先生と僕

真白 悟

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「お嬢様なんだね」

 僕の家とは真逆だ。
 貧乏暇なしとは言ったもので、僕の家は両親と僕、妹と4人暮らしだが、妹と僕で家事を分担している。両親はほとんど家には帰ってこないし、帰ってきても疲れて寝ている。
「はい。だからでしょうか? 両親はほとんど家にいません」
 あずさはさみしそうに言った。
 暇なんてものは存在しないらしい。世知辛い社会である。
「そんな君らが集まったのも何かの縁だし、ちょうどいい話があるんだけど聞いて行かない?」
 今の話において、『縁』というものが感じられた理由はわからないが、ともかく、先生は突然何やら思い出したかのように言った。

「実は、理事長が新しい部活を作りたいとかなんとか言っててね。その顧問に私を任命するってことらしいんだけど……私としては運動部とか、熱血的な文学部とか、練習量が多そうな部活は嫌なわけ」

 校門で僕をしかりつけた時の熱血っぽさはどこへやら、先生は面倒くさそうに話す。

「たぶん君たちなら、そんな部活にならないだろうか、どう? 部活作ってみない?」
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