先生と僕

真白 悟

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「では、どうすれば?」
 おどおどとした様子で、あずさが僕の方を見る。
「いや、よく考えたら、今回はテストの解答欄がずれなければいいだけの話だろう?」
 彼女のテスト勉強を見て思ったが、解答を間違えるなんてことはないと確信できるぐらいの集中力だ。
 だがそれは、全てテスト範囲を勉強し終えるまでに限られている。
――つまり、別に解答欄がずれていても後で直せばいいだけだ。

「なるほど……」

 僕の言葉でようやく彩錦あかねが、気がついたようだ。
「つまり、テストはテストで集中して、間違い探しは間違い探しで集中するということですね?」
「流石、彩錦あかねだ」
 そういって、僕は彼女の頭を撫でた。
 彼女は、僕の手をすぐさまはたいて、大声を上げる。
「触らないでください。ロリコン先輩!」
 いつもの癖でついやってしまったが、これじゃあ、彩錦あかねにロリコンだと言われてしまうのも仕方がない。
 
「それであたしはどうすれば……?」
 僕と彩錦あかねのやり取りを見ていたあずさは不安そうに尋ねる。
 どうすればいいって……あれ、一体どうすればいいんだ?
 あずさの問いに対する答えに困り果て、僕は彩錦あかねの方を見る。
「さっき言ったじゃない。テストを早めに終わらせて、余った時間で解答欄がずれてないか確認すればいいって――」
「――それは無理よ! だって、あたしいつもテスト時間ギリギリまで問題を解いてるもの!」
 彩錦あかねがすべて言い切る前に、あずさが困り顔でそう言った。
 それは、本当に困った問題だ。
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