先生と僕

真白 悟

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夢現

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「――起きて! 先輩! 起きてくださいっ!! 目を覚まさないと怒りますよ!」
 一番最初に目に入ったのは、涙目で僕の右手を握る彩錦あかね
 ゆっくりと広がっていく視界の中で、心配そうに僕を見るあずさと、部屋の奥で電話をかけている先生が見えた。

「僕は一体……」
 さっきまで温泉にいたはずだが、今僕の目に映るのは知らない天井だ。
 手を思いっきり握ってくれるものだから、めちゃくちゃ痛いっていう感覚だけは嫌なほどに感じている。

恋次れんじさん。よかった。目が覚めたんですね……そのまま死んじゃうんじゃないかって、あたし、心臓が止まりそうでしたよ」
 あずさが開いていた左の手をつかむ。
「何があったんだ?」
 今気がついたが、僕の声はかなりかすれている。あととても鉄くさいにおいがする。
 よく見ると、僕の右手は血だらけだ。それをつかんでる彩錦あかねの手も血だらけになっている。
「心配したわよ……ああ、でもあまり動かないでね、今救急車を呼んだから……」
 先生は電話をポケットに入れて、手を後ろで組んだ。
 一体僕の身に何があったというのだろう。
 ダメだ。何も思い出せない。
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