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11 魔法の言葉
162 結果
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◇
いつもの場所にたどり着いたつもりだが、そこはいつもの場所とは少し……いや、かなり様子が違っている。
緑が青々と茂り、ひらけてはいるのに、それでいて木々に囲まれてひっそりとしている。そんな場所だったのに、それが今では焼け野原だ。緑はえぐれて土色が表面にまで浮き出て来ていて、そこに木々から舞い落ちたであろう葉が散乱している。
そんな中で一番に目を惹かれるのは、無残にも根元から粉砕された大木だ。ケントニスが魔法で倒した大木はきれいに倒れているが、僕の目に映る大木はまるでダイナマイトで無理やり破壊されたという感じだ。
「な、なにがあったんですか?」
動揺する僕に、ケントニスは静かに答える。
「本当に覚えてないんだね。恐ろしい光景だろう? これが魔力の暴走……すなわち失敗というやつだ。魔法が廃れた原因の一つと言い換えることも出来るね」
「つまり、これを僕がやったってことですか?」
じんわりとだが覚えている。
気絶する前に見えた緑の葉が雨のように降っていたのは記憶違いじゃなかったらしい。暴発した魔力が木にぶつかって、この大惨事を起こしたのだ。
「失敗したのが『ここ』でよかっただろう?」
そう口にしたケントニスの瞳は、純粋で澄んでいる。だがよく見ると、その奥には凄惨な何かが見え隠れしたような気がした。
戦争を目の当たりにしたおばあさんから話を聞いた時と同じような感覚だ。恐ろしく、そしてリアルで、何よりそれが悪いことだっていともたやすく理解できるような……そんな感覚を感じている。たぶん、ケントニスはもっと悲惨な暴発現場を見たことがあるんだ。
つまり、今朝のケントニスとイチゴの言い争いはこのことを示唆していた。イチゴが怒っていた理由が何となく見えてきた。
「わざと……ってそう言う事ですか?」
「誰も、何も殺さないように……これぐらいじゃ生態系も変わらないからね」
「魔法は失敗しちゃいけない。だから、感情のコントロールをあれほど長く教えてくれたんですね」
「でも、ケン君は結局、私の言葉を甘く見てたでしょ? その結果がこれだってことだよ。悪いけど、私は教えるのがそれほどうまくないから、強硬手段をとるしかなかった。怖かったでしょうね、街の人たち。これほどの惨劇を引き起こせる爆弾が近くを歩いていたんだから」
「それで、みんな僕を……」
「そう。でもそれがケン君の失敗に対する責任。大きな失敗をした人は、その失敗に対してその身を以て償わなくちゃいけない。それだけ強い覚悟をもって魔法を使わなくちゃいけないんだよ。ケン君にそれが出来る?」
透き通った目が再び僕の目に向けられる。
ケントニスは大きな力に伴う、大きな責任を僕に背負えるのかと尋ねている。魔法はそれだけの力だと、そう彼女は言いたいらしい。
「わかりません。でも、僕は――誰も殺したくないし、メリーも守りたい。メリーを守るためには力が必要なんです。そのためなら、覚悟だって!」
出来るはずだ。
いつもの場所にたどり着いたつもりだが、そこはいつもの場所とは少し……いや、かなり様子が違っている。
緑が青々と茂り、ひらけてはいるのに、それでいて木々に囲まれてひっそりとしている。そんな場所だったのに、それが今では焼け野原だ。緑はえぐれて土色が表面にまで浮き出て来ていて、そこに木々から舞い落ちたであろう葉が散乱している。
そんな中で一番に目を惹かれるのは、無残にも根元から粉砕された大木だ。ケントニスが魔法で倒した大木はきれいに倒れているが、僕の目に映る大木はまるでダイナマイトで無理やり破壊されたという感じだ。
「な、なにがあったんですか?」
動揺する僕に、ケントニスは静かに答える。
「本当に覚えてないんだね。恐ろしい光景だろう? これが魔力の暴走……すなわち失敗というやつだ。魔法が廃れた原因の一つと言い換えることも出来るね」
「つまり、これを僕がやったってことですか?」
じんわりとだが覚えている。
気絶する前に見えた緑の葉が雨のように降っていたのは記憶違いじゃなかったらしい。暴発した魔力が木にぶつかって、この大惨事を起こしたのだ。
「失敗したのが『ここ』でよかっただろう?」
そう口にしたケントニスの瞳は、純粋で澄んでいる。だがよく見ると、その奥には凄惨な何かが見え隠れしたような気がした。
戦争を目の当たりにしたおばあさんから話を聞いた時と同じような感覚だ。恐ろしく、そしてリアルで、何よりそれが悪いことだっていともたやすく理解できるような……そんな感覚を感じている。たぶん、ケントニスはもっと悲惨な暴発現場を見たことがあるんだ。
つまり、今朝のケントニスとイチゴの言い争いはこのことを示唆していた。イチゴが怒っていた理由が何となく見えてきた。
「わざと……ってそう言う事ですか?」
「誰も、何も殺さないように……これぐらいじゃ生態系も変わらないからね」
「魔法は失敗しちゃいけない。だから、感情のコントロールをあれほど長く教えてくれたんですね」
「でも、ケン君は結局、私の言葉を甘く見てたでしょ? その結果がこれだってことだよ。悪いけど、私は教えるのがそれほどうまくないから、強硬手段をとるしかなかった。怖かったでしょうね、街の人たち。これほどの惨劇を引き起こせる爆弾が近くを歩いていたんだから」
「それで、みんな僕を……」
「そう。でもそれがケン君の失敗に対する責任。大きな失敗をした人は、その失敗に対してその身を以て償わなくちゃいけない。それだけ強い覚悟をもって魔法を使わなくちゃいけないんだよ。ケン君にそれが出来る?」
透き通った目が再び僕の目に向けられる。
ケントニスは大きな力に伴う、大きな責任を僕に背負えるのかと尋ねている。魔法はそれだけの力だと、そう彼女は言いたいらしい。
「わかりません。でも、僕は――誰も殺したくないし、メリーも守りたい。メリーを守るためには力が必要なんです。そのためなら、覚悟だって!」
出来るはずだ。
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