先生と僕

真白 悟

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居場所

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「正直なところ、君の部活がなくなってしまったことは残念だよ」

 なんの前ぶりもなくリーダーが話題を変える。
 僕にとってはかなりシビアな問題なのだが、しょせんは他人事である彼にとっては単なる貴重な話題に過ぎないらしい。これも僕の缶に過ぎないのだが、たぶんそれほど残念だとも思っていないことだろう。

「そうだね……」

 僕は出来るだけそっけなくそうつぶやく。
 この話題はどうにかしてすぐに終わらせたい。
 それなのに、彼はなぜか続ける。

「本音を言うと、恋愛部ってどうなの? って思っていたんだ……恋愛そのものは学生として健全と言えるものだとおもうけど、その部活はどうなんだろうって……」
「馬鹿にしてる?」
「馬鹿にはしていないさ……だからこそ残念なんだ……」

 苛立ちながら言葉を返す僕をなだめてからリーダーは続けて言う。

「確かにこのクラスは今では君の居場所だ。でも、それと同じように恋愛部は君のもう一つの……いや、最初の居場所だったはずだ」

 彼の言葉は的を得ていた。
 家にもクラスにも居場所がなかった僕にとって、確かにあの場所は僕の最初の居場所だった。
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