先生と僕

真白 悟

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経験

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 恋愛を学問として考えるのはかなり難しくある。
 だけど心理に対する学問があるように、恋愛という感情を学術的に考えるのが無理だなんていう事もない。

「でも、恋愛を同研究するつもりなんですか? 実体験に基づくレポートでも作成しますか?」

 茶化すような口調で彩錦あかねが言う。
 バカにしているようにも見えるが、彼女の意見はもっともだ。学問として考えるうえで必要なことは、どのように研究するのかだ。研究無くして学問とは呼べない。
 だけど、それこそが大きな問題なわけだ。

「学校の部活でそれはまずいだろう……」
 実体験に基づく研究は僕としても願ってもないことだ。だけど学校としては不純異性交遊が認められるはずもない。
 つまり、現在の時点で実体験の皆無な僕には不可能な研究法という事は言うまでもない。
 そんな甘いことを考えている僕に、彩錦が現実を叩きつける。

「学校が許可したとしても、たぶん先輩には一生無理でしょうけどね」
「相変わらず、一言多いな」

 僕にだっていつかきっと、そんな経験がある……はずだ。誰が何と言おうとそれだけを信じて生きて行きたい。
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