先生と僕

真白 悟

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失態

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「でも、まあそれが一番いいとあたしは思いますよ!」

 あずさが、綾錦あかねから僕をかばうように言う。
 しかし、彼女も隠してはいるががっかりとした表情をしているような気もする。きっと、僕に期待していたのだろう。厭味ったらしい後輩はともかく、ドジな友達の期待を裏切ったのは少しだけ申し訳ない。

「もう少しまともな考えがあるのかと思っていましたが、たまたま噂のもとが現れて、お姉ちゃんが頑張って先輩がそれを横取りしただけじゃないですか……」

 綾錦が呆れ顔をしている。
 まったくもって彼女の言う通りだ。考えが浅はかだった故に代替案もなく、ただ流れに任せて喋っているだけにすぎない。

「そうだよ! でも仕方ないだろう! だって、僕の思い通りにことが運ばなかったんだから! ていうか誰だよあいつ? なんで僕みたいなやつにメンヘラストーカーがいるんだよ!? しかも男だし!」
「うわぁ……開き直ってるし……まあ同情はしますけどね。でも、先輩の噂を流している奴がいるってよみは当たったじゃないですか?」
「うっ……!」

 痛いところを突かれた。
 そもそも、よみが当たってしまったのが問題だったが、こうなればなるようなるしかない。

「そうだけど! いや、そうだった! だから、あれだ。問題なんてなにもない!」

 自分の失態を隠すために口ではそう言ってみせたが、正直なところ問題だらけだ。
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