先生と僕

真白 悟

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本心

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「それで、恋愛学って……具体的にどうするんですか?」

 彩錦あかねの口から出た意外すぎる言葉に僕は一瞬だけフリーズする。
 それを見て不服に思ったのか、彼女は「なんですか、その顔?」と不満そうな声を出す。

「いや。だって……」と、そこまで口にしたところで、それが別におかしなことではないと気が付いた。
 考えても見れば、彩錦が恋愛部にまるで興味がないなんてことはありえない。だってそうだろう。僕と初めて会った時の彼女なら、そもそも僕と2人で会話するなんてことはあり得なかっただろう。そんなことをしているなら、間違いなく先生のところに会いに行っている。
 彩錦は利己的であり、たとえ先生に怒られようと……先生との約束を破ろうと先生に会うことを優先したはずだ。

「また変なことを考えているんじゃないですか?」

 彩錦の疑り深い目が僕を映す。
 何を考えているのかはわからないが、きっと彼女なりに僕たちのことを気遣ってくれているのだろう。彼女にも僕たちが仲間であるという認識はあるという事だ。

「いや、別に何も考えてない。ただ、彩錦が恋愛部について真剣に考えてくれているのがうれしくて」
 自分でも意外だ。いつも彩錦には本心を隠してきた。それなのに、今になって本心を口にできるなんて思ってみなかった。
「私は先生と同じ部活に居たいだけですよ!」
 僕の言葉を聞いた彩錦はあわてて否定する。
 それが本心かどうかを完全に見分けることなど、彼女本人にすら出来ないだろうけど、僕はどこかで彼女のことを信じている。
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