ショートショート

真白 悟

文字の大きさ
4 / 9
コメディ

最終決戦

しおりを挟む
「ようやくここまできたか……」

 長い旅を終えて、私たちはここまでやってきた。
 珍妙な旅ではあったが、現代社会に対するアンチテーゼとでも言うべきだろうか……ともかく、それも終わりだ。

「ようやく来たか……勇者よ」

 物々しい雰囲気のなかで、王座に腰をかけている男が声を発した。
 緊張が走るなかで、はっきりとしておきたいことがある。

「あの……」

「どうした?    勇者?」

「ですから――」

「言いたいことがあるなら、はっきり言うのだ! 勇者っ!」

「私のこと勇者って呼ぶのやめてもらっていいですか!?」

 恥ずかしいからやめて欲しい。本当に……勇者風旅番組だかなんだかしらないけど、私はただの女子高生だ。
 目の前に座っている男も、雰囲気はあるけれど、魔王と呼ぶには程遠い。

「いや、俺だってやりたくないけど、仕事なんだから仕方ないだろう!?  おっと、勇者よ最後だから、一瞬で終わらせてやろう」

 男は一瞬だけ素に戻ったかと思うと、すぐさま元に戻る。

――どんだけまじなんだよ。

 ともかく、男言う通り最後までだ。一瞬で終わらせよう。
 私はお供に連れてきた三びきの動物を見る。
 猫にゴリラにフクロウ、どいつもこいつも言うことは聞かないし、ゴリラに至っては恐ろしくて近づくことすらできない。

「はあはあ、魔王……もうこりごりだ。最初こそ簡単に大金が稼げると浮かれたけど、こんなことなら引き受けるんじゃなかった!」

 私の後ろからはテレビのスタッフがついて周り、状況を全国生中継している。
 それだけならまだしも、いく先々で人はめっちゃ不自然に優しく、かえって気を使う。
 気疲れするし、スタッフはいちいち人の家に不法侵入させて、タンスを漁らせたりする。
 こんな生活は、もうこりごりだ。

「さあ! かかってこい!」

 魔王はやる気だ。
 だけど私はやる気がない。ゴリラも私と同じだ。猫とフクロウはやる気に満ち溢れている。とは言っても、魔王と戦いたいと思ってるわけじゃない。
 遊びたいと思っているようだ。
 外は夜で、夜行性の生物はこれから活動を始める。

――面倒くさい、出来る限り早く終わらせたい気持ちはわかるが、やる気が出ない。

 どうしたもんかなぁ……そもそも、私が本気で戦っても勝てるはずないし、動物達が手伝ってくれるはずがない。
 お手上げだ。
 早くこんな茶番終わってくれないかな。

「行きますよ……?」

「ああ、私を倒してみよ」

 女子高生がどうやったら大人の男に勝てるのか……いやそもそも、どうしてこんな茶番をしているのか意味がわからない。

『――世界はつまらないので、勇者が魔王を倒すまでを中継しましょう!』

 いつだか、テレビで見た光景を思い出す。
 どっかの会社の女社長がそんな意味不明なことを言っていた。いや、それ自体は面白いと思ったし、見てみたいと思わなかったといえば嘘になる。
 だけど、こんな見切り発車だとは思わなかった。

 いや、見切り発車じゃなくても、企画としても意味不明すぎる。

 とにかく、終わらせるためには何としても魔王役の人を倒さないと……それでこの番組も終わる。
 予算を湯水のように使い、素人を勇者として旅させる意味不明な番組を。

 私は、魔王の方めがけて全力で走り出す。倒す算段などないが、なんとかなるなるだろう。
 そう思っていた時が私にもありました。
いきなり走り出した私は、足がもつれて地面に倒れる。
 それをみたフクロウは、驚いて飛び去ろうとした。しかし、飛んでいく方角が悪かった。
 フクロウは、魔王の頭に勢いよくぶつかる。

「ぐはっ! さすが勇者だ。フクロウに指示を出して攻撃させるとは……予想外だったぞ」

 本当に予想外だったことだろう。フクロウに激突されること自体は……。そりゃそうだ。私だって予想外だった。
 よくアドリブであんなことを言えたと、魔王役の人には感心させられる。さすがプロだ。

 ともかく、珍妙な旅は、珍妙な最後を迎えることになった。

 その後、私よりもフクロウが勇者と呼ばれるようになったのはまあ、結果オーライと言える。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...