先生と僕

真白 悟

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貧血

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 結果から言うと、僕の症状はすべて貧血からくるものだった。
 おそらく、最初に鼻血が出た時点から、血が足りていなかったのだろう。そこに、あの大量出血だ。血が足りなくなるのも頷ける。

「たいした病気じゃなくてよかった」
 先生が安堵したように小さく息を吐いた。

「ご迷惑おかけしました」
 ベットに横たわる僕は、腕につながれた点滴を気にしながら、小さく頭を下げた。
 貧血で点滴なんて大げさかもしれないが、まあ、医者が必要だというで仕方がない。

「2人には私から伝えておくわ。入院する必要があるらしいから、テストには間に合わないかもしれないけど、それもなんとかするから」
 本当に先生には頭が上がらない。
 何度頭を下げても下げたりないくらいだ。

「ありがとうございます」
 ベットから起き上がり、再び頭を下げた。
「いいから、横になっておきなさい」
 先生は慌ててが起き上がるのを制止した。

「家族の方にご連絡したから、すぐにくるとは思うわ。だから、私はもう帰るわね?」
 先生は立ち上がって身支度をする。
 本当はもっと一緒にいてほしい、だけど、こんな時ばかり本音を口にできない自分が情けない。
「あの……」
 僕の声に先生が振り向く。
「なに?」
「いえ……」
『もう少しいて下さい』という言葉が、喉の奥に詰まって口から出ない。
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