先生と僕

真白 悟

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嫉妬

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「そんな人物がいらっしゃるのでしょうか?」

 あずさの言うとおり、僕なんかにかまって時間を浪費するような奴がいるとは思えない。
 僕をかなり嫌っている彩錦あかねですら、そんな時間を無駄にするようなことはしない。
 嫌っている奴に時間をかけるなんて、そんな無意味なことをする奴はいない。なら、嫌いではなく、おとしめたいならどうだ? 例えは――

「――嫉妬とか?」
「先輩のどこに嫉妬するんですか?」

 彩錦あかねは平常運転だ。流れ出るようなナイフじみた言葉を平然と言ってのける。
 だが彼女の言う事にも一理ある、僕そのものには嫉妬されるような才能があるわけでもないし、そもそも嫉妬させるというのは、それだけ何らかの地位や名誉……もしくは金を持っているという事だ。僕にそんなものがあるはずがない。
 むしろ、学内でも最底辺の僕に対して嫉妬すること……それは1つしかない。

「なるほど……それがあたし達、恋愛部という事ですか」

 つまりはそう言う事なのだろう。
 おそらく、僕の噂を流した何者かは、僕のこの見せかけのハーレム状態が気に食わなかったのだろう。たぶん。まあ、本当にそんな奴がいればの話だがな。
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