先生と僕

真白 悟

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終わらない課題

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 先生が帰った後、僕はひたすらに机の上に詰まれた課題を片付ける。
 もともと、頭がよくも悪くもない僕にとっては、苦痛とも呼べる作業でしかない。何より、一向に減らない紙の厚みが一層やる気を損なわせた。

「あと何枚だ……? ダメだ数える気にもなれない」

 そもそも、勉強道具もないのに、まだ習っていない問題を解けるはずもないのだ。
 入院しているというのに、家族は誰も勉強道具を持ってきてくれないし……まあ僕は家で勉強なんてしないし、持ってきたところで勉強なんてするはずもないと思われているのだろう。
 まったく、子供の意思を尊重してくれるいい家族だ。
「ちょっと飲み物でも買ってくるか……」
 気分転換でもしなければ、作業化しつつある勉強もまるで進まない。
 タバコ休憩なんて言って、一服する大人の気持ちがわかるな……1人で何かすることがこんなにも辛いとはな。

 ベットから立ち上がり、廊下へ出る。
 確か自動販売機が一階にあったはずだ。
 僕は階段をゆっくり、一歩ずつ下りて、ようやく自動販売機にたどり着いた。階段の段数は35段、なかなかに長い戦いだった。

「マジか……ジュース売ってないじゃん」
 自動販売機で売られているのは、お茶と水……あとは缶コーヒーだけだ。糖分を取らせるとまずい患者でもいるのだろうか? だとしても、こんなことをする意味はないだろう。そとに出て買いに行けばいいだけなんだから。
 なんて思ったが、ジュースを売っている一番近いところまで徒歩10分だ。気分的に行く気になれない。――面倒な相手に会うかもしれないしな。
 仕方ないと断念し、僕は病室に帰ることにした。
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