先生と僕

５

思いがけない提案

　なんとか、梓あずさに自分がドジであることを納得してもらい、どうにか対策会議へと漕ぎ着けることが出来た。
　だけど、未だに苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「いや、どんだけ認めたくないんだよ！」
　僕は思わず突っ込んだ。
　彼女のあんな顔は初めて見たからだ。せっかくの綺麗な顔が崩れて、かなり台無しになっている。
「あたしはまともです。委員会も部活も両立出来ていますし……」
　だめだ、全然納得していない。
　これじゃあ、対策会議どころではないし、全然漕ぎ着けていない。

「お姉ちゃん……気持ちはわかるけど、このままじゃ退学になるかもしれないんだよ？」
　彩錦あかねはかなりはっきりと言う。
　誰だって、現実から目を背けたい時はある。だけど、それじゃあいけないことの方が多く、梓あずさにとってのドジはそれに当たる。
　当人だってそれは理解しているはずだ。

「そうよ、ドジなままじゃ、人生大変よ……」

　先生も気には掛けているようだ。
　まあ、教師なのだから当たり前か。

「わかりました……それで、あたしはどうすればいいんでしょう？」
　先生に諭されて、ようやく自分の現状を理解したのだろう。梓あずさはかなり気落ちしたように、力無い声で尋ねた。
　すると、先生は逆に元気が出たらしく、勢いよく立ち上がった。

「よし、だったら、明日は土曜日だ。土曜日にすることと言えば⁉︎」
　僕の方を見て先生が聞いてくる。
　突然の出来事に、僕は反応できずしどろもどろになる。

「え？　いや、あの、夜更かしですか？」
　土曜日は半休だから、ゆっくりすることが出来ると考えた。
　しかし、我ながらひどい答えだ。
　だが、先生の導き出した答えよりは、幾分かマシだろう。

「恋愛部の合宿よ！」
　一日と半日で、なにが出来るというのだろうか……