先生と僕

真白 悟

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望み

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「何1人でぶつぶつ喋ってるんですか、先輩?」

 決意を胸に立ち上がった僕の耳に突如として背後からそんな言葉が入り込んだ。
 慌てて振り返ると、そこに立っていたのは彩錦あかねだった。

「……なんだ突然」

 僕は出来る限り平然を装う。
 彩錦はあんなことの後だというのに、僕よりも数段と冷静でいる。

「なんだじゃないですよ。あれから部室にも全く顔を出さなくなったから、お姉ちゃんがめちゃくちゃ心配してますよ……」
 驚いた。まだ彼女たちがあの場所を使えているとは……だけど、あそこはもう部活ではない。
「先生が言っただろう。部活は解散だって」
 ただの空き教室でしかない。

 彩錦は大きなため息を吐くと、軽く鋭い眼光を向けた。
「確かに先生はそう言いましたね。でも部活がなくなったからと言って、お姉ちゃんとの友情は終わりですか? なるほど、その程度の気持ちでお姉ちゃんに関わったんだ……」

 嫌味交じりに言葉に、僕は心を揺さぶられる。
 すべては僕の責任だ。だから彼女にもきちんと考えを話しておこう。

「わかってる! 今回のことは僕が原因だ。だから部活は僕が1人で何とかする……だからあずさには部活で会おうって伝えてくれ……」
 それを聞いたとたん、彼女は視線を少しだけ下げて首を何度も横に振り、面倒くさそうに呟く。
「1人で……本当に下らない……どうして私がこんな奴のために……」
 情けない奴を見るがごとく視線を僕に送る彩錦。そんな彼女に対して僕は少しいら立ちを覚えた。
「なんだ。はっきり言えばいいだろう?」
「わかったわ。ならはっきり言わせてもらうけど、お姉ちゃんはそんなことを望んでいない! たぶん先生もね!」
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