まずい。これでは先ほどの二の舞だ。
みぞおちに拳を入れられてノックダウン。何一つ学べていない。
「みぞおちに魔力を集中!」
スローモーションに見える世界の中で、彼女の声がしっかりと耳に届いた。
その声に従って、ゆらゆらと揺れる魔力を何とかお腹まで送ることに成功した。それとほぼ同時に彼女の拳が僕のおなかにぶつかった。
そのまま僕は左後方に吹き飛ばされる。
だが、最初にもらった拳よりも痛くない。気絶するような痛みではない。
「気を緩めるな! 今度は後ろだ!」
空中を散歩するようなスピード感の中で、再び彼女の声だけが正確に聞こえた。
視線を少しだけ背後に送る。背後には大木が迫っていた。それに驚くことなく、僕は背中に魔力を集中させる。
大木は大きな音を立てて僕が衝突したあたりから折れ曲がる。
今度は魔力が十分に行き届いていなかったのか、かなりの激痛が背中に走った。しかし、それは気絶するほどのものではない。
「気を緩めるなって言ったでしょ?」
「す、すみません……」
いつの間にか僕の目の前に立っていたケントニスが僕の頭を軽くなでる。
僕が最初に殺されかけた魔物よりかは幾分か弱い攻撃ではあったが、たぶん魔力コントロールが出来ていなければ死にそうになったことだろう。背後の木が倒れるほどの攻撃なのだから。
……というか、普通の人間なら最初の攻撃すら耐えることは出来なかっただろう。そう考えると、獣人というのは最底辺の犬種であったとしても人間よりかははるかに優れているようだ。
「だからよ! だから多少はむちゃな修行の方が効率的なのよ!」
僕の頭を撫でていた手で、そのまま僕の頭をポンポンと叩くと、無邪気な笑顔でそんなことを言い始めた。
万が一、僕が魔力コントロールをうまくできていなかったら、死んでいた可能性だってあるわけだ。そんなむちゃくちゃな修行法を考えた彼女はもっとむちゃくちゃだ。
このまま修行を続けていたら殺される可能性だってあるだろう。
「大丈夫、殺したりしないわよ! イザベラさんの大切なものは壊さないことにしているからね」
なんて意味深な笑みを浮かべる。
やはり恐ろしい。心を読んでいないとは言うが、どう考えたって心を読まれている気しかしない。
しかも『イザベラさんの大切なものは壊さないことにしている』ってどういう意味だ……それ以外なら壊すこともいとわないって言う意味なのだろう。
あんな恐ろしい力が暴走したらと考えると寒気がする。
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