先生と僕

真白 悟

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 ドアが勢いよく開いた。
「皆さんお揃いで、どうしたんですか?」
 そう口を開いたのは梓だ。ドアを、開けて口を開いて、当たり前のことを聞く。
 部活なのだから、揃っているのは当たり前。
 そんなことは、普通に考えればわかることだ。だけど、それは言わないお約束だ。

「部活なんだから、みんないるに決まってるじゃん」
 彩錦あかねは、それを平然と言って抜けた。
 この前のこともあるのだから、もっと丁寧に対応するものとばかり思っていた僕は驚きを隠せない。
「それもそうだね」
 あずさも普通に対応している。
「もう、ドジなんだから」
 彩錦あかねは普通に、あずさのことをドジだと笑う。

 ありえない、僕があずさに対して、『君はドジだな』なんて言ったら、どうなるか想像に難くない。
「おい……」
 僕は思わず、彩錦あかねの肩を掴む。
「なんですか?」
 ちょっと、来いとジェスチャーをして、彼女を部室の外へとさそいだす。

「二人きりになるなんて、なんですか、誘ってるんですか? でも私、ロリコンは無理なんで……」
「僕はロリコンじゃない! ……って、何回同じやりとりをやるつもりだ? まあいいけど、とにかくどういうことなんだ?」
 僕はわけがわからないまま、彩錦あかねに尋ねる。

「何がです?」

 彼女もなにがなんだか、わけがわからないらしい。
 僕は詳しく説明する。
あずさは自分のことをドジだと言われると、かなり激しく怒るはずだ」
「そうなんですか?」と、彼女は首をかしげる。

 よくわからないが、彩錦あかねにとってはそうではないらしい。
「そうなんだよ」
「私はいつも言ってますけどね、『お姉ちゃんはドジだね』なんて」
 姉妹の間では、お互いの悪口を言われても怒らないものなのか?
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