先生と僕

真白 悟

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先生と先生

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 すべての生徒たちは平等に扱われるべきだ。
 教師は一人の生徒を贔屓してはいけない。それは当然のことであり、問題児が生徒にいたとしてもその子にばかりかまけているわけにはいかない。問題児が更生したとなればなおさらだ。

「でも、本当に良かったのかしら……」

 私が理事長によって贔屓させられていた2人の問題児は成長し、もはや特別な指導が必要ではない領域まで達した。これでよかったはずだ。
 そんな風に悩んでいる私に声をかける人物がいた。

「柄にもなく迷っているようだな?」
「教頭……」

 彼は高校時代の恩師であり、今でもよき上司としてよく相談に乗ってくれる。
 
「いまさらになって、問題児を抱えることの大変さを知ったか? だが――」
「――『大変なことって言うのは、それだけ何かを変えられるってこと』ですか? 母の口癖ですね」

 母を大学時代の先輩として尊敬していたらしく、その部分だけはかなりむかつく。

「彼女……先輩の娘ならやれるだろう? それとも、親の七光りか?」

 こんな風に私と母を比べてくるのもむかつくポイントだ。しかもこういう時は大抵、よくわからない名言チックな言葉を吐くのがむかつく。こういう時は低姿勢で、さも参りましたみたいな感じで敗北宣言をする。

「言ってくれますね……でも今の状況ならそう言われても仕方ないですね」
「……命を救うのは医者だけの仕事じゃない。教師だって、人の人生……すなわち命を救うことが出来る」

 教頭がしたり顔で名言を決めているこのタイミングで私はいつも切り出す。

「いや、さすがにそれは意味不明ですよ」
「感動的なこと話してるんだからのれよ……」

 これさえなければ、かなりいい先生なんだけどなあ。
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