先生と僕

真白 悟

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問い

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「先生って、恋次れんじ先輩のことどう思ってるんですか?」
 彩錦あかねがあまりにも予想外なことを口走るものだから、僕は思わず吹き出してしまった。
 先生も、僕と同じで、かなり動揺しているようだ。ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしている。

「……って何の話よ!?」
「何の話だよ!?」

 僕と先生はほぼ同時に、正気を取り戻して、彼女に問いかけた。
「ここに先輩がいるってことは、私が相談した内容は先生に漏れてるってことでしょう。だったら、全部、早く終わらしてしまった方がいいかと……」
 彩錦あかねは、僕たちになぜこんなことを問いかけるのか、説明してくれているようだが、要点がまるで見えてこない。
「つまり、どういうことだ?」
「私は中途半端が嫌なんです。どっちに転ぶにしろ、答えは早くないと……だから、ここらで、先輩が先生かお姉ちゃん、どっちを選ぶか決めてもらいたいってことです」
 話の展開が急すぎて、全然頭がついてこない。

「どうでもいいけど……」
 先生がそうこぼす。
 あんまりな言いようだ。本当に僕のことをどうでもいいと思っているとしても、もっと言いようはあるだろう。
「僕のことがどうでもいいって!? それはひどいですね……」
「そうじゃなくて、そんな話こんなところでする話じゃないわよね!?」
 なんだ、僕のことがどうでもいいわけじゃないのか。
 確かに先生の言うとおり、職員室でする話じゃ絶対ない。それに、僕が学生であるうちは絶対に、答えの出ることがない問題だ。
 あまりにも騒ぎすぎたせいで、再び先生は教頭先生に連れて行かれた。
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